清水邦広が振り返るアジア選手権 後編

(中編:アジア選手権「優勝の立役者」は? 最後の1本をエースに託した選択も「全然いい」>>)

 清水邦広が振り返るアジア選手権の後編では、日本代表のディフェンスを支えたリベロや、途中出場の選手たちの貢献度を分析。併せて、2年前にロサンゼルス五輪への出場が決まったことによって清水氏が抱く「複雑な思い」についても語った。

【男子バレー】ロス五輪へ「メンバー選考はもう始まっている」清...の画像はこちら >>

【リベロ、途中出場の選手も含めて「本当にいいチーム」】

――ディフェンス力が高かったチームを支えたリベロについてお願いします。アジア選手権では抜群の安定感と安心感を誇っていました。

清水邦広(以下、清水) リベロの2人は日本のピンチを救い続けました。山本智大選手も小川智大選手も、レシーブ力に関して今さら僕から言うことはないです(笑)。それくらいすごい。どんなボールも落とさないし、拾うだけではなくて次につなげていました。小川選手はセッターのようなオーバーハンドでのトスを上げるのも武器ですし、山本選手もオーバーでのトスもするけど、アンダーで上げる速いトスが効果的でした。

 僕の現役時代、日本代表ではラリー中にトスを上げる時はゆっくり高いトスを上げていました。それが今では、みんなスピードを意識した速い二段トスを上げるからブロックがつきづらいし、ブロックの間も空くので決まりやすいんです。相手からすれば、日本にどれだけ攻撃しても拾われるのは嫌だし、そこから攻撃されるから手がつけられない。その起点になっていたのがリベロでした。

――誰が出ても活躍するという点では、オポジットの宮浦健人選手だけでなく、途中から入る選手たちみんなが役割を果たしていました。

清水 日本の強みになっていますね。

ミドルブロッカーの西本圭吾選手が入ると雰囲気がガラリと変わるし、「何かやってくれるんじゃないか」という期待感があります。すごくワクワクさせる選手ですよね。1点を決めただけでも、試合に勝ったような喜び方をしてくれるのは、チームにいい影響を与えていると思います。

 アウトサイドヒッターの大塚達宣選手と富田将馬選手は、なかなかスタートで出る機会はなかったですが、リリーフサーバーで入ったら常に攻めるし、ミスが少ない。守備でも攻撃でも、コートに入れば必ず仕事をしている印象しかありません。

 セッターの河東祐大選手は、大会直前にメンバーに加わって、プレッシャーや難しさもあったと思います。それでも、途中で入ってもすぐに真ん中の攻撃を使うし、2枚替えで一緒に入る宮浦選手にも常にいいトスを上げ続けていました。二段トスも上手で、9mくらいのロングトスを上げた場面があったのですが、あれは痺れましたね。距離がある場所に飛ばすにはパス力が求められるし、「オーバーだとミスをするかもしれない」とアンダーでいく選手が多いと思うのですが、河東選手は迷わず、素早くボールの下に入ってオーバーで上げた。スパイカーからすると、アンダーのトスはボールが回転するので少し打ちづらいこともある。それも考えて、リスクを恐れずオーバーでトスにするのはさすがでしたね。

 山内晶大選手(ミドルブロッカー)は、今大会なかなか出場機会はなかったですが、大事な開幕戦で小野寺選手と一緒にスタメンで出て、チームに勝利をもたらした。

さすがベテラン、という存在感でしたし、チームを落ち着かせるプレーができていた。ここまで話してきて、「本当にいいチームだな」とあらためて思いました(笑)。

【若手とベテランで違う五輪までの2年間】

――2年前にオリンピック出場が決まったことで、いろいろとプラスな要素があると思います。

清水 もちろん2年前に決まるのはプラスです。直前でオリンピック出場を決めないといけないとなれば、出場権を獲ることにフォーカスしないといけない。でも2年前に決まったことで、「オリンピックの本大会でどう結果を出すか」にフォーカスしながら過ごせるのが大きく違います。選手の準備の仕方も大きく変わるはずなので、チームとしては間違いなくプラスだと思います。でも個人としては、すごく複雑な思いもありますね。

――複雑、と言うと?

清水 アジア選手権は14名で戦いましたけど、オリンピック本大会はメンバーが12名になる。選ばれるメンバーもどうなっているかわかりません。出場を決めた時点から、選考が始まっていると思うと胸が痛いですね。

 若い選手とベテランの選手では、この2年の過ごし方も全然違うと思います。僕も出場した東京五輪でその難しさを痛感しました。

もし東京五輪が予定どおり2020年に開催されていたら、髙橋藍選手ではなく、僕と同じ年齢の福澤達哉が選ばれていたと思うんです。でも1年延びたことで、藍選手が頭角を現し、福澤選手はメンバーから落ちてしまった。

 1年でも何が起きるかわからないのに2年あるわけですから、学生も含めて、若手からすると最大のチャンスです。ただ、ベテランとしては大変だと思います。36歳の深津英臣選手もそうだし、石川祐希選手も小野寺選手も山内選手も30歳以上です。メダルを獲るためには、2年後に今の状態よりもさらに上げなきゃいけない。ベテランになればなるほどコンディショニングが難しくなりますが、今以上のパフォーマンスを発揮するためには身体を酷使しないといけません。

 同じ練習をするとして、若手とベテランでは伸び率が違いますよね。若手はどんどん伸びるけど、ベテランが同じように伸びるかというと、そうではない。自分なりにいろんな努力をして、考えて、プレーの向上に結びつけないといけないのはかなり大変だと思います。僕も、そんな1年間の重みを知っているのでよくわかりますし、ベテランの立ち位置で想像すると相当きついです。だけど、ベテラン勢にも頑張ってほしいし、もちろん期待しています。

【開幕するSVリーグへの意気込み】

――2年が長いか短いか、選手によって違うということですね。

清水 そうですね。ベテランとしては長いのか、でも若手としては短いのか。あるものねだり......じゃなくて、ないものねだり(笑)。僕としては本当に全員に出てほしいし、出させてあげたい。理想としては今この状態のまま、「はい2年後」となってほしいです。

――ロサンゼルス五輪に向けてそれぞれのシーズンが始まるなか、間もなくSVリーグが開幕します。清水さんは大阪ブルテオンの専任コーチとして初めて迎えるシーズンになりますね。五輪出場が決まったなかで迎えるリーグ、ファンにはどんなところに期待してほしいですか?

清水 世界最高峰のリーグになることを目指して始まったSVリーグも、今年で3年目。世界とほぼ力の差がないくらいレベルの高いリーグになってきていますし、認知度や人気も含めてすごくいいリーグになっていると思います。各クラブがいろいろなイベントや取り組みをしているので、家族連れで会場に来ていただいても楽しいと思います。代表選手同士で戦う試合も見られますしね。

 日本代表だけでなく、世界各国の代表選手も各クラブにいます。高さ、パワー、迫力は、映像で見るよりも、会場で見るとさらに感動するはずです。今シーズンは新たに鹿児島と北海道のチームも加わったので、全国各地でバレーボールを見られる環境になりました。たくさんの方に見ていただきたいですし、楽しんでほしいです!

【プロフィール】

清水邦広(しみず・くにひろ)

所属:大阪ブルテオン

1986年8月11日生まれ、福井県出身。身長192cm、オポジット。福井工大福井高校時代に春高バレーに出場するなど活躍。東海大学在学中の2007年に日本代表に選出され、翌年の北京五輪に出場した。2009年にパナソニックパンサーズ(現・大阪ブルテオン)に入団後、多くの個人タイトルを獲得するなど、チームを何度も優勝に導いてきた。2021年には東京五輪に出場し、日本代表のベスト8進出に貢献した。2025-26シーズン限りで現役を引退し、大阪ブルテオンのコーチングスタッフに就任した。

田中夕子●取材・文 text by Yuko Tanaka

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