ふるさと納税“ポータルサイト”等の手数料が“寄附額の11.5%” 「得する制度」のはずが…多くの人が気付いていない“増税リスク”とは?
ふるさと納税の仲介サイト運営事業者に対し、全国の自治体が2024年度に支払った手数料が総額1379億円に上ったことが、総務省が5月12日に発表した調査結果で明らかになった。これは仲介サイトを経由した寄附総額1兆2025億円の11.5%を占める。
自治体間の寄附獲得競争が過熱するなか、手数料の支払いが重荷になっているとして、総務省は事業者側に引き下げを要請する方針だ。
林芳正総務相は記者会見で「手数料が高額だ。強い問題意識を持っており、縮減を図る必要がある」と述べ、問題の深刻さをにじませた。一見すると寄附者にとってメリットの大きいこの制度は、その裏側で巨額のコストを生み出している。この手数料問題は、ふるさと納税制度そのものの持続可能性を問うものと言えるだろう。
ふるさと納税の制度が抱える課題と私たち一般市民への影響について、納税者の視点に立ってYouTube等で精力的に情報発信を行う黒瀧泰介税理士(税理士法人グランサーズ共同代表)に聞いた。

ふるさと納税の「お得」の仕組み

まず、ふるさと納税の基本的なしくみを確認しておこう。ふるさと納税は、事実上、寄附先の自治体から受け取れる「返礼品」を目当てに行われているケースがほとんどだろう。しかし、具体的にどのようなメリットがあるのか、理解があいまいな人も多いのではないか。
黒瀧税理士:「ふるさと納税は、自分が居住する自治体以外の任意の自治体を選んで寄附を行い、翌年の税金から『寄附金額−2000円』の控除を受けられる制度です。
返礼品の市場価値が自己負担額の2000円を超える場合に、その差額だけ実質的に得をするという構造になっています」
たとえば、東海地方のK町に約11万円を寄附すると、返礼品として町内に工場があるA社製の人気マットレス(定価約3万8500円)を受け取れる。この場合、定価から自己負担の2000円を差し引いた3万6500円分、寄附者は得をすることになる(【画像】参照)。
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【画像】K町にふるさと納税をした場合

経費の肥大化に対し、繰り返されてきた規制

しかし、この制度は当初から経費の肥大化という問題を抱えてきた。
問題は大きく2つ。
第一に、自治体間で寄附を得るために魅力的な品を用意しようとする「返礼品競争」が起き、返礼品の調達価格が押し上げられること。第二に、PR効果を狙って「楽天」「さとふる」「ふるさとチョイス」といった大手の仲介業者を利用することで、多額の手数料が発生することだ。
こうした問題に対し、国はこれまで様々な規制を設けてきた。
  • 地場産品基準:返礼品は、その自治体との密接な結びつきが説明できる「地場産品」に限る。
  • 30%ルール:返礼品の仕入れ額は寄附額の30%以内に抑えなければならない。
  • 50%ルール:仲介業者への手数料なども含めた経費の総額は、寄附額の50%以内に抑えなければならない。
このうち、「地場産品基準」については、かつて大阪府泉佐野市が市との結びつきが薄い「熟成肉」や「精米」を返礼品として問題視されたことを受け、2023年10月から規制が強化された。例えば食肉の熟成や玄米の精白は、その都道府県内で生産されたものを原材料とする場合に限られるようになった。
さらに、2025年10月からは、仲介業者が寄附額に応じてポイントを付与する「ポイント制」も禁止された。ポイント付与の原資のコストが結果的に経費に転嫁されることが問題視されたためだ。
なお、この点について、仲介業者側は、ポイント付与の原資は自社負担であり自治体の手数料には含まれないと主張している。また、楽天は国を相手にポイント付与を禁止する総務省告示の無効確認を求めて行政訴訟を提起している。

これらの規制はすべて、過熱する自治体間競争と、それに伴う経費の増大を抑制する目的で導入されてきた経緯がある。

新たな焦点となった「高すぎる手数料」

これまでの規制にもかかわらず、今回、仲介事業者に支払われる費用の内実が改めて問題として浮かび上がった。総務省の調査によれば、2024年度のふるさと納税の寄附金受入額約1兆2728億円のうち、94.5%にあたる約1兆2025億円がポータルサイトを経由したものだった。
そして、自治体がポータルサイト運営事業者に支払った総額は約2559億円に上る。
このうち、返礼品の「調達費」(約947億円)や「送付費」(約234億円)を除いた、純粋な業者側の手数料にあたる経費については手数料の内訳を見ると、「事務費等」が約1166億円、「決済手数料」が約161億円、「広報費」が約52億円、合計約1379億円だった。これは寄附金受入額の11.5%を占め、仲介業者への支払総額の過半数に達する。
さらに、手数料総額の90.6%(1249億円)が上位4社に集中しており、うち3社では寄附総額に占める手数料の割合が10%を超えていた。
黒瀧税理士は、この数値について次のように分析する。
黒瀧税理士:「仲介業者の大部分がポータルサイト運営事業者であり、事務処理はデジタルで迅速に行われ、あまり人の手がかからないしくみになっています。
それにしては、返礼品の調達(仕入れ)や送付にかかるコスト以外の業者側の手数料があまりに高すぎると思われているのでしょう」

経費負担が大きいと、めぐりめぐって「増税」につながるリスク

では、ふるさと納税の経費が大きくなることは、納税者である私たち一般市民にどのような影響をもたらし得るのだろうか。黒瀧税理士は「結果的に増税につながるリスクがあるため」と説明する。
黒瀧税理士:「ふるさと納税の制度がなければ、当然のことながら、そのための経費はかかりません。ふるさと納税の制度があることによって、日本全国の自治体のトータルで考えると、経費の分だけ、使えるお金が少なくなっていることになります」
その他にも、ふるさと納税の制度については、自治体間の「財源の奪い合い」という問題も指摘されている。
どのようなことか。
黒瀧税理士:「特に、これといった名産品や見どころが乏しい自治体は深刻です。他の自治体の住民から多額の寄附を受けることが難しい一方で、住民が他の自治体に寄附することによる財源流出に苦しむことになります。地方創生という理念からすると逆効果になってしまいます。
この点については、多くの自治体で、ふるさと納税によって流出した住民税額の75%が国からの地方交付税交付金で補填される仕組みがあります。しかし、その原資は国税です。
地方交付税の原資は、所得税の33.1%、法人税の33.1%、酒税の50%、消費税の19.5%、地方法人税の全額です(地方交付税法6条)。
さらに、東京23区のような地方交付税交付金の不交付団体は、この補填がないため、財源流出がそのまま行政サービスの縮小に直結するリスクを抱えていることも指摘されています。
これらの構造があることは否定できません。このことと相まってふるさと納税の経費が大きくなることは、結局、増税につながり、納税者の不利益となって返ってくるのです」
利用者個人の視点から見れば「お得」な制度も、社会全体で見れば、そのコストがめぐりめぐって国民全体の負担となりかねない。総務省による手数料引き下げ要請がどのような結果をもたらすのか、制度の理念と現実の乖離が問われる今、その動向を注視する必要がある。


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