F1第4戦マイアミGPレビュー(後編)

◆レビュー前編>>

「正直に言えば、雨が降ることを期待していた。現状では、ライバルとのパフォーマンス差があまりにも大きいからね。

 トップ4チームのうしろは最後方の2チーム以外の中団グループが大接戦であり、我々とそことの差はあまりに大きいため、多少の改善ではポジションを上げることはできないし、ポイント獲得のチャンスもない。だから今日のレースでは、雨が降ることを願っていたんだ」

 アストンマーティンのチーフトラックサイドオフィサーを務めるマイク・クラックは、現状では雨などの不確定要素がなければキャデラック以外と戦うのが難しいことを認めている。

【F1】アストンマーティン・ホンダ「夏までアップデートを投入...の画像はこちら >>
 そしてこの差が、今後はさらに広がっていくことも覚悟している。

 今回のマイアミGPに、ライバルたちは多くの大型アップデートを投入した。今後もさらなる開発競争を進めていく一方で、アストンマーティンは「シーズン前半戦はアップデートを投入しない」と決めているからだ。

「シーズン前半戦は何も投入しないよ。今の僕らは20位や19位を走っていて、前のクルマと1秒もの差がある。だからここでレースごとに0.1秒や0.2秒を縮めても順位は変わらないから、こういう戦略を採るんだ。コストキャップの制約もあるから、予算を浪費しないためには1.5秒とか2秒のアップグレードができるまで製造工程に入らないほうがいいんだ」

 フェルナンド・アロンソはそう答えた。

 意味のない"無駄撃ち"はやめて、本格的なパフォーマンス向上ができる大型アップデートが完成するまで製造や投入は待つ。ADUO(追加開発投入機会)の適用を受けて、パワーユニット側のアップデートとパワーアップが果たせるのと同じタイミングでそれを狙うという、より中長期的な視点での開発計画だ。

 シェイクダウンからここまでの3カ月間で、車体側もパワーユニット側も当初の予定にはなかった振動対策や信頼性対策に追われた。

その結果、マンパワー的にも予算的にも開発計画を大幅に見直さなければならなくなってしまったことは言うまでもない。

【時間を巻き戻すことはできない】

 これから夏休みまで目先のゲインはなく、ライバルとの差が広がっていくという痛みを伴うことになる。だが、それでも3カ月先のステップアップをより大きなものにするために、そしてさらには2027年に向けた開発により精力と予算を注ぐために、アストンマーティンはこのような決断を下したのだ。

「アップグレードは夏の終わりまでないし、次のカナダでも好結果を期待する必要もない。チーム全体がフラストレーションに晒されることになるけど、それでも落ち着いて夏休み明けのシーズン後半戦をよくするために、全力で取り組んでいるんだ」(アロンソ)

 もちろんその間に、まだ熟成不足のエネルギーマネジメントやドライバビリティの改善は進められる。ギアボックスにも改良の余地はあり、マシンのセッティング面でもまだまだ改善はできるはずだ。

 また、レース運営に関しても、ピットストップは遅く、戦略面でも完璧とは言いがたい。現状のパッケージからパフォーマンスを最大限に絞り出すという点では、やらなければならないことがあるのも事実だ。

「予選とスプリントレースでは日本GPと違って最下位を免れたし、今日の決勝もそうだった。レースの実行能力という点では、やれるだけのことはやれたと思う。しかし、ピットストップ(自体の質)やピットインのタイミングなど、クリティカルな問題はあるので、もっとうまくやれたはずだ。

 結果としては、ランス(・ストロール)が下位集団のトップでフィニッシュできたはずだったのに、最大限のレースができなかった。

それを忘れるべきではない。こうした要素をしっかりと振り返り、分析していく必要がある」(クラック)

 日本GPで今季初完走を果たしたアストンマーティンとホンダは、そこから1カ月の春休みでの徹底的な対策によって振動や信頼性の問題を完全に潰し、マイアミGPではようやく「普通のレース週末」を過ごせるようになった。

 本来ならばシーズン開幕当初にあるべきだった状態に、2カ月遅れでようやく辿り着いたと言える。

 シェイクダウンからの3カ月間で失った時間と労力と予算は、あまりに痛い。当初からAMR26の実車でベンチテストを行なっていれば、振動問題ももっと早く解決できたはずだった。

 しかし、時間を巻き戻すことはできない。できるのは、過去の失敗から学び、未来を変えることだけだ。そうすれば、過去の失敗の意味も変わる。

 今、アストンマーティン・ホンダがやろうとしているのは、そういうことだ。

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