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13人に1人がレイプ被害に遭う性暴力大国「日本」は政府の啓発もお粗末

2018年3月29日 17時00分

ライター情報:勝部元気


内閣府がAV出演強要問題、JKビジネス問題、デートレイプドラッグ、デートDV等の「若年層を対象とした性的な暴力の啓発」を始めたのですが、これが大きな波紋を広げています。これらの問題に対して予算を配分したこと自体は重要な一歩ではあると思うのですが、その中身が酷く、インターネット上で大きな批判を呼んでいるのです。

性暴力を矮小化するような内閣府の表現


まず、デートレイプドラッグに関するキャンペーンでは、「飲み物を飲んだら、急に眠くなって気を失った。気が付いたらセックスの最中だった」という事例が紹介されているのですが、これらの行為が「強姦」「レイプ」「強制性交」に該当するという記述がありません。それゆえ、「それはセックスではなくレイプだろう」「性暴力を矮小化するな」という批判が殺到しました。

確かに被害者にとっては「強姦」や「レイプ」等の言葉を聞きたくない人もおり、そのような人々に配慮した可能性もありますが、それ以前に自分の受けたことは性被害だと認識できていない被害者も多々いるのですから、しっかりと記載をするほうが良いと私も思います。

また、デートレイプドラッグの被害事例をいくつか列挙したあとで、「それって犯罪かも!」と記載しているのですが、この「推測の言い回し」が猛烈な批判を受けました。これが仮に窃盗や特殊詐欺であれば、「それって犯罪かも!」のように推測の言い回しをするでしょうか? おそらく「それって犯罪です!」のように、断定の言い回しをすることでしょう。

安倍首相と仲が良かったとされるジャーナリストの山口敬之氏が、デートレイプドラッグを用いてレイプを行ったと訴えられた際、証拠が揃っているのに不起訴になったことが海外のメディアでも注目を集めるほど大きな問題になっていますが、この事件に関連付けて、「断定の言い回しを避けることで山口氏が犯罪にならない余地を残したのではないか?」「首相に忖度したのではないか?」という憶測すら招いています。

性暴力は「女性の問題」ではなく「男性の問題」


次に、4つの問題全てに言えることですが、どれも被害者女性に対する自衛や電話相談の啓発ばかりで、加害者対策ではない点も批判に上がっていました。

女子体操選手に対して性的虐待を行ったアメリカのチームドクターが、175年の禁錮刑を言い渡されましたが、日本の政策メニューからはこのような「社会による加害者に対する毅然とした態度」が全然見えてこないのです。加害行為という諸悪の根源を根絶させなければ問題は解決することはできないはずなのに、対症療法ばかりに重点的に行っても効果が薄いとしか言えません。

日本の行政はいい加減、これらの女性に対する暴力の問題は「女性の問題」ではなく「男性の問題」であるという発想の転換を行うべきでしょう。啓発や教育すべきは男性側であり、必要なのは男性の加害防止教育です。法務省と連携してさらなる厳罰化を目指すこと(デートレイプドラッグの単純所持罪等)や、レイプ表現に対する暴力表現表示義務の実施、文部科学省と連携して男子の加害防止教育の徹底等を行う必要があると思います。

信用されていない国や社会が相談なんてされるわけない


もちろん、相談窓口を設けること自体は悪いことではありません。確かに必要なインフラです。ですが、現時点で十分に利用されるか、大いに疑問を感じます。

まずは加害者対策を徹底的にやった上で、「私たち国や社会はこれだけ加害者と戦っている。私たちはあなたの味方です。だから安心して相談してほしい」のようなメッセージを被害者にも発するなら分かります。ですが、ほとんど加害者対策を打っていない国や社会に、心に傷を負って、人間不信になっているかもしれない被害者が、安心して助けを求められるでしょうか?

被害者が「相談してみよう」と思えるのは、国や社会やその組織が「自分の味方になってくれる人たちがいる」という実感ができた時です。そういうことを十分にしていないのに、「相談して!」と言っても、おそらく利用する人は限定的でしょう。被害者相談をやるのにも、必ず加害者対策がセットでなければならないのです。

ライター情報: 勝部元気

株式会社リプロエージェント代表取締役社長。社会派コラムニスト。1983年東京都生まれ。早稲田大学社会科学部卒。専門はジェンダー論や現代社会論等。民間企業の経営企画部門や経理財務部門等で部門トップを歴任した後に現職。著書『恋愛氷河期』(扶桑社)。所有する資格数は66個。