この記事をまとめると
■軽トラや軽バンはビジネスシーンに欠かせない1台として広く愛用されている■どちらのモデルもOEMモデルが非常に多い存在としても知られている
■市場を見るとダイハツの人気が高い傾向となっている
軽バンと軽トラの販売台数を比べてみた
日本の一次産業やデリバリーなどのビジネスシーンには欠かせないのが、軽トラや軽バンなどと呼ばれる軽商用車だ。前述したように軽商用車は荷台がむき出しなトラックと主に1BOXスタイルのバンに分類される。バンについてはエンジンの後ろにキャビンのあるボンネットバンとエンジンの上に座るカタチになるキャブオーバーバンに区別するのが業界的な伝統だ。
軽商用車は、トラック/キャブオーバーバン/ボンネットバンの3タイプがある。そのうち、どのモデルが売れているのか、2023年度の通称名別販売実績を一気に並べたランキングにして確認してみよう。
2023年度 軽商用車通称名別販売ランキング
★軽トラック ●キャブオーバーバン ◆ボンネットバン
●ダイハツ・アトレー/ハイゼットカーゴ 7万934台
★ダイハツ・ハイゼットトラック 6万5530台
●スズキ・エブリイ 6万2441台
★スズキ・キャリイ 5万7389台
◆ホンダN-VAN 2万7856台
●日産クリッパー 2万7078台
★日産NT100クリッパー 9764台
◆スズキ・スペーシアベース 9024台
●トヨタ・ピクシス 8964台
●マツダ・スクラムバン 4926台
★トヨタ・ピクシス 4096台
●三菱ミニキャブバン 3686台
★スバル・サンバートラック 3079台
●スバル・サンバーバン 2927台
●三菱ミニキャブEV/ミニキャブミーブ 2909台
★三菱ミニキャブトラック 2897台
★マツダ・スクラムトラック 1963台
★ホンダ・アクティトラック 6台※全軽自協発表データをもとに筆者が作成
2024年初頭から出荷停止となっていたダイハツだが、2023年度においては軽トラおよび軽バンの両部門でダブルタイトルを獲得した。いかに2023年内に売れに売れていたかが見て取れる。なお、最下位のアクティトラックについては2021年に生産終了となっているので、このランキングにあるのは、在庫されていたモデルが新規にナンバーをつけたということだろう。
また、三菱のミニキャブシリーズについては、ガソリンエンジン車のミニキャブはスズキ・エブリイのOEMだが、EVのミニキャブEV(旧名ミニキャブミーブ)は三菱のオリジナルモデルとなっている。名前は同じだが車両型式は異なるためランキングではわけている。

軽商用車はOEMモデルで市場が形成されている
つまり、軽商用車というのは非常にOEMモデルが多いカテゴリーなのである。
ミニキャブ同様に日産クリッパーやマツダ・スクラムといったキャブオーバーバンもエブリイのOEMであり、スズキから供給されている。一方、サンバーやピクシスはハイゼットカーゴのOEMモデルだ。

軽トラックも同じく、スズキから供給を受けているのは日産、三菱、マツダとなっており、ダイハツはトヨタとスバルに供給している。
そこで前ページののランキングに示した販売台数をOEMモデルの合計として出してみたのが次の数値だ。
ハイゼットカーゴとOEMモデル合計:8万2825台
エブリイとOEMモデル合計:9万8131台ハイゼットトラックとOEMモデル合計:7万2705台
キャリイとOEMモデル合計:7万2013台
キャブオーバーバン部門では、通称名ではダイハツのアトレー/ハイゼットカーゴがトップだったが、OEMモデルとしては異例の販売台数を誇るクリッパーのおかげで、合算になるとエブリイ系モデル群が上まわっている。つまり、実質的な軽バンのトップはスズキ生産のモデルなのだった。しかしながら、軽トラックについては僅差でダイハツ生産モデルが上まわっている。

もっとも、前述したように2023年度の第4四半期の大部分においてダイハツは出荷停止処分を受けていたので、どちらが人気なのかを判断することは難しい。
筆者が個人的に乗り比べた印象と、AT限定免許が増えているというユーザートレンドからすると、日本では馴染みのあるオートマチックトランスミッション「CVT」を先行して採用したダイハツの軽商用車に人気が集まっているのも納得といえる。

とはいえスズキ陣営においても、キャブオーバーバンのエブリイについてはATをCVT化、トラックのキャリイでは全車4速ATにするなど進化させている。
はたして2024年度の軽商用車のシェア争いはどうなっていくのだろうか。三菱ミニキャブEVやホンダN-VAN e:といった100%電気自動車の軽バンの動向も含めて、気になるところだ。