この記事をまとめると
■タクシーはいま運転手不足により車両は60%程度の稼働率しかない■一方でコロナ禍の落ち着きや酷暑などで需要は増加傾向にある
■都心などでは稼働車両の実車率が6割にも達していてタクシーを捕まえるにはアプリが有効
タクシーの稼働率はいまだ60%程度
ほぼ全国的に酷暑が続いている。筆者の周囲では程度の差があるにしろ、猛暑は10月まで続くといった話も出ており、汗っかきで蒸し暑いのが大嫌いな筆者は少々うんざりしている。
このような酷暑のなかではついつい移動の際にタクシーに乗ってしまうという人も多いだろう。
しかし、そのタクシーだが、全国的に見てもコロナ禍前並みかそれ以上のニーズは戻ってきているのだが、肝心の車両稼働率(各タクシー事業者が保有している台数に対し、実際に街なかを走っている車両の割合)が戻ってこないのである。新型コロナウイルスの感染拡大がひどかったころに、外出自粛規制などもあり、タクシーニーズが減少して運行機会が激減したタイミングで離職する運転士が相次いだのだが、運転士が戻ることなくその穴埋めができていないのが最大の原因といえる。
「東京都内(23区及び武蔵野・三鷹市)でも需要はかなり戻りつつあるとされていますが、それでも車両稼働率はおおよそ6割程度とされています。そのなかで実車率(お客を乗せて走っている)も6割ともいわれていますので、東京都内(23区及び武蔵野・三鷹市)であっても、道端で空車のタクシーを待ってもなかなかこないケースが多発しています」とは事情通。

そのなかで強い味方ともいえるのが、タクシー配車アプリの活用である。スマホからアプリを使ってタクシーの配車要請ができるものであり、あらかじめクレジットカードなどによるキャッシュレス決済方法を登録しておくので、配車要請時には目的地(必ずしも入力する必要はない)を入力して、到着したタクシーに乗り、目的地では降りるだけで済むというもの。

東京都内が37度近いある酷暑の日、朝から室内作業を続けて帰宅しようと外に出たとき、あまりの暑さに耐えかねてタクシーで最寄り駅まで行こうと道端で空車のタクシーを待っていたのだが、夕方はタクシーニーズのピークタイムでもあるのでなかなかやってこない。そこで登録しているアプリ配車でタクシーを呼ぶことにした。すると待ち時間7分ほどで自動的に検出された乗車地に迎えに来るとのこと。配車されたタクシーの動きは地図上で確認できるのだが、運よくそれほど遠くない場所にいたタクシーが見つかったようだ。
同じ場所でよくタクシーがくるのを待つのだが、その経験からすると、やはりアプリで呼んだほうが早くタクシーに乗ることはできるようだ。
アプリの普及がタクシー業界を変えた
そんな便利なタクシー配車アプリは、かつて主流であった無線配車の進化版のようなものともいえるので、空車のタクシーに迎えに来てもらうことにもなり、複数あるアプリサービスのほとんどで迎車回送料金(都内では300円が多い)を取られることになる。筆者は仕事柄もあって、主要とされる3つの配車アプリをダウンロードしている。都心部であっても訪れる人の多い地域などでは差はないのだが、やや人の少ないような場所では近くにいるタクシーの数に差が出やすい。ただ、筆者のダウンロードしているアプリのなかで、料金の割引を積極的に行っているサービスがあるので、筆者はまずこのアプリでの配車状況を確認し、時間がかかるようならば、ほかのアプリで配車するようにしている。

時間帯に限らず、駅のタクシー乗り場で客待ちするタクシーの長い列を見かけることは少なくなった。前述したとおり稼働台数が少ないこともあるのだが、アプリ配車サービスに加入しているタクシー事業者の車両では、AI(人工知能)による予測配車システムというものがあり、AIによって過去の運行データを蓄積し、時間帯や天候などを考慮することで需要が見込める地域にタクシーを多く走らせていることもあるようだ。

筆者の居住地域でもターミナル駅で客待ちするタクシーをいまではほとんど見かけることはなくなったが、やや不便な総合病院からアプリで配車要請すると、数分でタクシーが迎えにきてくれる。筆者の居住地域では、時間帯によってお年寄りを中心に病院へ送ったり、病院から帰るといったタクシーニーズがピークになる時間帯があるので、そのような時間帯には、AIの予測配車に基づき病院近くを走るタクシー(配車要請を待つ)が増えているようである。
残念ながら現状ではタクシー運転士を飛躍的に増やして稼働率を上げる特効薬は存在しない。そもそもタクシー需要自体は減り続けており、かつては稼げないから辞めるということが目立っていた。しかし、いまでは、タクシー運転士個々の働き方もあるが、稼働率が少ないこともあり、十分稼げるかについては個人差があるとしても、絶えずお客を乗せるといった運転士も少なくない。このままいくと忙しすぎるということで、短期間での離職が目立ってくるのではないかともいわれている。

また、アプリ配車サービスへの加入を機に、人件費や設備投資の節約もあり無線配車センターの閉鎖を行ったり、規模縮小などを行うタクシー事業者も出てきているようである。
アプリ配車は予約することもできるので、常にアプリを使えとまでは言わないが、タクシー利用の便利ツールのひとつとして、また都市部でもできるだけ待つことなく利用するようにするためにも、タクシー配車アプリのダウンロードをしておくのは一考といえるだろう。