“ナースだからって見下してたんだ!?“
“アンタの過去、なかなか面白そうね!”


今夜放送のTBSドラマの予告シーンでの一幕。「アリスの棘」第6話では、看護師・星野美羽(栗山千明)が激高する。
お気に入りの研修医・盤台悠真(中村蒼)に、主人公・水野明日美(上野樹里)が急接近したことに腹を立て、窮地に追い込むべく、動き出すのだ。

明日美の父親を死なせた黒幕らしい盤台教授(岩城滉一)と悠真は、じつの親子という設定。だからこそ、明日美は情報を引きだそうと近づいたわけだが、恋に恋する浮かれ猫状態の美羽ちゃんはそんなことお構いなし。私の気持ちを知っているくせに! キーッ!! と怒り狂い、意趣返しをもくろむ。

ニコニコ親しげに近づいてきたかと思うと、突然逆ギレし、暴れ出す。この手のタイプの女子に関わると、たいてい面倒なことになる。
どうすれば、“豹変女子“を見抜けるのか。「アリスの棘」の明日美と美羽のやりとりから探っていきたい。

■「よろしくね! あ、敬語はなしで、うちらタメだもん」

第1話で、新人医師として大学病院に赴任した明日美に、親しげに話しかけてきたのが美羽だった。よく言えば、人懐っこく、愛嬌がある。が、明日美が困惑した顔を見せても軽やかにスルーする無神経さと表裏一体。同い年だからなんだ!? というツッコミを許さない強引さがすでに、きな臭い。


■「カレー作りすぎちゃって。もったいないから、うち来ない? ていうか来てよ。カレー、何派?」

第4話では、美羽が明日美を夕飯に誘う。「カレー作りすぎ」から「カレー、何派?」までの流れるような話のすり替えが圧巻。一人暮らしの女子が男子を家に誘いこむお手本のようでもあり、キャッチセールスの鑑のようでもある。しかも、連れて行った先は実家。
5人家族で育ちざかりの弟が二人もいる。美羽は一体何がしたかったのか、と不思議に思うが、次のセリフで腑に落ちる。

■「来たばかりでうまくいかないこともあるだろうけど、愚痴でもなんでも聞くから。ね、明日美?」

美羽が強引に夕食に誘ったのは、病院内でなじめていない明日美を心配して……ということだったらしい。おそらく悪気はない。でも、コミュニケーション上手を自負する女子ならではの傲慢さもちらつく。
転校生が来るたび、「仲良くしてあげなくちゃ!」と張り切る女子小学生を彷彿とさせるのだ。さらに、「二人のときはタメ口にしてよ」「うちら友達じゃん」とグイグイ迫る。煮え切らない男子を攻める手口としては悪くなさそうだが、知り合い程度の相手に繰り出されるには、なかなかハードなプレイ。これらのフレーズが出てきたら、いつでも逃げ出せるよう、半身の構えで戦況を見守りたい。


■「じつはさ、私、彼のことちょっと気になってるんだよね」

牽制球、いただきました! わざわざ説明するまでもないが「手ぇ出すんじゃねーぞ」の意。病院の食堂で「明日美って悠真先生のこと、どう思ってるの?」とおずおずと切り出したところからの剛速球。
しかも、「明日美とはせっかく友達になったんだし、ややこしい関係になりたくないじゃん?」と続けた上で「明日美は彼のこと、どう思ってる?」と質問するのだ。どこまで仕事が丁寧なのか。挙げ句「じゃあさ、応援してくれる?」である。キラキラ女子に見せかけた極道女子の刃先がキラーン。


■「ぶっちゃけ言うとさ、明日美と悠真先生のことちょっと疑ってたんだ。疑ってごめん!」

第5話で、美羽は悠真と仲良くなるためのグループ旅行を企画し、明日美を誘う。
最初は渋っていた明日美だが、盤台教授の別荘に潜入するという別の目的が浮上。美羽たちの旅行にかこつけて、悠真に別荘の鍵を開けさせようとする。そんな企みを知らない美羽は大喜び。だが、「見てて、この合宿でぜったいオトすから!」とさらなる牽制球をぶっ込むことも忘れない。女子としての戦闘力の高さに感動すら覚える。

美羽は料理もうまいし、それなりに恋愛もしてきたであろう女子力の持ち主。美人だけど、“コミュ障”気味の明日美にオンナとして負けるわけがない、とタカをくくっていたのではないか。憤怒の表情で「見下していたんだ!?」と迫る美羽こそ、明日美を内心、見下していたような気がしてならないのだ。新たなる闘いが幕を開けたドラマ「アリスの棘」。さて、今夜はどうなるか。女たちの殴り合いは始まったばかりだ。
(島影真奈美)

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