2025-26シーズンのSVリーグの日本人選手では今季リーグ最多となる709得点(全体4位)をマークし、アタッカーだけに絞れば出場セット数167は全体トップの数字。リザーブが予定されていた選手がシーズン前に負傷したことも少なからず影響しただろうが、それを差し引いたとしても文字どおりの「フル稼働」である。
ウルフドッグス名古屋、宮浦健人──。そのタフネスぶりが光るレギュラーシーズンだった。
振り返ればジェイテクトSTINGSの一員としてプレーしていた昨季、宮浦はシーズン半ばに負傷に見舞われ、およそ2カ月の戦線離脱を余儀なくされた。「自分にとって長期離脱が初めての経験でしたし、精神的にも厳しかった」と本人が明かすほどで、そこにチーム状況が輪をかける。シーズン前半こそ首位を争っていたが、中盤に6連敗を喫し、さらには宮浦のケガが響いたことで、後半は黒星が先行する戦いが続いた。
「ケガという事実だけでなく、チームに何も貢献できないことが重なって、かなり落ち込みました。それこそ、自分がこれまで積み上げてきたものが崩れていく感覚でした」
何もできない以上、そこは仲間に託すしかほかなかった。果たしてSTINGS愛知はチームを立て直し、レギュラーシーズン4位からチャンピオンシップでは同1位の大阪ブルテオンをセミファイナルで撃破。続くファイナルで最終的にサントリーサンバーズ大阪に敗れたものの、頂点まであと一歩に迫った。
そして宮浦自身も「ファンの方々の励ましや、チームメイト、それにスタッフの存在が支えになった」とレギュラーシーズン終盤には復帰を果たし、準優勝に貢献している。
「ファイナルを経験したことで勝負の厳しさや、ここぞのチャンスをつかまなければいけないことを実感しました。悔しい思いをしたからこそ、いっそう勝ちたい気持ちが強くなりました」
そのように闘志を燃やして、この2025-26シーズンはWD名古屋に加入したのである。
【挑戦したことがないほどの速さ】
新チームはスピーディかつ多くのアタッキングチョイスを持ったスタイルを掲げ、そのなかでも宮浦は豪快なアタックで何度もフィニッシュを飾った。
だが、レギュラーシーズンの戦いぶりは順風満帆とはいかなかった。宮浦にとって「これまで挑戦したことがないほどの速さ」というコンビを習得するまでにトライ&エラーを重ねる。時には、宮浦のアタックによる得点や決定率の数値が勝敗に直結したといえる試合もあった。
そもそもオポジットというポジションは、得点すれば勝機を引き寄せられるが、反対にミスを犯せば勝機が遠のく、そんな責任と隣り合わせのポジション。チームとして勝利を目指すとはいえ、目の前の1点を取る・取らないはアタッカーの役目だ。
唇を噛みながら、それでも宮浦はセッターの深津英臣と試合前後で会話することを欠かさなかった。その姿勢は、対する深津の目にこう映っていた。
「彼(宮浦)とはプレーについて話すことが多いです。やはりバレーボールに対して真面目に向き合う選手ですし、チームにとって柱であることは間違いないので。そこでしっかりとコミュニケーションをとっていけば、どんな相手でも絶対に怖くないと思いますから、引き続き詰めていきたいと考えています」
ベテランセッターの言葉からは、サウスポーエースへの信頼がうかがえた。
そうして試行錯誤を続けながらWD名古屋での日々を過ごしてきた宮浦は、レギュラーシーズンの半ばに、こうこぼしている。
「いろいろと取り組んでいるなかで、できないことができるようになってきた部分はありますが、そうするとまた新しい課題が見つかってくるんです。
力を最大限に発揮して戦うこと──。それを痛感し、強調したのは、チームが苦しい時期に直面したからでもあった。
【昨季のSTINGS愛知を彷彿とさせた】
今季のWD名古屋は、2025年12月(令和7年度)天皇杯全日本バレーボール選手権大会で優勝し、宮浦も大会MVPに選ばれた。だが、SVリーグのレギュラーシーズンでは年が明けた1月半ばに6連敗を喫する。
そこではヴァレリオ・バルドヴィン監督がメンバーたちへ「まるで戦えていない」と叱責し、宮浦も「1点1点に対して100パーセントを出して取りにいくことができなかった」と反省を口にしていた。
その後、2月に入ってから7連勝と持ち直したかに見えたが、3月には5連敗。チャンピオンシップ進出確定も2週にわたって足踏みし、結果的に2年連続となるレギュラーシーズン突破は決めたものの、35勝9敗の3位だった昨季から今季は25勝19敗の4位となった。
昨季とメンバーが異なり、リーグ全体のレベルがまた一段と上がったことも考慮すべきだが、苦しみと向き合う時間が多いシーズンとなったのは確かだった。
ただ、そんな展開は、どこか昨季のSTINGS愛知を彷彿とさせた。WD名古屋で今季のゲームキャプテンを務める市川健太はこう話す。
「レギュラーシーズンの順位は、それほど関係ないです。とにかくチャンピオンシップ本番でいかにいい状態に持っていけるか、かつ自信を持って臨めるかだと考えています。
チームとしても個々としても、上げていくことが大事ですし、昨季のSTINGS愛知のようにチャンピオンシップでハマることだってあり得る。むしろ、それを目指したいですね。同じ展開に今の自分たちはあると思うので」
チャンピオンシップでSTINGS愛知が一丸となって勝ち上がっていく様(さま)を当事者として味わった宮浦も、レギュラーシーズン最終節であらためて口にした。
「レギュラーシーズンの勝敗によって順位が左右される部分はありますが、たとえ負けたとしても、そこから何を得られるか。とにかくすべての試合に100パーセントを出すことと、チャンピオンシップ本番でいかに自分たちの目指すバレーボールができるかを考えながら、日々改善を重ねてきました。
自分の役割は、アタックで点を取ることです。オミさん(深津)との連係に関してはこれからも改善していこうと話をしていますし、自分自身の得点の決め方にもトライしながら、形にしていきたいと考えています」
【常にトライ&エラーを重ねていく】
今季を迎えるにあたって、宮浦に昨季終盤のSTINGS愛知に芽生えた強さの理由を聞いてみたことがある。その答えは──。
「自分自身が何をすべきかを個々が徹底していましたし、だからこそ最後はチームがひとつになって戦うことができました」
常に100パーセントの力を発揮しながら、常にトライ&エラーを重ねていく。シンプルであり、苦しみも伴う。けれども、それを最後まで貫いた先に、チームが、そして己が欲するものがある。
そのことを胸に留めているからこそ、宮浦はきたるチャンピオンシップも最後の最後まで、自分のやるべきことと向き合い続けるのだ。



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