ヤマト運輸がかつて全国約3万人いた業務委託の配達員「クロネコメイト」との団体交渉を拒否した問題で4月23日、和解協定が締結された。
協定書の中で、ヤマト運輸は「組合らが申し入れた団体交渉に応じるべきであったにもかかわらず、会社がこれに応じなかった」として団体交渉に応じる義務の違反を事実上認めたうえで、遺憾の意を表明。
組合側は同日午後に会見を開き「業務委託契約の配達員であっても労働組合法上の労働者であることをヤマト運輸自身が認めた」との見解を示した。
なお、ヤマト運輸は弁護士JPニュース編集部の取材に対し「元クロネコメイトの皆さまの労働者性を認めたものではございませんが、約2年5か月にわたり東京都労働委員会において審理を続けるなかで、同委員会から提案を受け、本日(4月23日)に和解に至りました」とコメント。和解成立後も両者には見解の相違がみられる。

日本郵便へ業務移管、全員に契約終了を通告

「クロネコメイト」とは、ヤマト運輸と「配達業務委託契約」を結び、カタログやダイレクトメールの配達に従事していた、個人事業主扱いの配達員のこと。多くが長年にわたり契約を更新してきた。
事の発端は2023年6月19日。ヤマト運輸は、ダイレクトメールなどを各家庭のポストに投函する「クロネコDM便」「ネコポス」の配達業務を日本郵便に移管すると発表し、全クロネコメイトに対して2024年1月末での契約終了を通告した。
通告を受け、全国のクロネコメイトが全日本建設交運一般労働組合(建交労)の軽貨物分会(略称:建交労軽貨物ユニオン)などに相談・加入。組合側はヤマト運輸に団体交渉を申し入れたが、同社は「クロネコメイトは労働組合法上の労働者に当たらない」として拒否を続けた。
一方で、同じく契約解除を通知されていた仕分け業務のパート社員(約3500人)については、一部が建交労に加入して団体交渉を申し入れたところ、ヤマト運輸はこれに応じた。交渉の結果、約1350人が配置転換により雇用を継続している。

「団体交渉に応じていれば、より多くが救済されたはず」

2023年10月31日、軽貨物ユニオンと上部団体は東京都労働委員会に対し、ヤマト運輸の団交拒否が労働組合法7条2項の禁じる「不当労働行為」(※)に当たるとして救済を申し立てた。
※使用者が正当な理由なく団体交渉を拒んだり、組合活動を妨害したりする行為。
その後、事件はあっせん手続きに移行し、約2年半を経て今回の和解に至った。

弁護団の水口洋介弁護士は会見で、和解協定書の第1項について「組合が組織したクロネコメイトの労働者が労働組合法上の労働者であり、会社に団体交渉義務があったことを前段で認めた」と説明。
「約3万人のクロネコメイトなしにカタログ配布等のヤマト運輸の事業は成り立たず、事業組織への組入れが明らかだったうえ、契約内容は全国一律で一方的に決定されていたことなどから、同社も認めざるを得なかったのではないか」と振り返った。
加えて、パート社員が団体交渉を通じて雇用継続を勝ち取った経緯に触れ、「最初から団体交渉に応じていれば、再配置などで雇用継続できた組合員もいただろう」と指摘した。

「人として謝罪を」

建交労栃木県本部の山内健人執行委員長は、今回の和解が運送業界に与える影響について次のように述べた。
「2024年問題でドライバーを業務委託に切り替え、残業規制の対象から外す動きがある。そこで働く個人事業主が待遇改善を求めても『労働者じゃないだろう』と蹴られるのが通常だが、業界最大手のヤマト運輸でさえ認めたという事実は、大きな抑止力になる」
会見では、元クロネコメイトの女性から寄せられた声も紹介された。
「長い間ヤマト運輸のために働いてきたにもかかわらず、高圧的な態度で契約を切られ、謝罪の言葉もなく、私にとっては思い出したくもない、つらい出来事です。
もし、ヤマト運輸側が(契約解除時に)心からの謝罪の言葉をかけてくれたなら、こんな気持ちにはならなかったでしょう。
お金ではなく、人として、迷惑をかけたと謝罪する気持ちがあれば良かったです」
一方、和解協定書の第2項以降は守秘条項とされ、和解金の有無等を含む内容について、組合側は「ノーコメント」とした。


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