どうも、先月の食費が5千円だった渡りに船です。
節約上手? いえいえ、貧乏なだけですよ。
5千円で抑えてるんじゃなくて5千円しか無いんです。ここ重要。
たまには貧乏食卓に新たな風を求めて「節約レシピ!」なんて書いてある本を開いてみるけど、なかなかピンとくるものが見つからない。かかるコストは100円以内かもしれないが量が少なかったり、トマトみたいな高級食材を使ったり、ごはんのおかずにならないサラダなんて載せられても僕の心にはぬかに釘だ。だったらふりかけを買うよ!
そもそも節約ってのがある程度お金のある人の発想なんだ。そうだ、僕が求めてるのは節約本ではなくて貧乏をしのぐ本だったんだ!

”諸君には「お金がないくせにお腹が減っちゃったよ」ということがないだろうか?”
そんな1文から始まるライノ曽木の『正しい貧乏青年の食卓』は、お金が無い時のあらゆるシーンに対応した心構え&食事法を用意してくれてる貧乏レクチャー本だ。

時にはDJのように、そして韓流スターや永ちゃんのようにバカバカしく料理を紹介している。

まず始めに紹介されるのが「イタだくぜ!! 貧乏食マフィア」とサブタイトルの付いたスパゲティ特集。
素パスタに納豆を乗せただけの「水~戸スパゲティ」や、ふりかけの「ゆかり」をかけただけの「ゆかりスパゲティ」が紹介されている。貧乏青年なら「あー、やるよねーこれ」と共感出来るだろう。
まるでパソコン教室で電源のつけ方から教えてくれるような安心の導入だ。
ただの節約本ならここで「豚バラ肉と玉ねぎの醤油パスタ」なんて出しちゃうところだが、肉が買えない貧乏達には畑の牛肉といわれる大豆(納豆)で十分だ。

節約レシピと違ってこの「かろうじて料理」感がGOODだね。

しかし、なかには「普段料理もしないし、バイトもガテン系だから帰ってから飯を作る気力もないよ」という貧乏人もいるのではないだろうか?
そんな人は「労働者の味方ヤマザキ・パンクス」の項を読むといい。
”幅広い層に支持されるヤマザキ。その中でも我々側に位置するパンを見極めることが重要だ。菓子パン、洋菓子、連ものを徹底検証”
という見出しでヤマザキパン製品の1部を「我々側」と称し(もちろん貧乏の事だ)いかにヤマザキパンが貧乏の味方かを紹介している。
”ヤマザキ(山崎製パン)は、他が高級化を図り安価なパンを切り捨てる中、高級パンを開発しながらも下層パンを残し、しかも開発もするというメーカーなのだ。

そうだったのか。確かに安価の割にボリュームがあると僕がいつも買っている「スイートブール」や「大きなコロッケパン」はヤマザキパンだ。うわ、「薄皮つぶあんぱん」もヤマザキじゃないか。というか今挙げたパンはまるで自分が買ってるとこを見られてるんじゃないかと思うくらいドンピシャで紹介されている。貧乏が行き着くところはみな同じか……。
特に「薄皮ミニパンシリーズ」はあんこのほかにクリーム、チョコ、ピーナツ、白あんというバリエーションがあり「パンが食べたいが安いのしか買えない」という僕たちに選択の自由を与えてくれる聖母のような存在だ。


さらに本書では食だけではなく、片付けてない部屋で上手に食事をする「床喰い向上計画」「寝ながら喰うならこんなメシ」なんて項目もある。
貧乏な奴はどうせズボラだろうという購買層の人間性を見越した構成だ。
床喰いではあぐら流、ヤンキー流、忍者流、スポーツ流、ビーナス流、ウェイトレス流と6種類の流派に分けて紹介しており、自分に当てはまる流派があるからといって別にどうというワケではないのだがなんとなく嬉しいものを感じる。
ちなみに僕はあぐら流で「安定感がある、もっともポピュラーな流派。」として紹介されていた。読んでる雑誌のページを足の親指で固定出来るのが利点だ。女の子にお薦めの流派は、飯を床に置いて足を横に伸ばし片手で上半身を支える「ビーナス流」で彼氏の部屋で披露してアピールするといいらしい。
確かに突き出したお尻がセクシー。

「ふーん、でも実家暮らしの俺には関係ねーや」と思う勿れ。
”実家で無職。あえて言う、無駄飯喰らいだ。だからといって開き直ってはいけない。親しき仲にも礼儀あり、この言葉を噛み締めコソコソと、ときには大胆に夜食を喰らえ!”
「実家で隠れて貧乏食」のページでは親が買ってきた物をバレずに盗み食いする技術を惜しみなく伝授してくれる。

開封済みのお菓子や使いかけのハムのような食べてもバレにくいもの。
肉や妹のケーキなどの絶対に食べてはいけないもの。
最後の1個のアイスやヨーグルトなどの食べてもいいが個数によっては注意が必要なもの。
というように注意点、攻略法をこと細かに紹介している。近々、僕みたいに「もう家から出て行け」と言われそうな人たちは最後に紹介されている「ハム飯」などの貧乏食をマスターしておくのもいいだろう。

料理の詳しいレシピは載っていない、詳しい分量もない。焼くだけ、混ぜるだけ、かけるだけ、煮るだけ、炊くだけというものばかりなので、写真と材料さえ見れば誰でも適当に作れてしまうからだ。
貧乏は「米ならある」という状況によく陥りやすい。なので折角手に入れた少ないおかずはなるべく濃い味付けにして、いかに効率よく米を胃に送り込み満腹を装うかが勝負の分かれ目になる。つまり詳しい分量を記載しないのは「そこはあなたのお好みで」という意味もあるのだろう。
食材もいいが様々な調味料を準備しておくのも貧乏としてのたしなみだろう。

ちなみにライノ曽木は2003年に曽木幹太という名で『ASAKUSA STYLE 浅草ホームレスたちの不思議な居住空間』という本も出している。法政大学文学部卒業後に出版社勤務を経てライターの他にも写真家もこなしており、本作の最後には友情出演(友情抜き)として24名も名前が出ているところからよほど人望に厚い人間のようだ。

こうやって試行錯誤してると貧乏もちょっと楽しいよね!
さぁて、今日の夕飯は近所の弁当屋でもらったパンの耳だぞ。楽しいなぁ、あはは。(渡りに船/イラストも)