女性用下着最大手のワコールホールディングス<3591>が2023年11月に中期経営計画の見直しを公表して以降、相次いで業績立て直しのための対策を打ち出している。
直近では子会社の福岡工場(福岡県久留米市)の事業譲渡を決めたほか、これまでに、マネキン配備などを手がける子会社の七彩(京都市)の売却や、希望退職者の募集、不動産の売却などを実施。
こうした取り組みで2025年3月期は、前年度の95億円強の営業赤字からの脱却し、20億円の黒字化を目指す計画だ。
すでに2025年3月期第1四半期では32億600万円(前年同期比17.6%増)の営業利益を上げており、改革は順調に進んでいるように見える。
だが、同四半期の実店舗の来店客数は想定を下回っており、通期でも2期連続の減収を見込むなど振るわない面もある。
ワコールでは2025年3月期に「価格改定や原価低減に関する追加対策を検討、実施する」としており、さらなる対策を講じる可能性は高そうだ。
子会社、事業、不動産を売却
ワコールは2023年11月に、中期経営計画(2023年3月期から2025 年3月期までの3カ年)を見直し、コスト削減やサプライチェーン(製品の原材料の調達から販売までの流れ)に改革に着手した。
急激な物価上昇や円安進行などによって同計画初年度の2023年3月期に34億9000万円の営業赤字に陥ったため。計画の見直しと同時に、2024年3月期の業績予想の下方修正や役員報酬の減額などを決めた。
2024年2月には希望退職者を募集して215人が応募したほか、2024年5月には浅草橋ビル(東京都台東区)、2024年8月には旧福岡事業所跡地(福岡市博多区)を売却した。
M&Aに関しては、2024年5月に売場施工やマネキン配備などを手がける子会社の七彩を、センコーグループホールディングス<9069>に譲渡することを決めた。ワコールがEC(電子商取引)販売を強化しているため、相乗効果が薄れていたという。
2024年8月には子会社のワコールマニュファクチャリングジャパン(長崎県雲仙市)の福岡工場を、補正下着などを製造するリライエンス(富山県氷見市)に譲渡する契約を結んだ。
ワコールマニュファクチャリングジャパンは、福岡工場を含め国内に5工場を保有しているが、新潟市と熊本県上天草市の2工場を閉鎖し、生産を福井県坂井市と長崎県雲仙市の2工場に集約する。
2026年3月期は営業利益を6.5倍に
ワコールではコスト削減や事業売却などの取り組みで2025年3月期は、売上高1830億円(前年度比2.2%減)、営業利益20億円(前年度は95億300万円の赤字)を見込む。
当初、2025年3月期は売上高2200億円、営業利益165億円を見込んでいたが、この計画が未達となるため、新たに2026年3月期に売上高2030億円(前年度比20.2%増)、営業利益130億円(同6.5倍)のV字回復となる目標を設定した。
そうした中、2024年7月には、シンガポールの投資会社3D インベストメント・パートナーズがワコール株式の保有割合を9.47%から10.87%に引き上げ、筆頭株主になった。3Dの保有目的は「純投資及び状況に応じて経営陣への助言、重要提案行為を行うこと」。物言う株主(アクティビスト)として知られ、今後の計画にも影響を与える可能性もある。
目標を達成に向けてワコールは計画通りに歩を進めることができるだろうか。
文:M&A Online記者 松本亮一
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