そんな彼女たちのルーツを辿ってみて、なるほど、と思う。1893年に世界で最初に「婦人参政権」を獲得したのは、意外にも、ニュージーランドの女性たちなのだ。アメリカが1920年、イギリスが1928年、日本にいたっては1945年と、ニュージーランドに遅れること半世紀以上も後の話だから、彼女たちは世界史的に見ても、大変な快挙を成し遂げたわけである。現在の10ドル紙幣には婦人参政権運動のリーダーを務めたケイト・シェパードの肖像画が印刷され、スーパーヒロインとして女性たちに敬愛されている。小学校の教科書にも登場する彼女の「フロンティア・スピリット」こそ、現代女性のベースになっているのかもしれない。
さて、そんな女性たちをサポートする男性の存在も忘れてはならない。ニュージーランド人の男性たちは「キウイ・ハズバンド」と呼ばれている。「キウイ」とはフルーツのキウイではなく、ニュージーランドの国鳥でもある飛べない鳥のこと。
地元新聞にある男性からの投稿が掲載された。「男は出しゃばらなくてよし。この国の舵取りは、女性たちに任せていればそれでよし」。ちょっぴり自虐的だが、男性たちの本音なのかも。そして、それを知ってか知らずか、女性たちにも「男に負けたくない」といった必死さはあまり見られない。女性が男性をうまく手のひらで転がし、しなやかに、たくましく生きる。フェミニズムや男女平等といったご大層な話ではない。彼女たちが尊重しているのは、一度きりの自分の人生を悔いなく生きること。ただそれだけなのかもしれない。
(畑中美紀)