「退職代行」の次は「休職代行」サービスが急増?「利用者は20代、続いて40代~50代の正社員」業者が語る実態と専門家が指摘するデメリット
「退職代行」の次は「休職代行」サービスが急増?「利用者は20代、続いて40代~50代の正社員」業者が語る実態と専門家が指摘するデメリット

4月の入社初日に「退職代行」を利用して会社を辞めるケースが話題となるなか、「休職代行」という新たなサービスが広がりを見せている。心身の不調などを理由に休職したいものの会社に言い出せない人に代わり、意思の伝達や手続きの調整を担うものだ。

その実態や利用者像について、サービス提供者や社会保険労務士に話を聞いた。

労働者にとって大きな負担となる「休職手続き」

厚生労働省の「労働安全衛生調査(実態調査)」によれば、「過去1年間にメンタルヘルス不調により連続1か月以上休業・退職した労働者がいる事業所」の割合は、令和6年の調査で12.8%となっており、この数年ではほぼ横ばいで推移しているものの、一定の割合で休職する労働者がいることがわかる。

休職に関しては法的な定めはない。厚生労働省が「モデル就業規則」(令和7年12月)の中に「休職」について示しているように、会社の就業規則で規定されるのが一般的だ。

心身の不調などで休職したいと考えた際には、体調不良の中で診断書の手配や申請書の準備、会社とのやり取りを行なう必要があり、当人にとっては大きな負担となる可能性がある。

SNS上でも休職手続きの負担を訴える声が相次いでいる。

「休職手続きマジでしんどい」
「メンタル不調でしんどい中手続きをしないといけない事が億劫すぎて」
「病院や職場とのやり取りがしんど過ぎて復職せずに退職する人が多いのもわかる」

こうした中、「休職代行サービス」を行なっているのが「合同労働組合 私のユニオン」だ。その利用実態について担当者は次のように説明する。

「(利用者は)20代が中心で、その次に多いのは40代~50代です。雇用形態はほとんどが正社員です。サービスの利用者は徐々に増えております。

利用件数については開示していませんが、日に1~2件のお問い合わせをコンスタントにいただいている状況です」

担当者によれば、「精神的な負担で休職をしたい」という相談が全体の9割以上を占めており、これまで依頼を受けた中で休職に至らなかったケースはないという。

「休職は法律で定められたものではなく、企業ごとに就業規則などで規定されています。

私どもでは就業規則を依頼者に確認してもらい、休職制度の内容を把握した上で休職代行を行なっておりますので、これまでにお引き受けして休職に至らなかったケースはありません。

ただ、就業規則上で休職の適用外となるため、休職代行のお引き受けをお断りするケースはあります」

会社側とトラブルに発展するケースなどはないのだろうか。

「過去トラブルになったことはありませんが、退職代行に比べて休職代行の認知度は低いため、会社側が対応に戸惑っているのを感じるときがあります」

「休職代行は業務の切り分けが非常に難しくなります」

休職代行サービスの料金は15,000円。休職とあわせて傷病手当金の申請もサポートする場合は別途5,000円がかかるという。また公務員や会社役員はサービス対象外だ。

「休職代行は私ども以外には一部の弁護士事務所しか対応していないと思いますが、困っている労働者を助けるという意味で労働組合として行なう意義があると考えており、できるだけ使いやすい料金としております」

利用が増加している休職代行サービスだが、いっぽうで運用の難しさもあると担当者は説明する。

「退職が法律で定められている退職代行とは異なり、休職は会社ごとに定義や手続きが異なるため、休職代行は業務の切り分けが非常に難しくなります。

退職代行であれば会社と依頼者の間に入って手続きを進められますが、休職代行は復職手続きや人事制度なども複雑に関係していますので、すべてにおいて会社と依頼者の間に入るということができません。

そのため、休職代行の業務としては、休職の意思を会社へ伝えて承諾を取り付け、休職手続きの内容について会社と調整を行なうというのが主な業務内容となっています。

具体的な休職手続きや復職手続きについては会社の総務や人事とご本人の間でやり取りを進めていただくことになります」

こうしたサービスが広がりを見せる背景について、社会保険労務士の柳田恵一氏は「休職制度自体がネットなどで若者を中心に知られるようになった」ことが要因にあるとしたうえで、制度の課題について次のように指摘する。

「企業に入社するにあたって、労働条件通知書には休職についての記載がない場合もあり、就業規則は周知されている建前ですが、実際には内容を確認しづらいのが現状です。

休職についての規定を見ても、企業側の判断に委ねられている部分や抽象的な表現があり、自分が要件に当てはまるかどうかが分かりません。

また、休職したいと考える理由には、心身の不調、人間関係、自信喪失など漠然としたものが思い浮かび、その原因もパワハラ、セクハラ、将来への不安などで、上手く説明できないうえに、休職の要件を満たすと確信しても、会社に申し出るにあたっての精神的な負担に耐えられない、といった部分もあると思います」

「休職制度は各企業の自由に任されていることがトラブルの元」

サービスの利用は労働者の負担軽減につながる一方で、デメリットもあると柳田氏は指摘する。

「精神的負担を軽減できる、会社とのトラブルを回避しやすい、健康保険の傷病手当金などの制度利用がスムーズになるなどのメリットがあります。

一方でデメリットは、代行業者の質にばらつきがあって、中には悪質な業者も存在するというリスクがあること、また企業からは、主体的に休職を申し出ることができない人物であると見られ、長期的なキャリア形成の点で、本人に不利となることもありえます」

では、そもそも現行の休職制度はどのような課題を抱えているのか。

「就業規則に具体的で明確な規定を置くことで、対象者によって扱いが異なるという不公平の発生を防止しなければなりません。この前提として、企業がどのように休職制度を設計するかの検討・決定が必要です。

今後企業は短期離職が多い現状を踏まえ、休職制度の有無や具体的内容を社員の入社にあたって説明しておく必要があります」

このように企業の課題を挙げたうえで、法的な規定がないことがトラブルの要因になっていると指摘する。

「休職制度については、労働基準法や労働契約法などに規定がなく、各企業の自由に任されていることが、トラブルの元にもなっています。ある程度の枠組みを統一するなど、立法による解決が望まれます」

メンタル不調を訴える労働者が増えるなか、長く働き続けるための一つの選択肢である休職制度。その在り方をめぐる議論は、今後さらに求められそうだ。

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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