この記事をまとめると
■全日本ラリー選手権・第6戦「ARKラリー・カムイ」でトヨタGRカローラが初優勝■GRカローラはGRヤリスよりも重いが安定性が高くニュートラルなハンドリングで扱いやすい
■GRカローラは9月6~8日に開催の全日本ラリー選手権・第7戦「ラリー北海道」にも参戦予定
全日本ラリーでGRカローラが初優勝
全日本ラリー選手権・第6戦「ARKラリー・カムイ」が7月5~7日、北海道虻田郡ニセコ町を舞台に開催。既報のとおり、新井大輝選手がシュコダ・ファビアR5を武器に最高峰のJN1クラスを制し、シーズン4勝目を獲得したが、それ以上に歴史的なリザルトとなったのが、JN2クラスの松岡孝典選手の優勝だといえるだろう。
というのも、松岡選手のマシンは2022年にリリースされたトヨタGRカローラで、ついに全日本選手権で初優勝を獲得したのである。
GRカローラが全日本ラリー選手権にデビューしたのは2023年の開幕戦「新城ラリー」で、名門チーム「ラックスポーツ」が世界のラリーシーンに先駆けて最高峰のJN1クラスに投入。松岡選手がドライビングを担当していたが、同じ4WDターボのGRヤリスよりも車両重量が重たいことから、苦戦の展開を強いられていた。
これと同様に2023年の全日本ダートトライアル選手権には山崎利博選手がいち早くGRカローラを投入していたが、こちらもヘビーウェイトに苦戦。
しかしその一方で、GRカローラはGRヤリスよりもホイールベースが長く、安定性が高いことから、グラベルラリーでは抜群のパフォーマンスを発揮。事実、松岡選手は2023年の第6戦「ラリー・カムイ」で4位に入賞、噂に違わぬパフォーマンスを披露していたのだが、1年間の時を経てGRカローラは進化を遂げており、2024年のラリー・カムイで再び素晴らしい走りを披露していた。

GRカローラを武器にオープニングのSS1でベストタイムをマークした松岡選手は、SS2、SS3でもSSウインを獲得。セカンドループのSS4、SS5、SS6ではラックスポーツで、スバルWRXを駆る三枝聖弥選手にSSベストを奪われるものの、松岡選手はセカンドベストをマークし、2番手の三枝選手に10.6秒の差をつけて、6日のレグ1をフィニッシュしていた。
9月の「ラリー北海道」での活躍にも大期待
7日のレグ2でも松岡選手は余裕のクルージングを見せながらも、SS9、SS10、SS11、SS12でベストタイムをマーク。さらに2番手につけていた三枝選手が脱落したことで、後続に1分30秒以上の差をつけて自身およびGRカローラの初優勝を獲得した。

こうして全日本ラリー選手権、そしてダートトライアルやジムカーナのスピード競技を含めてすべての全日本選手権で初優勝を獲得したGRカローラだが、その勝因は前述のとおり、ロングホイールベースが生み出した安定性だといえるだろう。
ドライバーの松岡選手にGRカローラの利点を尋ねた際、「どこでタイムを稼いでいるのかよくわかりませんが、コントロールがしやすくて、リヤが出るようなことはなかった。安心してドライビングできました」と回答。

また、JN1クラスからJN2クラスにクラスを変更したこともGRカローラの勝因のひとつで、2023年のJN1クラスでは、シュコダ・ファビアR5やGRヤリスRALLY2といった国際規定モデルやスバルWRX S4など大胆なモディファイを行った国内規定モデルを前に苦戦。GRカローラはJN1クラスに参戦するために仮ナンバーで登録していたが、大幅なアップデートが行われなかったことから、JN2クラスのナンバー付き車両に近い状態となっていた。
しかし、2024年はJN2クラスに参戦すべく、ラックスポーツはナンバー付き車両としてGRカローラの競技車両を新規制作。開発が遅れたことから、GRカローラのJN2仕様車のデビュー戦は第5戦のモントレーとなったが、JN1クラスで得た経験を随所に盛り込んだことで、松岡選手×GRカローラは待望の初優勝を獲得した。

もちろん、ドライバーの顔ぶれにおいても、新井敏弘選手、勝田範彦選手、奴田原文雄選手、鎌田卓麻選手など、全日本ラリー選手権のチャンピオン経験を持つベテランが集結するJN1クラスに対して、JN2クラスは前述の三枝選手などの若手ドライバーを中心とする顔ぶれとなっていることも大きな要素。2023年にJN1クラスで強豪たちに揉まれてきた松岡選手にとって、JN2クラスのトップ争いは比較的に戦いやすかったに違いない。
このように、いくつかの要因で待望の初優勝を獲得した松岡選手×GRカローラは、9月6~8日にかけて、北海道帯広市を舞台に開催される全日本ラリー選手権・第7戦「ラリー北海道」にも参戦する予定となっているだけに、高速グラベルラリーで2連勝を果たせるのか、その動向に注目したい。