現在「車両接近通報装置」の搭載は義務化されている
クルマの電動化の時代を迎え、モーターのみで走行可能な電気自動車(EV)はもちろんのこと、プラグインハイブリッド車(PHEV)やハイブリッド車(HV)では、低速でのモーター走行時に車外へ音を出す『車両接近通報装置』が、2018年3月から義務付けられた。
この装置は2009年に三菱自動車工業からEVのi-MiEVが、10年には日産リーフが発売されたのを機に、国土交通省のガイドラインをもと2010年から自動車メーカーの独自判断で搭載がはじめられてきた。

きっかけは、エンジン車に比べ騒音の小さいモーター走行に際し、歩行者などがクルマの接近に気付きにくいのではないかとの懸念である。
車両接近通報装置の音は、自動車メーカーごとに異なる。そして各自動車メーカーは、自社が生み出した音へのこだわりを説明する。ただし、車種ごとに違いがあるわけではない。しかし本質論からいえば、メーカーごとに音が違うことさえ発想が間違っている。

音色は全メーカー全車種で統一すべき
自動車関係者やクルマ好きは、車両接近通報装置について何だかの知識があり、この音が聞こえたらEVなど電動車両がモーター走行で近づいていると理解できる。しかし、クルマに関心の薄い人や、さらには大前提である目の不自由な人にとって、メーカーごとに音が違い、しかもその音色が全く異なる状況では、音が耳に届いても、それがクルマであるかどうか目で確認することはできない。したがって本来の目的からすれば、車両接近通報装置の音は、世界のクルマすべてが同じであるべきだ。

車両接近通報装置の音については、クルマの接近を予想させる音であることが定められており、エンジン音に類する間違いのない音であることが求められている。また、ホーンとも違う音である必要がある。

各自動車メーカーは、競争によって商品性を競う部分と、各社が共通して人命や歩行者を守るべき開発とを混同せず、原理原則に基づいた安全なクルマ開発を行うべきではないだろうか。競争領域と協調領域を混同してはいけない。そこに気づけない自動車メーカーは、安全について真剣に考えておらず、安全さえ商売にしようとしている証といえる。