レクサスRC F GT3と同様のエンジンを搭載!

世界最速のGTマシンと謳われるスーパーGTのGT500クラスは、DTMと共通の“クラス1規定”を採用。過去に本サイトでトヨタGRスープラGT500を紹介した(https://www.webcartop.jp/2020/10/602876/)とおり、GT500のマシンは、レース専用に開発されたシャーシに各メーカーが独自に開発した2000ccの直噴ターボエンジンが搭載されているのだが、GT300クラスはどのようなマシンなのだろうか?



GT300クラスは国際規定の“FIA-GT3”と日本独自の“GT300”(これまでのJAF-GT)および“GT300MC”(これまでのJAF-GT MC)の3つの規定が採用されていることからさまざまなマシンが集結している。



車種バリエーションが多彩なことから、世界一の激戦区と謳われているが、なかでも注目したいのが、日本独自のGT300規定で作られたマシンだと言えるだろう。

この規定によりスバルBRZやトヨタGRプリウスPHV、さらにトヨタGRスープラがGT300クラスに登場するなど、他のカテゴリーでは見られないマシンがGT300クラスでは活躍しているが、メルセデスAMG GT3やポルシェ911GT3R、日産GT-R GT3などFIA-GT3規定で開発された国内外のスポーツカーに対抗すべく、GT300規定モデルは大幅なアップデートが行われているようだ。



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というわけで、ここでは2020年のスーパーGTにデビューし、いきなりGT300クラスで2勝をマークするなど、素晴らしいパフォーマンスを披露したトヨタGRスープラGTをクローズアップしたい。



解説をお願いしたのは昨年のGT300クラスに52号車としてGRスープラGTを投入し、計2勝をマークした埼玉トヨペットGreen Braveのエンジニア、近藤收功さん。2021年の開幕戦が行われた岡山でGRスープラGTの特徴について直撃したので、以下、Q&A形式でその模様をお伝えしたい。



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——GT300クラスのGRスープラGTは、たしか昨年までのJAF-GT規定で作られていると思いますが、気になったのはエンジンです。ベースモデルは3000ccの直列6気筒か2000ccの直列4気筒が搭載されていたと思うんですが、プログラムを見ると5200ccのV型8気筒エンジンが搭載されていますよね。これって何のエンジンでしょうか?



近藤氏:これはレクサスRC F GT3に搭載されているエンジンです。



——なるほど。レース用に開発されていたエンジンなんですね。エンジン開発はどこがしているんですか?



近藤氏:エンジン開発はTCD(トヨタカスタマイジング&ディベロップメント)さんです。レクサスRC F GT3のエボリューションモデル用として開発されていたエンジンが搭載されています。



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——ちなみに燃費はどれくらいなんですか?



近藤氏:1リッターあたり1.7kmから1.8kmぐらいの間です。



うーん。確かGT500クラスのGRスープラGTは1リットルで2km以上は走れるとのことだったから、それよりも悪いのか。GT500クラスは2000cc直噴ターボだけどGT300クラスのGRスープラGTは5200ccの大排気量だし、GT500クラスは燃料リストリクターの装着が前提になっているから燃費性能も高くなっているのかしら。



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——ところで、マシンの開発はどこが行っているのでしょうか?



近藤氏:シャーシはトヨタGRプリウスPHV GTを投入しているaprさんが行いました。プリウスとはホイールベースが違うので、共同で設計をしなおして、プロペラシャフトなどのサイズを調整しました。エクステリアなど空力パーツは風洞にかけながら自社(埼玉トヨペット)で行いました。



GT300のスープラは「高級住宅ぐらいの値段」

——見た目は市販のGRスープラに似ているような感じなんですけど、市販モデルとの共通点はあるんでしょうか?



近藤氏:GT500のGRスープラはスケーリングしているので、ほとんど市販との共通点はないと思うんですけど、GT300はAピラーとルーフはベース車両を使っているので、純正のスチールを使っています。あとはドアノブとテールライト、あとトヨタのエンブレムも同じです。逆に言えば、それ以外の部分はすべて競技用の専用品になります。



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——GT300にはいろんな車両が参戦していますが、GRスープラGTの武器はどこですか?



近藤氏:やっぱりコーナリングですね。コーナリング性能は他のマシンよりも高いと思うんですけど、2021年はBoP(性能調整)により車両重量が重くなっているので大変になってきました。それでも、ロール剛性やダウンウォースなど細部の改良で補おうとしています。



——GTスープラGTが得意なコースとしてはどこになるんでしょうか?



近藤氏:やっぱりテクニカルコースの岡山とかですかね。まだ走ったことはないんですけど、オートポリスとSUGOも合っていると思います。



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——2021年は埼玉トヨペットGreen Braveの52号車に加えて、LM Corsaの60号車、Max Racingの244号車もレクサスRC F GT3からGRスープラGTにマシンをスイッチしましたが、同じクルマが3台になったことでやっぱりライバル心はありますか?



近藤氏:チーフスタッフとしては52号車だけで行きたかったんですけどね。「いいクルマができたなら共有したほうがいい」との社長の方針から他のチームへの供給がきまり、一気に3台になりましたが、やはり同じクルマなので闘争心は上がりますね。タイヤもうち(52号車)はブリヂストンですが、60号車はダンロップ、244号車はヨコハマとメーカーが違うので、遅れないようにしていかないといけないと思っています。



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——ちなみに、GT300クラスのGRスープラはおいくらなんですか?



近藤氏:高いですよ。高級住宅ぐらいの値段はしますね。



——なるほど。やっぱり庶民には買えそうにないですね。ありがとうございました!



このようにGT300クラス規定で開発されたGRスープラGTも独自の開発が行われているレーシングカーで、そのフィーリングについて60号車を駆る吉本大樹選手は「剛性感があってしっかりしているし、ホイールベースが短いのでコーナリングが速い。RC F GT3はダウンフォースが優れていたので中高速コーナーでのバランスが良かったけれど、GRスープラはダウンフォースがあるうえに小さいコーナーも良く曲がる」とインプレッション。さらに244号車を駆る堤優威選手も「これまでレクサスRC F GT3やトヨタ86MCに乗ってきましたが、圧倒的にGRスープラはダウンフォースが良くてグリップしている」と評価が高い。



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実際、開幕戦の岡山では予選Q1で244号車がA組、60号車がB組でトップタイムをマークしたほか、Q2では52号車が2番手タイムをマーク。さらに決勝でも52号車が3位で表彰台を獲得したほか、244号車が5位、60号車が8位につけたことは記憶に新しい。



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60号車のエンジニアを務める小藤純一氏によれば「規定で変更ができないFIA-GT3と違って、GT300規定モデルは自分たちでパーツを作ってアップデートしていけるので速くなる」とのこと。このようにGRスープラGTは今度も進化が予想されているだけに、2021年のスーパーGTでもGT300クラスのリザルトを左右する一台として注目したい。

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