
再逮捕はスカウトの全容解明の一環
社会部記者が遠藤容疑者の再逮捕の経緯について説明する。「アクセスには約300人のメンバーが在籍。メンバーらは2019年~2024年にかけ、SNSなどで募った女性らのプロフィールを46都道府県、約350店舗に一斉に送信。オークション方式で一番高値を付けた店舗に女性をあっせんしていました」
こうした手法で遠藤容疑者らは、約15%のスカウトバックのほか、顧問料などを店舗から受け取っていたという。
「メンバーにはスカウトバックに応じて上から〝マネジャー〟〝チーフ〟〝プレーヤー〟などの階層にランク分けし、ランクに応じて報酬を分配していたようです。メンバーは互いに匿名で呼び合い、足がつかないように、店舗との金銭の授受はレターパックで行うなどの危機管理も行っていたことから、事件の全体像はまだ見えていません」(同前)
約70人体制の特別捜査本部も設置
遠藤の3回目の逮捕にあわせ、警視庁は生活安全部に約70人体制の特別捜査本部を設置。生活安全部に特捜本部が設置されるのは、実に十数年ぶりのことだという。「捜査を担う保安課の課長は長年、捜査2課などの刑事を経験してきた事件のプロフェッショナル。風営法などを取り締まる通常の保安課の感覚ではなく、事件として徹底的に捜査を進めています」(同前)
ホスト女性客ら搾取の元凶、スカウトバックの悪の構造
悪質な人身売買さながらのスカウトグループの徹底解明――。警察当局がここまでスカウトGの捜査に踏み込む背景には、「スカウトバック」がホスト通いなどで借金漬けになり、まとまった金銭が必要な女性の弱みに付け込み、性風俗店などへ送り込む元凶になっているとみているためだ。
スカウトバックはスカウトが送り込んだ店舗で女性が働き続ける限り、スカウトに支払われる。そのことで、スカウトは女性の収入を掌握。女性により働くよう仕向ける動機も生まれる。
「悪質ホストクラブ対策に関する報告書」より
スカウトがホストとつながっているケースもあり、お金が必要な女性の紹介を受けるほか、情報をホストと共有することで、女性の懐事情を筒抜けにする。
スカウト‐ホスト‐風俗店の悪の共存関係断絶へ
遠藤容疑者の逮捕に絡み、警視庁はアクセスから女性を紹介されたとして埼玉県川口市のソープランド『ChouChou』を今月7日に家宅捜索。店舗の代表2人を売春防止法違反容疑(場所提供)で現行犯逮捕している。一連の捜査には「今年早々にも予定されている、悪質ホストを規制する風営法の改正が背景にある」と前出の記者は続ける。
「一昨年の11月。立憲民主党の塩村あやか参院議員が悪質ホスト問題を国会で取り上げてから同問題は社会問題化。警察庁は昨年、有識者検討会を立ち上げ、5回にわたり検討会を実施。12月に報告書を公表しています。
報告書には『ホストが女性客の恋愛感情につけ込んで高額飲食させる営業手法』『売掛金支払のために売春や風俗店勤務を求める行為』『スカウト等から性風俗店が女性を紹介された場合、対価を支払う行為』などへの規制の必要性について言及するとともに、今回、埼玉県のソープランド経営者が逮捕されたように、性風俗店を営む者が、スカウト等から求職者の紹介を受けた場合において、対価を支払う行為を規制する案も盛り込まれています」
検討会ではほかにも、現状では上限200万円(風営適正化法第49条)の店舗に対する罰則をより実効性を高めるため大幅に引き上げる案なども検討されており、あらゆる角度から悪質な行為や店舗排除の方向性が議論された。
警察当局は社会問題化する『悪質ホスト問題』を『トクリュウ(強盗や特殊詐欺などを各地で繰り返す匿名・流動型犯罪グループ)対策』と同列としてとらえている。
風俗店がアクセスのようなスカウトGに、スカウトバックを支払う。それにより、その一部がホストらに流れる――こうした悪しき慣行を断ち切るため、警察当局は法改正も見据えつつ、3者の歪(いびつ)な共依存関係に本格的にメスを入れ始めた。