地方大会で見つけた「来年の主役候補」逸材探索の旅(後編)
今年の高校野球地方大会も、思えば2年生ばかり見ていた。お目当ての2年生もいたし、3年生を見に行った試合で、「オッ」と胸ときめくような2年生に遭遇することもある。
ただ、体はひとつしかないし、予算も限られている。もちろん全国を巡れるわけではない。ほかの地区にも惹かれる2年生はたくさんいるが、春からの動きを研究すると、今年はどうやら長野と静岡に2年生の逸材候補が多いのではないか──。そう判断し、今回は長野、静岡に埼玉、群馬を加えた4県に絞ってみた。
【ロマン溢れる大型サウスポー】
まず埼玉にはロマンを感じさせる大型サウスポーと、左右の好打者がいる。
深見陵太(西武台/投手/190センチ・78キロ/左投左打)
おそらくこの秋以降、花咲徳栄、浦和学院の「2強」にとって、最も脅威になる存在ではないか。190センチの長身サウスポーで、これだけクセのないフォームから気持ちよさそうに腕を振り下ろす2年生投手をほかに知らない。スライダーの変化点は打者に近く、両サイドへ放射状の球道をきちんと作れる。クイックも悪くないし、バックのミスや失策にもまったく動じない。今夏の投げっぷりからは、褒め言葉しか出てこない。現状135キロ前後の球速帯も、このまま練習を重ねていけば、自然と上がってくるはずだ。
松本智司(山村学園/外野手/190センチ・95キロ/左投左打)
長身、長いリーチ、スマートなユニフォーム姿。
本柳湊翔(春日部共栄/外野手/179センチ・80キロ/右投右打)
強靱な全身のバネを感じさせる、インパクトの瞬発力がすごい。もう少しアッパー気味のスイング軌道に合ったボールを選んで打てれば......。もったいないなと思う場面が何度かあった。父は元オリックス投手の本柳和也さん。日本通運時代、都市対抗で見せた勇姿が印象深い。中堅守備では、三塁、本塁への返球で父譲りの強肩を発揮する。ライナー性の打球に食い込まれながら捕球しても、ノーステップでカットへ強烈な返球を決め、走者の進塁を阻止する。
【只者ではない野球センス】
群馬には、上級生顔負けの野球センスを持った内野手がいた。
新井悠河(前橋育英/内野手/172センチ・80キロ/右投左打)
私は昨夏の群馬大会でその快打連発を見て、プレーぶりからすっかり3年生だと思い込んでしまった。試合後、荒井直樹監督は「あいつを野球だけ見て1年生だと思う人は、ひとりもいないでしょうね」と真顔で言っていた。警戒されながらも、難しいコースを広角へ痛烈に弾き返し、失投は右翼中段へ叩き込む。守備では、自分の守備範囲を堅実に守るフィールディングも光る。これまで以上に厳重な警戒を受けた今夏も、誘い球には目もくれず四球を選びながら、数少ない失投を長打やタイムリーにしてきた。準決勝で健大高崎の前に惜しくも力尽きたが、その野球センスはやはり只者ではない。
【将来性豊かなふたりのサウスポー】
長野でまず紹介したいのは、将来性あふれる大型サウスポーだ。
林誠也(小諸義塾/投手/180センチ・76キロ/左投左打)
今夏、チェックするのを楽しみにしていた左腕のひとりだったが、まさかの初戦敗退。これだから、「夏」は怖い。春の大会では、その存在を知らなかった。ほかにお目当ての3年生がいたからだ。ただ、その投球を見て驚いた。
向山康介(上田西/投手/192センチ・80キロ/左投左打)
192センチの大型左腕でありながら、全力で投げても頭が振れず、絶妙なボディバランスで腕を振り下ろせる。そんなメカニズムを、2年夏の時点ですでに身につけているところに、豊かな将来性を感じる。まだ体は細く見えるが、先発した初回から140キロ前半をマーク。チェンジアップでもカウントを作り、数はまだ少ないものの、右打者が思わずのけぞるようなクロスファイアで三振を奪うなど、非凡さの片鱗を見せてくれた。投げ終わりに体勢がばらけたり、ピッチャー返しの打球に無防備だったり、まだまだ学ぶべきところはたくさんある。だが、今足りない部分は、すべて「伸びしろ」と考えていい。
池上夢二(長野日大/内野手/176センチ・74キロ/右投右打)
春の大会で「これは!」と思った遊撃手は、この夏、さらにレベルアップしていた。走攻守、とにかく野球が抜群にうまい。
小池壮主(松本国際/内野手/181センチ・76キロ/右投右打)
フィールディングに魅力を感じる大型遊撃手だ。正面への強いゴロに対して、的確にスタートを切れる。横の打球に強い選手は結構いるが、正面の打球に対して正確にバウンドを合わせられる高校生遊撃手は、なかなかいない。もちろん、左右への守備範囲も広い。さらに目を引くのが、併殺プレーでの身のこなしと球出しのタイミングだ。
【静岡の野球通が早くから注目する大型左腕】
そして最後に、静岡の大器サウスポーと大型捕手2人を紹介して終わりにしたい。
疋田大築(湖西/投手/192センチ・77キロ/左投左打)
その潜在能力の高さは、以前から静岡の高校野球通から聞いていた。長身サウスポーとしての長所は、前出の上田西・向山と驚くほど重なる。右膝がスッと胸の高さまで上がっても体勢にまったくブレがない。そこから無理のないテークバック、高いトップ、きれいな縦軌道の腕振りへと、よどみなく連動していく。右投げと左投げの違いはあるが、そのフォームには、大船渡(岩手)時代の佐々木朗希(ドジャース)を彷彿とさせる部分もある。フォームがいいだけに、今夏135キロ前後の球速帯も、近いうちに140キロへ届くだろう。そして、縦に割れて大きく落ちるカーブは、彼の「代名詞」になり得る持ち球だ。
平野光星(静岡/捕手/183センチ・90キロ/右投右打)
今夏は、名実ともにチームの大黒柱として、ものすごく頑張っていた。ただ、頑張りすぎて空回りしているように見える場面もあり、そこは惜しかった。大会前から「大器」「逸材」と報じられてきた。だからこそ、4番としてそれらしい強打、長打を見せなければ──。そんな気持ちが先走ったのか、体が突っ込み、インパクトでボールとの距離を取れずに打球が飛ばない場面もあった。守っても、走られる場面が目立った。ただ、彼のポテンシャルはこんなものではない。今夏は、貴重な勉強の時間だったはずだ。秋以降の飛躍に期待したい。
濱惺也(浜松開誠館/捕手/185センチ・78キロ/右投右打)
「打」と「守」の落差が興味深い捕手だ。スピードのない投手を相手に、しっかり我慢して呼び込み、姿勢を崩さず広角へ「ヒットになるような打ち方」を実践する。決して力任せにはならない。それでも、ゴロ打球の勢いだけで相手内野手を圧倒できる。縦の変化球をコンパクトに振り抜き、左翼100メートルのフェンスを軽々と越える一発を放ちながら、ガッツポーズなどせず、平然とダイヤモンドを一周してきた姿もすがすがしかった。一方、捕手としてのキャリアがまだ浅いのか、スローイングにはぎこちなさを感じる。ただ、このあたりは経験を積むほどこなれてくる部分だろう。ひと冬を越したあたりで、グッと「捕手らしく」なってくることを楽しみにしたい。
今夏、足を運んだほかの地域にも、ここに挙げたかった2年生は数多く点在している。この先どこかで、彼らについても触れられる機会を楽しみにしたい。
安倍昌彦●文 text by Masahiko Abe










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