幾原邦彦監督作品月曜深夜アニメ「ユリ熊嵐」(TOKYO MXほか)。3話「透明な嵐」が1月19日に放送された(Gyao!やニコニコ動画で追いかけ配信中)。
椿輝紅羽をめぐる愛のお話だ。

2話のラストで明かされた事実。クラスメイトの百合園蜜子も百合川このみもクマだった! 人の姿と化して断絶の壁を越えているのは、百合城銀子と百合ヶ咲るるだけではない。もしかしたら、ほかにもクマは人の姿で潜んでいるのかもしれない……。
「透明な娘は透明な味しかしない」「スキをあきらめない娘の肉だけが、柘榴と花の蜜の味がする」
蜜子は紅羽が「排除」される時を待っている。そうすればいちばんおいしく食べられるから。


紅羽の教室からは、クラスメイトが少しずついなくなっている。誰よりも大事だった泉乃純花のみならず、このみ、そして赤江カチューシャの姿もない。
ちなみに赤江カチューシャは、1話でクマ警報の垂れ幕を下ろしていた赤いカチューシャの女の子。『ユリ熊嵐 公式スターティングガイド』には「ほっぺたもぷっくりして脚もむちむち。おまけに巨乳という体つき。なんだか食欲をそそりそう」という不穏な説明がある。

空席が目立ち、紅羽も銀子もるるもいない教室で、ある「儀式」が行われる。ポニーテールのクラスメイト・鬼山江梨子が、このみの代わりに議長として壇上に立つ。
「私たちは『透明な存在』であらねばなりません。それでは『排除の儀』をはじめましょう」
「『友だち』は何よりも大切ですよね。今、この教室にいる『私たち』、それが『友だち』です」
「『私たち』から浮いてるひとって、だめですよね。『私たち』の色に染まらないひとは迷惑で邪魔ですよね。
そういう、空気を読めないひとは『悪』です」
空気を読めない「悪」を、排除する──。
「レッツ・サーチ・イーヴル!」
クラスメイトがスマートフォンを取り出し、名前を選択する。クラスのみんなの手によって、次に排除されるべき存在が決定された。椿輝紅羽。蜜子はそっと舌なめずりをする……。

抽象度が高い「ユリ熊嵐」だが、「排除の儀」「透明な嵐」についてはかなり具体的になっている。

他の人から浮いていない「透明な存在」になるために、「排除の儀」に参加して「悪」をみんなで決める。「悪」が排除されているあいだは自分は安心……。
これは明らかに「いじめ」だ。
どうやらこの学園には(もしくはクラスには)、「透明な女の子でいればクマには食べられない」というルールがあるらしい。蜜子はそのルールを利用して、安全なポジションで女の子を食べようとしている。
「排除の儀」のシーンに出ているテロップ「透明な嵐」、下には「ハイジョ」の文字。
1話からずっと出ている「透明な嵐」というキーワードは、「『私たち』から浮いているひとを排除しようとする」空気を指しているのかもしれない。

この排除の儀がスマートフォンで行われているのが、ぞっとするほどリアル。高橋暁子の『ソーシャルメディア中毒 つながりに溺れる人たち』では、今の10代のいじめがSNS上で行われるようになっていると指摘している。排除の儀のシーンは、そのままLINEのグループチャットから紅羽をブロックしているシーンにも見える。
〈同調圧力とは、自分だけが違う意見を言っては、自分だけが違う意見を言ってはいけないという雰囲気を感じ、「嫌われるのでは」「仲間外れにされるのでは」と考えて、周囲と違う行動を取れないことを意味する〉
〈「みんながやっているから」「同じにしないと嫌われる(仲間はずれになる)から」こうして、自分の意思とは違っても周囲に合わせて行動してしまう〉
自分の意思を持たない「透明な女の子」。そして自分の意思を持つ(「スキ」を諦めない)からこそ排除される紅羽や純花。

実は「ユリ熊嵐」って、ものすごくシンプルでストレートなお話なんじゃないだろうか?

紹介したあらすじは3話の前半パート。後半はさらに話が動く。いつものユリ裁判バンクも、ちょっとようすが違う。そして蜜子が暴れまわります。クマダーク!
ちなみに、小説版『ユリ熊嵐』上巻も発売中。かなりアニメに忠実で、6話までのノベライズとなっている。
(青柳美帆子)