“終活”をテーマにした人生応援コメディ映画『お終活3 幸春!人生メモリーズ』(5月29日公開)で、スナックのママ・カオリ役を演じる藤原紀香。自身も今年1月、出演舞台の公演中に最愛の父の訃報に接するという出来事を経験した。
父の訃報を知った日に起きた、忘れられない偶然
――今年1月、舞台『忠臣蔵』の公演中にお父様が逝去されました。当日のことを改めて教えてください。
藤原紀香(以下、同) 公演の最中に父の訃報を聞きました。亡くなった当日、不思議なことがあったんです。
――不思議なこと、というのは?
普段、仕事先で父の話をすることはないのですが、その日はなぜか、夜の部の一幕と二幕の幕間に、ふと父のことを思い出して。
楽屋で衣装さん相手に、無性に父の話をしたくなり、「大晦日におせちを持って会いに行ったら、おせちはいらん、ピザを食べたいんや、ビールが飲みたいんやと言い出してね(笑)」など、とめどなく話していたんです。普段は舞台の衣装さんにプライベートの話はしませんし、父のことを話すのも初めてでした。
その後、後半の二幕へ。無事に公演を終えたとき、マネージャーから「お父様が亡くなられたとご実家より連絡がありました」と知らされました。
――お父様の訃報を知ったのは、公演後だったんですか?
はい。すぐに関西にいる弟に電話をしました。
――それは…驚きますね。
はい。あとから振り返ると、父のことをあの時間に思い出していたことが、とても不思議に感じられました。その日はとても寒い日だったのですが、楽屋は暖房をつけていなかったのに、不思議とぽかぽかと暖かくて。理由は分かりませんが、その偶然に少しだけ心が救われた気がしました。きっと、最後に会いに来てくれたのかもしれない、と今も思っています。
父は一代で一級建築士となり、生涯仕事に誇りを持って生きた人でしたので、「無理して地方から帰ってこなくていい」と言ってくれている気がして……。
――なるほど。
ですから、その日は関西に戻らず、翌日と翌々日の別の仕事で撮影を終え、関西公演のリハーサル前日に通夜と葬儀を済ませ、その翌々日の関西公演初日の舞台に立ちました。
――本当に大変な日々だったと思います。
いえ、突然のことではありましたが、誰もがいつか経験する別れですし、自分の中ではしっかり父を見送れたという気持ちもあります。
葬儀のあとは、家族で父の思い出話をしながら、大好物の蒸したじゃがバターと、ピザとビールをお供えし、団らんできました。舞台が好きだった父も、関西公演をきっと見守ってくれていたと思います。
最愛の父との思い出…残しておきたかった家族の時間
――今回、『お終活3 幸春!人生メモリーズ』で橋爪功さん演じる大原真一が、お父様にすごく似ているそうですね?
本当に映画通り、あんな感じで(笑)。特に、高畑淳子さん演じる千賀子ママとのやり取りが、うちの両親そのものなんですよ。口を開けば夫婦漫才のようなケンカというか(笑)。
でも父が亡くなってから母は、「あの人だったらこう言ってたわね。居なくなったら、なんだかやっぱり寂しいわね」なんて言ったりして。あれだけ夫婦漫才のように言い合っていたのに、居なくなって初めて気づく存在の大きさってあるんですよね。やっぱり夫婦なんだな、と感じます。
――お父様とのお別れについて、ある程度の覚悟はされていたのでしょうか?
重篤な病気ではなかったので、もう少し長生きしてくれると思っていました。ですので、逝ってしまったことには、やはり大きな喪失感がありますね。
――お父様との時間を振り返って、「もっとこうしておけばよかった」と感じることはありますか?
私や弟が社会人として忙しくなる前までは、家族で毎年、車で旅行に行って写真を撮っていました。最近は旅もできなくて、あまり撮っていなかったなと、遺影の写真を探すときに気づいたんです。
映画でもありましたが、終活の一環として、元気なうちに写真館で遺影を撮る方も増えていますよね。実際にその大切さを感じましたし、家族の記録としても、写真を残しておくことは大事なことだと思いました。
――改めて、家族写真の大切さを感じられたんですね。
そうですね。遺影のためというだけじゃなくて、家族の記録としても残りますし。年齢に関係なく、毎年一度は写真館で家族写真を撮っておくことは、楽しいですし、大切な時間になるのではないかと思います。
大切な人との別れに直面したとき…
――大切な人との別れに直面したとき、どのように向き合えばいいと思われますか?
別れには、どうしても寂しさや喪失感が伴います。でも私は、「亡くなったら終わり」とはあまり思っていないんです。形を変えても、心の中でずっとつながっているように感じています。
父は満州で生まれ、5歳で終戦を迎え、祖父と共に最後の引き揚げ船で日本に戻ってきました。
――そうしたご経験が、今の考え方にもつながっているんですね。
はい。先人たちが命をつないできてくれたからこそ、今の自分がある。そう思うと、亡くなった方とのご縁も、決して途切れるものではないと私は感じています。だから喪失感の中にいる方にも、「姿は見えなくても、きっと心の中でつながっている」とお伝えしたいんです。
――今でもお父様を身近に感じる瞬間は多いのでしょうか?
そうですね。父は若い頃からジャガイモが大好物で、我が家の食卓には必ずと言っていいほどジャガイモ料理が何種類か並んでいたんです。今日もふかし芋をお供えしてきたんですが、ジャガイモを見ると自然と父のことを思い出しますね。
『お終活3』でも描かれているように、思い出や記憶って、亡くなったあとにより深く心に根付いていくものなんですね。
――お父様から受け継いだものについて、改めて感じることはありますか?
数えきれないほどありますが、やはり一番大きなものは“プロフェッショナルな仕事人”としての姿勢、そして“タフさ”ですね。どんなときでも前を向いて生きる力は、父から受け継いだものだと感じています。
#後編「藤原紀香が語る終活への価値観の変化と、“人生の後半を楽しむ”という生き方」へつづく
取材・文/木下未希 撮影/三浦龍司
Dress:TADASHI SHOJI(タダシ ショージ)
Jewelry:RUBIDA(ルビーダ)

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