南佳孝が語る、初の自主制作作品『いくつになっても遊びたりない』に込めた思い――デビュー53年目の自由すぎる創造の秘密に迫る
南佳孝 / Photo:吉田圭子

Text:森朋之 Photo:吉田圭子

デビュー53年目を迎えた南佳孝がCD+BOOK『いくつになっても遊びたりない』をリリースした。CDには、唄、ギター、その他すべての楽器をひとりで宅録した新曲10曲を収録。BOOKには、FM COCOLOの番組『南佳孝NIGHT AND DAY』(毎週水曜日18時~19時)の番組の企画として描き始めた絵画、さらに料理の写真やショートストーリーなどが収められている。現在は、『「Soloism 2026」ギターとピアノの弾き語りコンサート』を開催中。また、9月9日(水)はビルボードライブ横浜、9月16日(水)にはビルボードライブ大阪でバンドスタイルの公演も予定されている。76歳になった現在も自由で豊かな創造を続けている南佳孝。CD+BOOK『いくつになっても遊びたりない』を中心に、現在のモードについてじっくりと語ってもらった。



── 4月25日に行われた『南佳孝×鈴木茂×杉山清貴 Special Live』(東京・EX THEATER ROPPONGI)、素晴らしいライブでした。この3人で行うライブは2度目だったそうですね。



はい。杉山くんとは以前からずっと一緒にライブをやっていて、そこに茂くんが加わって。茂くんも昔からつながりがあるんですけど、3人のライブに関してはまだ探っている感じですね。3人それぞれの音があって、声も持っていますけど、「レジェンドが集まった」というだけでは面白くないし、やっぱり何かが生まれないとね。だから「曲でも書こうぜ」とは言っているんですけど、すぐ終わってしまうか、上手い具合に続いていくかはまだわかりません。



── ぜひ続けてほしいと思います! そして今回、CD+BOOK『いくつになっても遊びたりない』がリリースされました。まず“BOOK”には南さんが描かれた絵、手作りの料理の写真、ショートストーリーやエッセイなどが収められています。絵はいつから描かれているんですか?



コロナの時期からです。2020年ですね。どこにも出掛けられなくなったので、ちょっと自分に負荷でもかけてみようと思って。その間もラジオだけは続いていたから、毎週の“宿題”として描いていたんですけど、結局1回も休みませんでした。新しいことを始めるのは大事だけど、やっぱり継続しないとね。最初のうちはすごく凝っていて、大きめの油絵なんか描いていたんだけど、水彩も面白いし、最近は鉛筆画もやっていて。姉貴が美大を出た絵描きだったから、子供の頃から絵の具の匂いにはなじみがあったんですけどね。



南佳孝が語る、初の自主制作作品『いくつになっても遊びたりない』に込めた思い――デビュー53年目の自由すぎる創造の秘密に迫る

── 料理もその時期から始められたんですか?



そうです。スパイスが面白くてね。サーモンにはやっぱりディルだなとか、イワシに合うのはこれだなとか。ジェノベーゼってあるでしょ? 普通はバジルで作るんだけど、それを春菊に変えてみたり。



── 絵や料理を始めたことで、音楽制作などに影響もありましたか?



そんなにないかな。旅行なんかも「なにかヒントになるようなことがあったらいいな」と思いつつ行っているんだけど、そんなに上手くいかないしね。ただ、楽しまないと損でしょ。興味があることはやったほうがいいし、やっていれば「これは面白いかも」と思ったりするので。絵なんかもね、大人の楽しみというか、子供のときは買えなかった画材や筆を買ったりね(笑)。水彩画の筆なんかも、いいやつだと結構するんですよ。上手い人はほとんど1本だけで描くんですよ。そういうのはYouTubeで調べています。



── 絵の描き方を教えるYouTubeがあるんですね。



たくさんありますよ。YouTubeを見始めたのも2020年くらいからなんだけど、有名な絵描きが教えていたりするので。録音のやり方なんかもYouTubeを参考にしています。生演奏で録音した音源のキーを下げる方法とか。



── そうなんですね! 宅録はいつくらいから始めたんですか?



以前からやっていたんですけど、これもラジオがきっかけで。人の曲をカバーするコーナーを8年くらいやっていて、そこでビートルズの曲だとか、昔好きだったジミー・ウェッブの「By the Time I Get to Phoenix」とか。日本の曲もいいなと思って、伊東ゆかりさんや井上陽水さんの曲をカバーしたり。それを宅録でやっているうちに、少しずつノウハウがわかってきたんです。あと、友達のエンジニアがいろいろ教えてくれるんですよ。LOVE PSYCHEDELICOなどのエンジニアをやっていた方(山田ノブマサ)なんですけど、湘南のほうに引っ越してきて、すぐ近くに住んでいて。「いちばんいいマイクを買ったほうがいい」と言われて、ヴィンテージのいいやつを買ったんだけど、これが大正解。周辺機材もいいものを揃えたから高い月謝になったんだけど(笑)、そのおかげでわりといい音で録れるようになったので。



南佳孝が語る、初の自主制作作品『いくつになっても遊びたりない』に込めた思い――デビュー53年目の自由すぎる創造の秘密に迫る

──『いくつになっても遊びたりない』に収録されている10曲はいつ頃に書かれたんですか?



時期はいろいろなんですけど、僕ね、曲を書くのが好きなんですよ。中学3年くらいから見よう見まねではじめて、音楽の楽理もまったく知らないままずっとやっていて。昼夜逆転して、3時間くらいしか寝ないでずっとやっていたし、今も曲は書いているから、ストックがたくさんあるんですよ。あるとき「俺がいなくなったら、この曲たちはどこにも行けないんだな」と思って、「これは出しておこう」と。そこから曲を選んで、「もう1回サビを詰めよう」とか「もうひとつフックがあったほうがいいな」とかいろんなことをやりながら14曲くらい作ったのかな。それから10曲に絞って収録しました。



── ひとりですべての楽器を演奏するのもそうですが、宅録ならではの楽しさがある?



ありますね。なんでこんなに根気があるんだろう?と自分でも思うくらい(笑)。朝起きて、散歩して、トースト1枚食べて、そこからずっとやり続けて。絵とか料理とかラジオの宿題もやっているとすぐに夜になるんだよね。寝る前に、その日に録ったものを聴き直して「明日はこれをやらなきゃダメだな」と思って、翌日はそれに取りかかって。1カ月半くらいずっとそういう感じだったんですけど、本当によくがんばりました。



── 楽曲のこともいくつか聞かせてください。まず1曲目の「70歳の8ビート」。まずタイトルが素敵だなと。



5年くらい前、ちょうど70歳になったときに書いた曲ですね。「“70's”より“70歳”だな」とかいろいろ考えてこのタイトルにしました。これはもうビートルズですよね。歌の後ろでギターとベースがユニゾンしていたり。僕らの世代には多いと思うんだけど、ビートルズに出会って、音楽の世界に入ったという感じだったので。大学の頃はちょっと背伸びしてジャズやボサノヴァをやりましたけど、やっぱりビートルズは原点ですね。



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── ポール・マッカートニーも今年、新作が出るみたいですね。



リンゴ・スターも出るでしょ? リンゴがオープンカーに乗っているミュージックビデオ(「Long Long Road」)を観たけど、なかなかよかった。ふたりとも80いくつでしょ?



── そうですね。ポール・サイモンも新作を出しているし、まだまだ現役で。



すごいよね。やっぱりね、好きなんだよ。「もう何もしなくていいよ」と言われても、「出来ちゃうんだから、しょうがねえじゃん」みたいな感じなんじゃないかな。僕もそうで、遊んでいるうちに曲が出来ちゃうし、「もったいないから出そうかな」と思うんだよね。



──「下手くそな曲」には〈オレならあいも変わらず 下手な曲書いて歌ってる〉という歌詞もあります。



これはね、茅ヶ崎に住んでいたときに、駅前でひとりで歌っていた人がいたんですよ。たぶん50歳くらいかな。オリジナル曲を歌っているんだけど、その人が歌っているのを見るたびに親近感が沸いてきてさ。「この人、まだ歌ってんのかよ」って(笑)。この人が高校生の頃、24時間のファミレスで仲間と過ごしたりしていたんだろうなって思って書いたのが「下手くそな曲」ですね。そうやってずっと歌っているのって、なんかいいなと思うんだよね。ウケてもウケなくても、好きだからやっているんだぜって。そういう人生も幸せじゃない?



── そうですね。「一人こっそり」は、思春期の頃のラジオの思い出を描いた楽曲。



ラジオが好きだったんだよね、子供の頃から。夜中だと思っていたんだけど、たぶん夜の22時くらいかな。布団のなかで鉱石ラジオを聴いていると、自分だけの世界を見つけた感じがあってね。ちょっと大人のムードの音楽なんかかかってさ、子供心に「いいなあ」なんて思って。いろんな曲がかかっていたんだけど、その頃から洋楽のほうにフォーカスしていましたね。だってカッコよかったから。



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── FM COCOLOの番組『南佳孝NIGHT AND DAY』は2010年スタート。南さんにとってラジオDJの面白さとは?



まずね、よく16年も続いたなって(笑)。以前にも何度かラジオをやったことがあるんですけど、大体1年くらいで終わっていたんです。なんで今回はこんなに続いているんだろう?って不思議なんですよ。だからといって、あまり(リスナーに)合わせようとは思っていなくて、まずは自分が楽しんでいればいいかなと思っていて。ライブもそうだけどね。



── 人生を楽しむという姿勢は、『いくつになっても遊びたりない』というタイトルにもつながりますね。



そのほうが面白くない? 毎日同じことを続けるのもいいと思うけど、そのなかでも「今日はこっちにしようかな」とか「こっちの道を通ってみよう」とかさ、少し目線を変えてみるといいんじゃないかなって。あと、少し違う考え方でやってみるとかね。そうしないと飽きちゃうでしょ。



── 飽きないのは音楽くらいですか?



飽きますよ、それも(笑)。なので今、新しいものを探そうと思って。昨日もいろいろ聴いていたんだけど、ブレンダ・ボイキンとかジェイソン・ムラーズとか、やっぱりいいよね。僕が知らないだけで、いいミュージシャンはたくさんいるはずだから、ちょっとディグってみようと思っています。



── そういうときに使うのはサブスクですか?



そうだね。でもさ、この便利さってどうなんだろうと思わない? やっぱり自分で探さないとね。レコードもね、引っ越しのたびに処分しちゃって、ぜんぜん手元にないんですよ。



── モノに執着がない?



全然ない。ゴールドディスクのトロフィーも捨てちゃったしね。そんなの眺めてさ、「うーん、よくやったな」なんて、自分らしくないから。



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── すごいですね、それは。後ろを振り返らないというか……。



39歳のとき、年下の友達とインドに行ったんですよ。まずニューデリーに入って、ちょっと小ぎれいなところで食事をしていたら、その友達が「もっと違う旅をしましょうよ」と言い出して、そこからずっと屋台。それがすごく面白くてさ。案の定、腹の調子が悪くなって、体を休めるためにカトマンズに行って。「おまえがくたばったらガンジス川に流してやるから、俺もそうしてくれよ」なんて言っていたんだけど(笑)、そのときに「執着しないで、好き勝手に生きるのがいちばんだな」と思ったんだよね。その頃から、過去のことはぜんぜん見なくなったね。「あのときこうしておけばよかった」も一切思わない。だって、自分で決めたことだからね。どっちにしようか決めるときに大事なのは、勘。理論でやるとあまりいいことないね。……今日は喋り過ぎだな(笑)。



── もう1曲、「悲しいエンディング」について。本当に素敵なラブソングだなと。



たぶんこの曲がいちばん古いのかな。歌詞は結構大変だったんだけど……ラブアフェアは絶対必要じゃないかなと思って。気持ちが若くなるし、片思いでもいいから。「悲しいエンディング」は“もう自分にはそんなことは起きないと思っていたんだけど、奇跡のような巡り合わせがあった”という歌ですね。



── 現在は、『「Soloism 2026」ギターとピアノの弾き語りコンサート』を開催中です。



ひとりでやるライブはデビューの頃からやっていたんですよ。そのときは「Soloism」なんて名前は付いていなかったけど、それが原点だと思っています。ギター1本、ピアノ1本で歌うって、好きか嫌いか、上手いか下手かだけで、他には何もないからね。今はバンドのほうもいいメンバーが揃っているので、そっちもやっていきたいと思っています。今回収録した10曲も、バンドスタイルで録りたいんですよね。



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<リリース情報>
CD+BOOK
『いくつになっても遊びたりない』
発売中

南佳孝が語る、初の自主制作作品『いくつになっても遊びたりない』に込めた思い――デビュー53年目の自由すぎる創造の秘密に迫る

4,400円(税込)
発売元:アトリエ南 (CVYM-3733)
販売元:株式会社キャピタルヴィレッジ
●CD:新曲10曲を収録。唄、ギターほか、すべて南佳孝が宅録。
●BOOK:新たに描いた絵、料理の写真、エッセイ(ショートストーリー)を掲載。

【CD収録曲】
1.70歳の8ビート
2.夢のかけら
3.タンゴ・ダムール
4.一人こっそり
5.下手くそな曲
6.遊びたりない
7.歌を歌って
8.祈り
9.悲しいエンディング
10.エイミー

※本作品の販売は、タワーレコード渋谷店、名古屋パルコ店、梅田NU茶屋町店、タワーレコードオンライン、南佳孝各コンサート会場、FM COCOLOラジパスストア(通販)の取扱いとなります。

<POP UP SHOP情報>
南佳孝×TOWER RECORDS
『いくつになっても遊びたりない』発売記念 POP UP SHOP

開催期間:2026年6月2日(火)~6月8日(月)
開催場所:タワーレコード渋谷店3F(東京都渋谷区神南1丁目22-14)
営業時間:11:00~22:00 ※最終日6月8日(月)は17:00まで
展示内容:パネル展示・絵画展示

【販売商品】
・CD+BOOK『いくつになっても遊びたりない』
・オリジナルグッズ
・描き下ろし絵画

▼詳細はこちら
https://towershibuya.jp/news/2026/05/25/229471#news



<ライブ情報>
『「Soloism 2026」ギターとピアノの弾き語りコンサート』
※終了公演は割愛
6月6日(土) 兵庫・神戸酒心館ホール
開場 15:00 / 開演 15:30

6月7日(日)愛知・メニコン シアターAoi
開場 15:30 / 開演 16:00

6月13日(土) 石川・金沢21世紀美術館シアター21
開場 16:00 / 開演 16:30

6月27日(土) 広島・Live Juke
開場 16:00 / 開演 16:30

6月28日(日) 山口・Jazz Club BILLIE
開場 17:00 / 開演 18:00

7月19日(日) 京都・京都文化博物館 別館ホール(旧 日本銀行京都支店)
開場 16:00 / 開演 16:30

9月12日(土) 佐賀・佐賀浪漫座
開場 16:30 / 開演 17:00

9月13日(日) 大分・ブリックブロック
開場 14:30 / 開演 15:00

11月8日(日) 新潟・ジョイアミーア
開場 15:00 / 開演 15:30

【チケット情報】
一般:7,500円(税込)
※会場によりドリンク代別途必要
https://t.pia.jp/pia/artist/artists.do?artistsCd=11012205(https://t.pia.jp/pia/artist/artists.do?artistsCd=11012205&afid=P66)



■バンドスタイル公演
9月9日(水) 神奈川・ビルボードライブ横浜
9月16日(水) 大阪・ビルボードライブ大阪
バンドメンバー:松本圭司(pf) / 岡沢章(b) / 島村英二(ds) / 住友紀人(sax・key) / 外園一馬(g)

※その他、公演の詳細はオフィシャルサイトをご確認ください。

南佳孝 オフィシャルサイト

https://minamiyoshitaka.com/



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