重くなった車両をスムースに加速させるために必要
トラックの車両総重量は、当然のことながら乗用車の比ではない。ドライバーの人手不足もあって、規制緩和によって一度に積める量は増える傾向に。現在なんと車両総重量は36トンまで可能となっている。
そうなると、トラックのほうもいろいろ大変で、エンジンは極太トルクなのはもちろんのこと、ミッションも超多段で対応する。乗用車の場合は、多段というとATであれば滑らかな加速と燃費が可能に。MTならクロスレシオ化して気持ちよくシフト操作を楽しむなんていうことになるが、トラックの場合はとにかく重たいものを運搬するための多段化だ。もちろんこちらも乗用車の比ではなく、14段や16段も当たり前の世界で、アメリカのトレーラーヘッドのように18段というのもあったりする。対して日本車は、12段を採用するものも多いようだ。
パターンはもちろん16段がH字をつなげたようにズラリと並んでいるのではなく、まとめられているのが特徴。乗用車でも昔は副変速付きがあって、5段に対してローとハイがあるので都合10段というのがあったのを覚えている方もいるハズ。クロカンでは今でも副変速があるが、トラックの場合も同様。8つのゲートがあるダブルH型(真ん中でストッパーがあり)と呼ばれるのが日本車では多くて、各段にローとハイを設定することで、8段×2段で16段としている。
通常は全段をすべて使うことはない
さらにもうひとつタイプがあって、海外で多いのが、シンプルなH型を縦にふたつ重ねたようなタイプ。正確には海外のミッションメーカーが好むもので、日本車にも積まれていることがある。これは14段なら1速と4速、2速と5速、3速と6速が同じ場所になっていて、ほかにいわゆるスーパーローギヤ(クローラーギヤ)があって、それぞれにローとハイがある。
気になるのは、同じ位置にある別のギヤをどう選んでいるのかだろう。シフトに付いているスイッチ(レンジ切り替え)で切り替えているし、ローとハイも同様で、握ったときにスイッチ(スプリッター)を押して選んでいる。つまりまったく日本車とは違っていて、乗り換えると相当苦労するようだ。
ただ、いずれにしてもスーパーローのさらにローを使うのはフル積載で、坂道発進をする際など特殊な場合。平地ではフル積載でも飛ばしてシフトしたり、荷物をあまり積んでいないときや空荷のときは、4速から発進してハイだけでつなげていったりもするなど、全部のギヤを使って走っているとは限らない。
それでも超多段化が進んでいるのには乗用車とは異なる理由がある。最近は環境性能と燃費向上と積載量を増やすための軽量で、エンジンが小型で排気量が少なくなったり、パワーが絞られている。その分、段数を増やすことで狭くなったパワーバンドを維持できるようにしているのだ。煩雑なシフト操作のため、MTベースの2ペダル、つまりAMTの普及が同時に進んでいるのにも注目したい。

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