世界のロボット産業は、産業用ロボットの成熟と人工知能(AI)技術の進展を背景に、新たな段階へ移行している。製造業の自動化を支えてきた産業用ロボットは、日本やドイツの長期的な技術蓄積によって高度化し、世界標準が確立した。

一方で、次のフロンティアとして注目されるのが「人型ロボット」だ。人間と同じ2本足で歩行し、物をつかみ、環境に適応するロボットは、物流・介護・災害対応など多様な領域で潜在的な需要がある。しかし、この分野は産業用ロボットとは異なる技術体系を必要とし、世界的にも実用化はまだ遠いという。

人型ロボットを作るには、転ばずに歩く制御、強くて軽い関節(アクチュエータ)、正確な動きを生む減速機、人間環境での安全性、長期間壊れない耐久性、周囲を理解するAIといった複数の難しい技術を同時に成立させることが不可欠だ。この「同時に」という点が、人型ロボット開発を特に難しくしている。

米国ではテスラやFigure AI、ボストン・ダイナミクスが先行し、日本ではトヨタやホンダが産業ロボットの技術蓄積を生かして開発を進めている。しかし、世界的に見ても「歩く・跳ねる」といったデモを超え、現場で長期間使えるロボットはまだ存在しない。人型ロボットは技術的にも経済的にも未成熟であり、実用化には10年ぐらいの時間が必要とされる。

こうした中、中国が「人型ロボット大国」として注目を集めている。AIや電気自動車(EV)で短期間に成果を上げた成功体験が、政府に「人型ロボットも資金投入で追いつける」という期待を抱かせ、メディアも派手なデモ映像を積極的に宣伝し、話題性を高めている。

しかし、中国の人型ロボット企業の多くは新興企業で、補助金依存の構造を持つ。既存の産業ロボット企業は「採算が取れない」「耐久性が低い」「技術難易度が高い」と判断し参入していない。

つまり、中国の人型ロボット産業は技術蓄積のない新興企業が補助金で参入している構造的弱点を抱えている。

この弱点は、ロボット内部の部品構造を見るとより明確になる。人型ロボットの心臓部である精密減速機は、日本企業が世界市場をほぼ独占する。ロボットの「筋肉・心臓・神経・感覚器官」の大半は日本製が世界標準であり、中国製ロボットは内部の基盤となる部品を日本に依存しているのが現実だ。

中国がこれらを自国で作れない理由は構造的だ。第一に、ミクロン精度の加工技術が不足している。減速機やベアリングは数十年の加工ノウハウが必要であり、中国は量産は得意だが精密加工では日本・ドイツに大きく劣る。第二に、基盤技術は日米欧が特許網を構築しており、中国企業は迂回(うかい)設計ができず、模倣しても耐久性で劣る。第三に、ロボットは「壊れないこと」が最重要だが、中国企業は短期開発・短期販売を優先し、長期耐久試験の文化が弱い。第四に、既存の産業ロボット企業が参入しないため、技術蓄積が新興企業に引き継がれない。

今後の人型ロボット開発では、米国がAIと制御技術を武器に物流向けの実用化を先行し、日本は基盤部品の圧倒的優位性を背景に耐久性と安全性で主導する可能性が高いという。中国はデモ中心の話題性は続くものの、課題克服には、資金投入だけでなく、長期の技術蓄積と制度整備が不可欠。

「人型ロボット大国」と喧伝(けんでん)されるが、日本などとの技術格差はむしろ拡大する可能性が高いとみられている。

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