オーストラリアの旅行業関係者によると、中国旅行の人気が大いに高まっているという。中国メディアの「タイ媒体(「タイ」はかねへんに「太」)」はこのほど、この極端な変化の背後に存在する事情を読み解く記事を発表した。
オーストラリア人のアジアでの旅先といえば、これまでは日本が常にトップであり、中国が上位3位に入ることはなかった。しかし旅行比較サイトのスカイスキャナーでは、オーストラリア人による中国便の検索量は前年比44%増で、増加率で日本を抜いた。アジア旅行を主業務とするウェンディ・ウー・ツアーズでは、2026年の中国向け予約量の前年同期比での伸び率が100%を超えた。オーストラリア統計局も、中国に向かう旅行者が過去1年間に比べて16.5%増と発表した。
興味深いのは、このブームの主力が初めて中国を訪れる人だけではない点だ。多くのリピーターは万里の長城や兵馬俑といった定番の観光地では満足せず、中国人でさえ名を知らないような地方の小都市に足を運んでいる。
その要因としてはまず、中国がビザ免除対象国を50カ国にまで拡大してきたことだ。このことで、世界全体として中国旅行に向かう人が増えた。オーストラリア人は突然中国を「発見」したわけではない。中国の観光地は以前から海外で有名だったが、これまでは「わざわざ行く価値がある」とは思われていなかったのだ。
一方でオーストラリア人にとって日本は旅先として人気があったが、人気観光地は満員電車のように混み合い、一部の施設は子連れに厳しいとされて、体験の質も低下した。このことは、日本旅行を考えるオーストラリア人の一部にためらいを生じさせていると考えられる。
そして中国は24年、オーストラリア人を対象に最長30日間のビザ免除を適用した。ビザのハードルはなくなり、直行便の回復で航空券も値下がりした。食事では2~3米ドル(約330~490円)を使えば満腹でき、日本旅行での宿泊と同じ料金でもっと高級なホテルに泊まれる。高速鉄道は網の目のように走り、モバイル決済も外国人にとって極めてスムーズだ。
過去20年で50回以上も訪中したあるオーストラリア人は、「中国は広大で、未発掘のマイナーな旅行ルートが無数にある」と評価した。日本では、「観光地の過度な整備」と「費用の高騰」がセットで出現したのに対して、中国は「ゼロハードルの入国」「究極のコストパフォーマンス」「インフラの次元を超えた利便性」の組み合わせでオーストラリア人観光客を奪いつつある。
さらに重要な変化は観光客の中国国内での「動線」だ。今年の春節(旧正月、26年は2月17日)時期に、外国人観光客による国内航空路線の予約は107都市に及んだ。武夷山や井崗山、万州、アルタイなど、多くの中国人も行ったことがない場所が国際的な視野に入った。山西省大同の雲岡石窟では春節の外国人客が735%増と全国一の増加率だった。
遊び方も没入型の現地体験へと変化している。雲南省麗江でナシ族の銅器作りを学び、江西省景徳鎮ではろくろを回して青花磁器を焼き、福建省泉州で伝統的な花の髪飾りを体験し、西安で餃子を作りながら唐代のショーを見る。
中国旅遊研究院の戴斌(ダイ・ビン)院長は、「他国とは異なる観光資源だけでなく、中国の素晴らしい生活が海外の観光客の心を打った」と分析した。外国人は何かを「見る」ためだけでなく、中国人の日々を「過ごす」ために訪中するようになった。
しかし、中国のインバウンド旅行の本当の試練はこれからだ。26年第1四半期(1~3月)の外国人入国者の2133万人のうち、77.9%がビザ免除を利用した。オーストラリアなど48カ国へのビザ免除政策は26年12月31日が期限だ。現在のブームを支える最大のエンジンが半年後には停止することになる。
中国旅行のブームについては、政策主導の短期的な現象か、構造的な潮流なのかが問われている。後者であれば、政策が終わっても観光客はやって来る。実際、景徳鎮や泉州へ向かう客は、ビザ免除だから「ついでに」来たのではなく、その地での体験を目当てに来ている。ハイテク分野やインフラ建設での中国の急速発展が引き金になって露出度が向上し、そのことがオーストラリア人の好奇心を刺激したのだ。
ただし、この新たな評価は極めて脆弱(ぜいじゃく)だ。
邁点国際は、今後18カ月が中国インバウンドの重要な窓口期になるとの見方を示した。政策の恩恵で引き寄せた客を、良好な体験によってリピート客に転換できれば、中国旅行の人気は不可逆的になる。体験が伴わなければ、中国旅行は、「体裁は良いが魅力に欠ける」という評価に逆戻りだ。
検索量が44%増加した後の本当の勝負はそこにある。どれだけの人数が来たかではなく、どれだけの人が帰国した後に「もう一度来たい」と思うかどうかに、すべてがかかっている。(翻訳・編集/如月隼人)











