現有戦力から読み解く「2026ドラフトで獲るべき選手」~ヤクルト編
今年もドラフト会議の季節がやってきた。各球団ともシーズンを振り返りながら、来季に向けた補強ポイントを洗い出し、アマチュア選手の最終的な絞り込みに入っていることだろう。
【若手起用がもたらした大きな収穫】
池山隆寛監督1年目のヤクルトは、前半戦こそ最大11の貯金をつくって首位を走ったものの、6月以降は月間負け越しが続いて失速。とはいえ、称賛されていい「大健闘」だった。これは皮肉でもなんでもなく、「この戦力でよく戦った!」と称える気持ちしかない。
あれは4月のこと。たまには現場で応援してみようかと出かけた神宮球場で、ヤクルトのメンバーを見て驚いた。スタメンに名を連ねた赤羽由紘、武岡龍世をはじめ、ベンチに控えていた鈴木叶、伊藤琉偉、田中陽翔......。埼玉・戸田のファーム戦で何度も見てきた若い選手たちだ。その「ファーム・メンバー」たちが神宮の晴れ舞台で躍動し、阪神を相手に10点を奪って勝ってしまったから大したものだ。
「だから、使っちゃえばいいんだよ......」
"ヤング・スワローズ"の奮闘を目の当たりにしながら、そうつぶやいたものだ。卓越した素質を評価されて入団してきたはずの逸材たちの、足りないところばかりをあげつらってファームで塩漬けにする。そうして、やがて輝きを失っていく選手をどれだけ見てきたことか。
主力の不調、故障とあらば背に腹は代えられない。
特筆すべきは、その「成功率」だ。チームの盗塁成功率は約8割。リーグトップの38盗塁をマークしている岩田幸宏を筆頭に、並木秀尊13、赤羽由紘9、モンテル7、丸山和郁6盗塁。若手、俊足組が積極的に次の塁を狙い続けた。起用した側も、起用された選手たちも、胸を張っていいシーズンだったと言っていいだろう。
ただ、チームは現時点(10月5日現在。以下同)で60勝80敗2分。4年連続のBクラスに沈み、5位以下が確定した。2021、22年とリーグ連覇を果たしてから、5位、5位、6位と低迷が続いてきただけに、来季こそ、せめてAクラスには戻りたい。そんな視点から、再建策を探ってみた。
【投手再建のカギは多様性】
やはり手をつけるとすれば、リーグワーストのチーム防御率3.70に沈み、568失点を喫している投手陣からだろう。
過去3年のドラフトで、3位以内で入団した6投手のうち、現時点で一軍の戦力として一定の存在感を示しているのは、先発の松本健吾とリリーフの荘司宏太ぐらいという現実もある。だが、過去を悔やんでいても始まらない。その代わり、過去から学ぼう。
タイプとして、オーソドックスなオーバーハンドばかりに人選が偏ってはいないか。はるか昔、野村克也監督の指揮のもと、9年間で4度のリーグ優勝をやってのけた頃、チームには剛腕、技巧派、サウスポー、サイドハンド、アンダーハンドと、バリエーション豊かな投手陣が揃っていたものだ。
そこで今のヤクルトにいないタイプ、少ないタイプの投手を探そう。通算188勝のレジェンド・石川雅規が引退し、ただでさえ手薄なサウスポーを、まずは1位で獲りたい。
チームトップの12勝4敗、防御率2.33をマークした山野太一と、「こんなもんじゃないはず」の高橋奎二が5勝7敗、防御率4.42。ここにもう1枚、先発を任せられる左腕が欲しい。リリーフの左腕となれば、さらに手薄だ。こちらは下位で社会人を狙いたい。
1位で狙うのは、星野世那(近江→大阪商業大/投手/179センチ・78キロ/左投左打)だ。
万が一、指名が重複してクジを外した場合は、渡辺和大(高松商→慶應義塾大/投手/180センチ・78キロ/左投左打)。ピンチになった時のファイティングスピリットが頼もしい。速球と同じか、それ以上に猛烈な腕の振りから繰り出すスライダーは、落下速度がすばらしく、プロでも勝負球になる。
さあ、そして「いないタイプ」に取りかかろう。
スリークォーター気味の角度から、暴力的にナチュラル変化する剛球で真っ向勝負する川原嗣貴(大阪桐蔭→Honda鈴鹿/投手/190センチ・100キロ/右投左打)。近いタイプで150キロ前後の球速帯を持つ吉川凌平(習志野→千葉商科大/投手/186センチ・90キロ/右投右打)。そして、長い右腕から地を這うような軌道で投げ込むアンダーハンドの松平快聖(市原中央→神奈川大/投手/191センチ・86キロ/右投右打)。
今のヤクルト投手陣に加われば、いずれも「革命的人材」になり得るのではないか。
2024年育成ドラフト3位で入団したアンダーハンド右腕・下川隼佑も、2025年に支配下登録され、一軍で独特の軌道を武器に存在感を示した。
川原と松平、あるいは吉川と松平......。毎年出てくるタイプではない。3人のうち2人を獲得できれば、投手陣の景色はかなり変わってくるはずだ。
【3年計画で層を厚くしたい】
山田哲人、塩見泰隆は、ケガや年齢的なことを考えても、来季以降、年間を通してフルに戦い抜ける保証はない。だからこそ、先に代わる人材を手当てしておく。そのうえで、「あ、山田が出てきた」「お、塩見もカムバックか!」となった時、それがチームとしての本当の「層の厚さ」になる。
まず、山田の後釜になり得る存在として、戦国東都の実力者・赤堀颯(聖光学院→國學院大/二塁手/174センチ・78キロ/右投右打)を挙げたい。
状況を読み、ベンチが求める以上の仕事をやってのける野球勘のすばらしさに太鼓判を押す。将来、チームリーダーになれる資質も備えた、骨のある青年だ。
アスリート型外野手・塩見の後継なら、中津大和(小松大谷→法政大→日本生命/外野手/180センチ・77キロ/右投左打)がピッタリなのだが、2位までに消えそうな気配もある。
その場合は、直井宏路(桐光学園→明治大→NTT東日本/外野手/172センチ・76キロ/左投左打)だ。身体能力の高さは学生時代から定評があった。そこに社会人の2年間で、打撃にも別人のような瞬発力が加わり、すっかり「怖い打者」に変身した。今がまさに伸び盛りだ。
そして、下位で指名したい社会人の即戦力サウスポーはどうするか。隠し玉的存在として推したいのが、谷内隆悟(鳥羽→同志社大→エイジェック/投手/181センチ・80キロ/左投左打)だ。
今夏の都市対抗では、140キロ台後半の速球とスライダー、スプリットを武器に、三振を奪える投球を披露した。社会人で長いイニングを投げてきた投手を、プロでショートイニングに投入すると、実にいい仕事をしてくれることがある。攝津正(元ソフトバンク)をはじめ、そんな例をいくつも見てきた。
シーズン前半こそ快走を続けたヤクルトが、徐々に負けが込み、最後はBクラスに沈んだ。その大きな理由のひとつは、やはり「層の薄さ」ではないか。ただし、1年のドラフトだけで選手層が一気に厚くなるはずもない。
ならば今年は、大学、社会人の選手を中心に指名して、まずは一軍に近い層を少しでも厚くする。そして来年以降のドラフトでは、高校生の好素材を積極的に狙う。1年で何とかしようとするのではなく、3年ほどかけて戦力を整えていく。かつての強いヤクルトを取り戻すためにも、今年のドラフトを、その再建の「1年目」にしたい。
安倍昌彦●文 text by Masahiko Abe










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