雇用契約の「無期転換」を阻止するために不当な雇い止めをされたとして、高校で非常勤講師として働いていた男性が学校法人青山学院に対し雇い止めの撤回と契約の更新を請求する訴訟の二審判決が、4月22日、東京高裁で出された。
一審に続き請求は棄却され、学校法人側の勝訴となった。
しかし原告側は、契約更新に関する「合理的期待」が高裁でも認められたのは高校の非常勤としては初の事例であることを強調し、前向きな姿勢を示した。

「結論としては不当判決」

原告の男性は2019年4月に青山学院高等部に採用され1年ごとに契約を更新してきたが、5年目の契約更新を拒否され、2024年3月に退職した。同月、男性は地位確認(雇い止めの無効)を求めて、東京地裁に提訴。地裁判決は2025年7月に出された。
労働契約法18条は、有期雇用契約が5年を超える時、労働者が申し込めば無期雇用に転換できる「無期転換ルール」を定めている。
原告側は、無期転換申込権が発生する直前に男性が雇い止めとなったことは法の趣旨に反する「事実上の脱法行為」と主張した。
また、労働契約法19条に定められた「雇い止め法理」により、以下の条件を満たす場合、雇い止めは無効となる。
(1)労働契約法19条2号における「契約更新の合理的期待」が認められるか
(2)雇い止めに客観的合理性・社会通念上の相当性が認められるか
原告代理人の今泉義竜弁護士によると、無期転換直前の雇い止めに関する裁判においては、まず(1)の段階で合理的期待が認められなければ、(2)について検討することもなく雇い止めは「有効」と判断される。
そして、高校の非常勤講師について高裁以上の段階で(1)を認めた裁判例は判例集に掲載されておらず、今泉弁護士が知る限り今回が初の事例だという(大学の非常勤講師については、認められたケースが複数存在する)。
そのうえで、従来は原告男性と別の講師(B講師)の計2名で担当していた教科のコマ数が減り1名で足りるようになったこと、B講師は20年以上前から雇用されていたこと、原告男性が在職中に複数のトラブルを起こしていたことなどの理由から、裁判所は(2)を認めず、雇い止めには客観的合理性があると判断した。
判決後の会見で今泉弁護士は、原告男性が起こしたトラブルは実際には些細なものであり、また学校法人側がトラブルについて持ち出したのは裁判が進行してからのことであると指摘し、裁判所の判断に疑問を呈した。
「雇い止めに客観的合理性があったのか否かは、厳しく判断されるべき。しかし裁判所はそれを行わず、緩やかな枠組みで雇い止めを認めてしまった。
その点で、結論としては、不当判決だ」(今泉弁護士)

「不当な雇い止めにはNOと言っていい」

会見に参加した「私学教員ユニオン」の佐藤学氏は、私立高校における教員の約4割が非正規であり、さらに近年では公立高校でも非正規の割合が増えていることを指摘し、本件は「労働問題であると同時に教育問題である」と語った。
「毎年のように教員がコロコロ変わるというのは、教育の継続性に関わる。いじめの早期発見や、生徒のメンタルヘルスケアなどにも悪影響を及ぼす」(佐藤氏)
そして「高校の非常勤講師が裁判を通じて声を上げること自体が非常にまれだ」として、本訴訟の社会的意義を強調した。
原告男性は「一言でいうと、非常勤講師の権利救済の扉を開ける判決だ」と語った。
「非常勤講師にも、来年も続けて働けることに合理的な期待があり、『3月末に雇い止めされ終わり』ではない、ということが高裁レベルで初めて認められた。
不当な雇い止めにはNOと言ってもいい。そういうことを、この判決は言っているのではないか。
一方で、課題も大きい。裁判において、学校法人側はそもそも非常勤講師を削減することの必要性を立証していない。しかし裁判所は、その立証は不要だと判断してしまった。
もし非正規教員が全員辞めてしまったら、学校の現場は成り立たない。とくに授業は学校の基幹業務であるが、非常勤講師は専任講師と同様に授業を担っている。
裁判所は、学校という職場の実態が見えておらず、授業という業務の評価を誤った」(原告男性)
また原告男性は、判決は「裁判所による非正規(教員)差別」であると評した。
最高裁への上告について、原告側は検討中とのこと。


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