しかし、実際には科学捜査によって難解な事件が解決することはまれで、誤解もあるという。1万体以上の遺体の解剖を行ってきたベルギーの法医学医、フィリップ・ボクソ氏が、科学捜査のリアルについて打ち明ける。
※この記事はフィリップ・ボクソ氏の書籍『死体は語りだす:法医学医が読み解く「死者からのメッセージ」』(三笠書房)より一部抜粋・構成しています。本文中に登場する鑑識実務のあり方の記述には、日本とは異なる事項も含まれています。
テレビの中の科学捜査でみられる妄想・誤解
2000年代より、科学捜査はテレビドラマに定着し、一般人にもお馴染みとなった。私の子どもたちの世代には、アメリカの「CSI:科学捜査班」を観ていた人が多い。そのために、犯罪学や法医学を進路に選ぶ若者が増えたことは、この番組の功績であると言えるだろう。一方、テレビのせいで広まってしまった「妄想に近いいくつかの誤解」がある。
第一は服装だ。テレビや映画の事件現場では、現場の汚染を回避するために必須である保護服を、ほぼ誰も着用していない。フランスでもベルギーでも、保護服を着用せずに事件現場に出入りすることは重大な規律違反である。
とは言え、鑑識が着ているゴミ袋のようなオーバーオールはセクシーではないし、画面では見栄えがしない。私もこれは認めよう。
テレビドラマにはそのほかにも間違いが多々あり、いずれも私のような専門家に言わせると荒唐無稽である。
たとえば、木製の義肢から血が流れるシーンを見たことがある。人造血管を組み込むことに成功した前代未聞の義肢だ!
また、頭蓋骨の割れ目が、被害者の頭部に振り下ろされた凶器の形状とぴったりと一致している(まるで凶器の指紋であるかのように)シーンもよく見かけるが、これもあり得ない。
さらに、液体の中に放置された死体が膨れるのではなく、腐敗作用で皮膚が顔から剥がれる、という展開をテレビで見たことがある。
シャンパンで満たされた噴水の中で若い女性が溺死しているのが発見され、証拠としてコンタクトレンズ1枚が見つかり、そこから犯人のDNAを検出す…というエピソードもあったが、これもいただけない。アルコールが細胞とそこに含まれるDNAにどのように作用するかを考えると、不可能な話だ。
以上だけではない。死体発見現場が清潔すぎる。
特に室内の場合は、事件の前にきちんと掃除されていたらしく、殺人と関連するもの以外の痕跡は奇跡的に残されていないようだ。そのおかげで、現場で発見される痕跡はすべて殺人に関連している。
現実はどうかと言えば……鑑識が足を踏み入れる現場は多くの場合、想像を絶するほど汚らしい。汚物の真っただ中で暮らす人間がどれほど多いかを知れば、みなさんは驚くことだろう。
科学捜査もののテレビ番組は、あくまで娯楽として
20年前、テレビ番組に登場する鑑識官はやりたい放題だった。幸いなことに現在では制作側の意識も変わり、俳優が演じる科学捜査班のスタッフはそれぞれ専門分野を持つようになった。だが、私の口癖である「餅は餅屋」という言葉の通り、専門外の領域では誤りが生じやすく、今でもテレビの制作者はときどき間違いを犯している。
とは言え、テレビドラマに登場する科学捜査の技術は多くの場合、現実に存在する。
水槽のようなガラス容器の中でシアノアクリレート(接着剤の一種)を温めて蒸散させ、浮かび上がった指紋を写真に撮ってデジタルファイルに取り込むテクニックが好例だ。まさに、平均的な大きさの物体については、この技術で指紋を採取している。
ただ、その反面、テレビドラマでは指紋だけで信じられないほど多くの犯人が特定されているが、これにはいつもあきれている。全国民の指紋が登録されている、という設定なのだろうか。いずれにしろ、フランスにもベルギーにも、全国民の指紋を網羅したデータベースなどは存在しない。
また、テレビドラマでは、すべての事件が現場に残された痕跡によって解決に至る。これはステレオタイプとして視聴者の脳裏に焼きついているので、アメリカの陪審員の中には、事件現場で犯人のDNAが発見されなかった場合は有罪だと認めることを拒絶する人もいる。
だが、現実はフィクションとは異なる。テレビドラマが植えつけるこうした先入観に凝り固まると、極端な場合、痕跡がないのなら犯罪は起こらなかったのだと考えてしまう。
最後にもう一つ。
テレビドラマでは、科学捜査官たちはしばしば個人的な感情に動かされて葛藤を覚える(登場人物の人間味を強調する、という制作側の意図によるものだろう)。だが、犯罪科学のエキスパートは、利害が対立する当事者らに対して公正中立を保たねばならない。そのためには、自分の感情をコントロールすることは当然の義務である。
これは、エキスパートたちは何も感じない、という意味ではなく、感情に支配されないように自らを律している、という意味である。ただ、それが困難な場合もある。
特に、子どもの遺体を解剖するときは!
結論として言えるのは、科学捜査もののテレビ番組は、あくまで娯楽として鑑賞すべきである、ということだ。そもそもああした番組が、科学捜査の実態に忠実に制作しました、などと主張したことは一度もない。
■フィリップ・ボクソ(Philippe Boxho)法医学医。
1965年生まれ。ベルギーを代表する法医学医であり、同分野の第一人者。リエージュ大学法医学教授、および同大学法医学研究所所長を務める。そのキャリアにおいて6000体を超える検案、4000体以上の司法解剖を執刀。膨大な専門知識を有する医学の権威として、重罪裁判所での証言回数は300回以上に及ぶ。医学・学術界への貢献に加え、作家としてもフランスやベルギーで絶大な人気を誇り、本書を含め、著作は世界で累計160万部を売り上げる。「死」や「法医学」という厳粛な現実を、人々の知的好奇心を揺さぶる一級の物語へと昇華させるその筆致は、多くの読者を魅了してやまない。

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