宮崎県初のポメラニアン警察犬「試験1年目で一発合格する犬はそうはいない」驚きの実力…飼い主の事情で手放された「ハク号」物語
宮崎県初のポメラニアン警察犬「試験1年目で一発合格する犬はそうはいない」驚きの実力…飼い主の事情で手放された「ハク号」物語

事件現場の犯人追跡はもちろん行方不明者の捜索などで大活躍する警察犬。この4月に、宮崎県の日向警察署でポメラニアンのハクくん(2歳)が採用された。

ハクくんこと「ハク号」は今年4月から1年間、指導員と共に警察犬として活動する。宮崎県内でポメラニアンが警察犬として採用されるのはこれが初めてのこと。しかし昨今では小型犬の採用に注目が集まりつつあるようだ。

ポメラニアン警察犬ハク号が証明した“実力”

ポメラニアンの「ハク号」に宮崎県の日向警察署で嘱託書が交付されたのは4月13日のことだった。日向警察署の副署長は言う。

「ハク号の採用試験は昨年12月に行なわれました。シェパードやゴールデン・レトリーバーなど51頭もの警察犬が足跡追及、臭気選別、地域捜索などの科目を受け、ハク号は足跡追及の部門で合格しました。

これは逃走犯人を想定した試験です。あらかじめ設定されたコースを犯人役が歩いて足跡コースを作り、遺留品などを発見させて追及するものです。

受ける科目は指導員が選び、1つだけ受ける犬もいれば2つ、3つ受けてすべて合格する犬など様々です。

今回は51頭中、38頭が採用されました。4月13日に嘱託書は交付されましたが、まだ出動はしていません」

しかし日本警察犬協会が公認する指定7犬種はシェパード、ドーベルマン、ラブラドール・レトリーバー、ゴールデン・レトリーバー、コリー、ボクサー、エアデール・テリア。

これらの犬種のような勇ましいイメージはなく、ポメラニアンはいかにも愛らしすぎる感じがするが、頼りになるのだろうか。

「試験に合格したので問題ありません。もちろん頼りにしています。それに仮に街中での捜査となった際に、大型犬ですと住民らを怖がらせてしまいますが、小型犬ならその心配もありません。

例えば山中なら大型犬の方が向いているのかもしれませんが、適材適所で判断します」

今後ハク号はどんな事件で出動予定なのかと聞くと「その事件によって鑑識係が決める。宮崎県警本部の鑑識係と連携を取ることもあるので、その際は本部が決める」のだと言う。

捜査の際は鑑識係がハク号に指示をするのだろうか。

「いえ、出動の際には指導員が警察犬を連れてきます。鑑識係が指導員に指示を出し、指導員が警察犬に指示を出します。鑑識と指導員そして警察犬とで連携を取って捜査にあたります」

飼い主の事情で手放されたハク号、警察犬になるまでのストーリー

警察犬ハク号の訓練にあたっているのは『井東警察犬・愛犬訓練所』所長で警察犬指導士の竹越ひかるさん(50歳)だ。

ハク号はふだん、日向警察署で暮らしているわけではなく、警察署から5kmほどの訓練所にいる。ハク号はどこで生まれ、これまでどう過ごしてきたのか。竹越さんに聞いた。

「もともとはペットショップで生まれた子でした。

その後、一般の方に飼われていたのですが、ある事情で飼えなくなりこちらで引き取りました。

1年ほど訓練をする中でガッツと集中力、それを維持する力があると感じ警察犬に向いていると思いました。それで訓練1年目で試験に挑戦させようと思ったのです。

1年目で一発合格する犬はそういないんですよ」

その可愛い見た目に反して、かなり頼れるハク号。昨年12月の試験の時も、竹越さんを驚かせる集中力を発揮した。

「試験の場では服従訓練というのも行います。そこで休止の姿勢で5分間待つという状況がありました。

通常の訓練時は誘惑に負けて動いてしまうことが多かったのですが、本番時、他の犬が動いたりする中でハクは5分間、審査員がハク周辺を回っても休止の姿勢を貫きました。

すごい集中力を発揮してくれて本番に強い子だと改めて感じましたね」

ますます優秀さを感じさせるハク号。訓練所での普段の様子はどんな感じなのか。

「ものすごくヤンチャ! 大型犬にも負けない元気と体力と持久力があります。それでいてすごく賢い。

服従性や柔軟さもあり、改めて犬種や年齢ではなく個体差なのだと感じます。

うちに一時保育で来るポメラニアンのぷりんちゃんのことが大好きで、いつも来るととんでもない速さで迎えに行きます。トイプードルのチクワくんともよく遊んでます。もちろん大型犬とも楽しく遊んでいますよ」

記者が取材のため竹越さんに電話をした4月16日11時30分頃のハクくんの様子も尋ねた。

「午前中にたくさん遊んで餌を食べて今は昼寝しています。午後から5分から30分ほど訓練します。訓練は長ければ長いほどいいわけではなく、短期集中するなどその時に応じて行います」

謝礼は数千円…それでも出動する理由

竹越さんはこれまで20年以上、様々な捜査活動に協力してきた。「警察からの出動要請は夕方の時もあれば22時や深夜2時や早朝4時など時間を問いません。いつ何時でも飛び起きて出動します」と言う。

「犬は起きたらすぐ動けるので、トイレを済ませてすぐ車に乗り込み現場へ向かいます。

数年前に花火大会後に、あるおばあちゃんが行方不明になったことがありました。付近に竹藪があり、一緒に出動した警察犬が『ワン!』と吠えたのですが、見つけられず。

でもそこで再び吠えたので改めて捜索し発見されたことがありました。

行方不明後から3日後のことでしたが、おばあちゃんは生存しており、現場がホッとしたのを覚えています」

過去には2016年に茨城県警がトイプードルの「アンズ号」を警察犬に採用。アンズ号はもともと殺処分寸前の犬だった。2025年には京都府警でスキッパーキというベルギー産の小型犬の「シュトゥル号」が爆発物捜索の部門で合格し、警察犬になった。

小型犬はその機敏さと集中力で、あらゆる捜査で活躍するポテンシャルを持っているのだ。だが率直な話、その報酬が気になる。竹越さんに警察犬の報酬について聞いた。

「飼育費用や捜索現場への交通費などは自己負担ですし、事件を解決しても謝礼は数千円。こればかりは捜査の役に立ちたい一心です。決して報酬目当てではありません。

犬が賢くなって事件解決にも協力できて誰かの役に立つ。それだけが私たちの喜びです」

小さく愛らしい、だが頼もしい。

ハク号の今後の活躍に期待したい!

取材・文/河合桃子 集英社オンライン編集部ニュース班

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