サンフレッチェ広島レジーナのDF左山桃子が昨シーズン開幕直後の大ケガを乗り越え、新シーズンでの公式戦復帰に意欲を燃やしている。

 昨年8月17日、赤井秀一監督が就任して新体制で迎えたWEリーグのホーム開幕戦。
センターバックで先発出場した左山は、試合開始後すぐに負傷交代を余儀なくされた。診断結果は右ひざ前十字じん帯損傷と外側半月板損傷。新たなスタートを切ったばかりの大ケガで長期離脱となった。

 失意の離脱から1年。同じく昨季開幕前後に右ひざの大ケガを負ったDF呉屋絵理子とMF瀧澤千聖の通称“膝組”という心強い仲間とともにリハビリに励み、今年4月には全体練習に合流。この夏のプレシーズンでは実戦経験を積んで、復帰へと歩みを進めてきた。

 新シーズンは再起をかけた勝負の年。チームとしては、ほとんどの選手が残留した一方で新戦力の獲得はなかったため、長期離脱者の復帰が何よりの補強となる。抜群の統率力でチームを支えてきた左山への期待も大きい。

 ただ、1年間もピッチから遠ざかっている間、副キャプテンのDF市瀬千里は昨季の公式戦全試合フル出場でWEリーグのベストイレブンに輝く活躍を見せ、1月に新加入した大卒ルーキーのDF朝倉加奈子は安定したパフォーマンスでスタメンに定着。さらに、ポテンシャルの高い大卒ルーキーのDF寺村穂香も加わって、激しいセンターバックのポジション争いが待っている。

 チーム最年長34歳の左山は、新シーズンも3年連続でキャプテンに就任した。
卓越したリーダーシップを誇る背番号6がピッチに帰ってくれば、チームにとって大きな力となるが、新シーズンのキャプテンは少し意味合いが違う。

 赤井監督体制2年目は、チーム創設以来初めて副キャプテンが置かれず、キャプテン1人の体制となり、ゲームキャプテンも試合ごとに監督が指名する形となった。それは指揮官が「キャプテンについていくのではなく、それぞれがリーダーシップを取れるチームであってほしい」と全選手に「自立」を求めて選んだ体制だ。役職に囚われず、キャプテンすらも横並びで全員がチームを引っ張っていく。

 サンフレッチェ広島レジーナが新シーズンに掲げる目標は「WEリーグ優勝」。悲願の初タイトル獲得に向けた挑戦がいよいよ幕を開ける。再起に燃える新シーズンは「ブレずにやり続ける」と強調する紫のキャプテン。その視線はまっすぐにWEリーグの頂点に向いている。

取材・文=湊昂大

――新シーズン開幕が近づいてきましたが、現在のコンディションはいかがですか?
左山 練習に復帰してから本当にいい形で合流できて、できることもすごく増えてきています。でも、まだまだ上げていきたい部分もあるので、これに満足せずにもっともっとコンディションを上げていきたいです。ひざも100パーセントでやれていますけど、私自身の期待も込めて、もっと調子を上げられると思っているので、そこはやり続けたいです。

――昨季の開幕序盤に負傷をしたときの心境を教えてください。

左山 左足も同じケガをやっていたので、まさか逆足もやるなんてという心境でした。これからチームでリーグ戦優勝やリーグカップ戦3連覇を目指してやっていこうという中で早々にケガをしてしまったので、悔しくないと言ったら嘘になりますし、そこからリハビリに取り組まないといけないと考えたりして、いろんな思いがありました。

――そこから前を向けた理由を教えてください。
左山 ここで泣き続けて立ち止まっていても何も始まらないと思ったので、前に進むために切り替えました。このケガをしたからこそ、もっと自分のことを知れると思いながらトレーニングを始めましたし、本当にたくさんの方々に支えられていることに改めて気づかされました。ファン・サポーターの方々、チームメイト、スタッフ、家族、本当に私の周りの人たちに言葉でも行動でもたくさん支えられたおかげで、今私はこうしてまたピッチに立てていると思っています。

――ケガと向き合った約1年間はどんな日々でしたか?
左山 今思えば、あっという間だったなと感じます。やりたくてもできないメニューがあったり、自分では進めそうと思ってもまだ進められない1歩があったりしましたけど、そこまでネガティブにならずにやれたと思います。“膝組”のチセ(瀧澤)やごっちゃん(呉屋)の2人が近くにいたからこそ下を向かずにやり続けられた部分もありましたし、1人では絶対できなかったので、いろんな方の支えがあったからこそだと思います。ケガをして順調に行く選手もいれば、色々悩みを抱える選手もいる中で、こうやって自分はまたサッカーができているのは本当に幸せなんだなと改めて感じています。

――離脱中はチームを外からどう見ていましたか?
左山 最初は誰がピッチで先頭に立ってやるんだろうとか、みんなが周りの様子をうかがいながらやっているなとか、心配しながら見ていた部分はありました。でも、それぞれが自分自身のできることをやろうと覚悟を決めてやり続けてきたからこそ、皇后杯優勝という結果が出たと思うので、1人ひとりがすごくチームのために考えて行動できたシーズンだと思います。


――チームのサッカー面での成長や変化はどこで感じますか?
左山 やっぱりコミュニケーションの部分で、ボールの奪いどころとかをそれぞれが喋れるようになったのが良かったと思います。特に柳瀬や市瀬がしっかり声をかけて、『ここで奪い切りたい』と伝え続けられたのがすごく大きかったと感じています。

――この夏は新戦力の補強がなく、長期離脱者の復帰に期待がかかっています。個人的に今のチームに何をもたらせると思いますか?
左山 コミュニケーションの部分は、みんなもピッチ外のところでやれていると思いますが、やっぱり試合のプレー中に細かく話すところはまだまだ乏しい部分があると思っています。ピッチでやっている選手たちがどうやってボールを取りたいか、どうやって攻めたいかをより細かく話せるようにならないといけないので、そこは私もみんなとコミュニケーションを取りながらやっている最中です。

――離脱中により激しくなったセンターバックの競争をどう捉えていますか?
左山 私自身がチームに求めていることを、まず自分自身がしっかりやり続けることが大事だと思っています。今年1年間は覚悟を決めて、ブレずに自分のプレーを練習からやり続けるつもりです。それをしっかり見てもらって、監督が求めているものを出せていけたらいいと思います。

――練習場ではよく赤井監督とランニングしながら喋っている姿があります。どんなコミュニケーションを取っていますか?
左山 守備の局面のところをすり合わせている会話が多いです。シュウさんは思っていることをすごくはっきり丁寧に教えてくれますし、それをまた私も練習の中でみんなに伝えながらやっていこうと思っているので、すごくありがたいなと思いながらコミュニケーションを取らせてもらっています。

――赤井監督のもとで個人的に成長した部分や自分の中での発見はありますか?
左山 シュウさんになってよりアグレッシブに前からボールを取りに行くサッカーになって、攻撃ではしっかり時間を使うサッカーを表現していますし、守備ではマンツーマンが多い中で90分間ハードワークを続けています。
トレーニングマッチで実際にやらせてもらっていますが、守備でも休む時間がなく、みんながすごくアグレッシブにプレーしていて、私自身、そういうサッカーは今までそこまで経験したことないので、みんなで声をかけ合いながら連動してやらないといけないサッカーだと感じています。

――新シーズンはキャプテンという役職に関わらず、全選手にリーダーシップが求められる体制になりましたが、どう受け止めていますか?
左山 今シーズンはリーグ戦もリーグカップ戦も皇后杯も優勝に向けてやり続ける。その「続けること」がすごく大事になってくると思っています。特にリーグ戦は1人でも気持ちがブレたら戦えなくなると私は思っているので、みんながチームのためにどうしたらいいかを常に考えながら行動し続けないといけない。「チームのために」って考えたら、じゃあ声を出すこととか、みんなのために何かをするという考えになると思うんですけど、でも私の中では「チームのために何ができるか」イコール「自分のために何ができるか」だと思っていて、「チームのために何かする」という考えだけじゃなくて、「自分がどう成長したいか」、「自分がチームのためにどうありたいか」という考えを持つことが大事だと思います。みんながブレずに「優勝するために自分はどうありたいか」を考えながらやり続けることで、この1年が決まってくると思います。私としては、自分に矢印が抜けづらくなったような選手がもしいたら、声をかけるのもそうですけど、プレーでしっかり見せ続けたいです。

――「ブレずにやり続けること」は簡単ではないと思いますが、左山選手自身はこれまでどう向き合ってきましたか?
左山 やっぱりシーズンが始まると試合に出る出ないがあって、試合に絡めなかったらメンタル的にもすごく落ち込んでしまうし、他に矢印が向いてしまうことはみんなが経験していると思います。私自身はアルビレックス新潟レディース時代にブレずにやり続ける姿を見せてくれた先輩方を見ながら、チームのために何ができるかを考えてやった経験が大きいです。

――試合ごとにゲームキャプテンを変える取り組みをどう感じていますか?
左山 もう誰がゲームキャプテンでも、それぞれがチームのためにどうしたらいいかを考えないといけないですし、試合の中でより責任を持ってやる自覚をそれぞれが持たないといけないチームだと思っています。今はゲームキャプテンに指名された選手が試合前の円陣で喋るんですけど、それぞれの思いはなかなか聞けないことですし、「意外にこういうことを考えているんだ」と知れる瞬間でもあるので、個人的にはいい機会だと思っています。いつもと違う一面が見られるかもしれないですし、ゲームキャプテンを任されることで戦う姿勢が変わっていくのはいいことだと思います。


――新シーズンに向けてチームとしてさらに磨きをかけたい部分を教えてください。
左山 攻守においてアグレッシブなところは変えずに、それぞれがより質を求めて取り組んできました。パスの強度もそうですし、ワンタッチなのかツータッチなのかで局面も変わってくるので、そこの質をより求めてやっていければ、また違う形のサッカーにもなると思っています。

――新シーズンの目標に掲げている「WEリーグ優勝」に向けて何が必要だと思いますか?
左山 やっぱり、1人ひとりがブレずにやり続けること。優勝するためにはみんなが同じ方向を向いてやり続けることが大事ですし、それを1年間通してやるのは簡単なことじゃないと思っているので、そこはみんなに伝え続けたいと思っています。

――カップ戦とリーグ戦の違いをどう捉えていますか?
左山 リーグ戦では引き分けでもいい試合が出てくるとは思いますけど、じゃあそれをより勝ち試合にするためにはどうしたらいいのかとか、1点取られている中でどういう戦いをすれば2-1に持っていけるのかとか、細かいところがすごく大きくなってくると思います。そこも含めて、よりみんなが考えてコミュニケーションを取ってやらないと優勝は簡単じゃないので、そこを突き詰めてやっていきたいです。

――アジア競技大会やFIFA U-20女子ワールドカップでレジーナから計7選手が代表チームに招集されました。主力を欠いてリーグカップ戦を戦う時期がありますが、どう受け止めていますか?
左山 だからこそ、いろんな選手がメラメラしているんじゃないかなと私は思っていますし、(代表組が)帰ってきたらポジションがないよっていうぐらいチーム全員で士気を上げてやっていきたいです。参加するメンバーには、国を背負って戦えるチャンスはなかなかないと思うので、ケガなく頑張ってきてほしいです。

――ホーム開幕戦は8月29日のRB大宮アルディージャWOMEN戦です。意気込みを教えてください。

左山 ホーム開幕戦はたくさんの方々が来てくださると思うので、そこでみなさんに勝利の試合を見ていただけるように、チーム一丸となって戦いたいです。

――ホーム開幕戦では“自由すぎる開幕祭”が開催され、レジーナ初の試みであるフォトブックが先着1万人にプレゼントされます。
左山 私は愛犬のモカと一緒に撮影させていただいて、私服でああいう場所(スタジアム横の広場)で撮影をしていただける機会があまりないので、すごく楽しく撮影させていただきました。選手のいつも見ないような一面がすごく詰まっているフォトブックになっているので、よりたくさんの方々に手に取ってもらって、また違うレジーナを知っていただきたいです。

――サンフレッチェ広島レジーナは創設6年目です。チームが広島に浸透してきた実感はありますか?
左山 練習には暑い中でも、ファンサービスの対応がない中でも、たくさんの方が見に来てくださっていて、レジーナのことを本当に気にかけてくださっているんだなと、すごく温かさを感じています。私自身は地元なので、地元の子たちから「市内の広告に出ていたね」と言ってもらえますし、いろいろな方から声をかけていただくことも増えました。新聞に大きく顔写真が出ていたときは、母からも「すごい、出とるよ」と連絡が来ました。そうやって1つひとつ声をかけていただいたり、気にかけてもらえていることがすごくうれしいですし、「もっと頑張らないとな」と思える瞬間にもなっています。

――新シーズンはどんなシーズンにしたいですか?
左山 個人的にはケガなく1年間やり続けたいですし、チームのために自分自身のプレーをやり続けたいです。長いシーズンではいろんなことにネガティブになったりポジティブになったりすると思いますけど、私自身は一喜一憂しないようにブレずにやっていきたいです。どんな試合があっても、それが「次のため」と思えるように、よりポジティブにいろんなことを考えられるようなシーズンにしたいですし、試合でもそういう姿をたくさんの方々に見ていただけるように頑張りたいです。

――どんな試合でも一喜一憂しない秘訣を教えてください。
左山 やっぱり、ネガティブに持っていくのは簡単だと思います。失敗してしまったらネガティブになりがちですけど、失敗しても「次どうしたらいいかを考えられる」と切り替えることが大事だと思います。失敗を失敗で終わらせないためには、周りの人たちがどうするかも大事で、1人の選手が失敗したら周りが助けてあげればいい。そうやっていろんなことをポジティブに考えられたら、景色が違ってくると思います。

――そうしたマインドはどう身についたものですか?
左山 勝負がかかっているので、どうしても気持ちが落ちてしまうときもあるかもしれないですけど、でもやっぱりサッカーをするからには楽しみたいですし、だったらポジティブに考えた方が楽しめると思いながらやっています。それは試合を重ねるうちにいつの間にか身につきました。

――新シーズン開幕戦への出場に向けて意気込みを教えてください。
左山 開幕戦に出たい気持ちはありますし、目指しているところですが、私自身はチームがリーグ優勝をするためにどんなことでもやり続ける覚悟で今年1年戦うつもりです。どれだけチーム全員が一緒の矢印を向けて戦えるかが鍵になってくると思うので、開幕に向けてチーム全員でしっかり気持ちを持っていけるように私自身もやり続けたいです。

――大ケガを乗り越えてまたピッチに立つとき、ファン・サポーターにはどんな姿を見せたいですか?
左山 やっぱり、たくましくなった姿を見ていただきたいです。ピッチ上で誰よりもチームのために戦う姿勢をたくさんの方々に見せられるように、もっともっと強くなりたいです。
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