三月四日、東京高裁から解散命令を受け、法人格を失い、施設を使うことも集会を開くこともできない状態にある統一教会は最後の望みをかけて、最高裁に特別抗告している。



 最高裁は日本の司法の権威を象徴する以上、宗教法人の憲法上の位置付けをめぐるこの重大な裁判では、少なくとも形のうえでは公平な手順で審理を進めるだろう、と普通の人ななら考える。



 しかし、特別抗告を担当する第三小法廷の判事の一人が、ごく最近反統一教会のセミナーの講師を務め、統一教会を敵視する弁護士グループ全国弁連の弁護士に同調して、教義を広めること自体が違法だと主張していた、というとんでもない事実が発覚した。



 教団側は当然、裁判官の忌避を申し立てている。福本修也弁護士の事務所のHPに「裁判官忌避申立書」が掲載されているので、詳しくはそれを見てほしい。



 問題の裁判官は、昨年七月に就任した沖野眞已判事だ。東大法学部の民法担当教授で、東大初の女性法学部長になった、女性法学者のフロントランナーとも言うべき存在である。



 申立書によると、同氏は、2025年7月に開催された「第34回日弁連夏期消費者セミナー『霊感商法等の実態を知り、救済と予防を考える』」と題するセミナーに基調講演者の一人として出席し、統一教会を全否定する発言をしている。



 同セミナーの基調講演者は沖野氏を含めて三人で、その内の一人が、全国弁連に所属する弁護士で、「統一教会の信仰を持つこと自体が信教の自由の侵害になる」という“理論”を掲げ、脱会させるための拉致監禁を違法ではないと主張する郷路征記氏。コーディネーターも、全国弁連の中核メンバーである勝俣彰仁弁護士だ。実質的に全国弁連主催の反統一セミナーだ。



 講演で沖野氏は、「今回の問題として特徴的なものですが、特に伝道や教化として言われるその行為そのものが基本的に問題のある行為だということです。それは、契約の勧誘行為としての側面だけではなく、むしろそれをより超えて信教の自由の侵害や、あるいは全人格的な侵害へとつながっている、そのような行為だと捉えられます」と述べている。



 要するに、統一教会の教義を伝えると、その人が自分の意志で信仰を選ぶ能力を奪うことになるので、布教行為自体が違法だということだ。

郷路弁護士と全く同じ認識だ。



  



 沖野氏は更に、統一教会の伝道の被害を受けた人は、「被害者から加害者へ転じるという点も特徴的です。この点はマルチ商法との類似性があるわけです」と、全国弁連の弁護士でさえ言わないようなことを言っている。



  前回BEST T!MESに投稿した「統一教会に解散を命じた東京高裁はまさに〝異端審問〟だった」で、東京高裁の三木素子判事が、統一教会の教義を勝手に解釈し、その“教義”を信じ続ける限り、高額献金被害はなくならないと決め付けたことが、信教の自由の観点からいかに深刻な問題か論じたが、教義を伝えるだけでMC(マインド・コントロール)効果があり、新たな被害者を生み出すことになるので布教自体違法と断ずる、沖野氏の認識はそれより遥かに危険だ。布教自体が違法というのは、一体どこの国のいつの時代の話だ。



 東大の法学部長を務めた法学者が、二年前に反統一の会合で、一貫して反統一な態度を取り続けた自分が特別抗告の審理に当たるのは公平性に欠けると思わなかったのか? 自分から申し出て辞退する気にならなかったのか? 最高裁の事務局がこのことを知らなかったとは思えない。わざと、判事の中で一番反統一な沖野氏が所属する小法廷に担当させたとしか思えない。



 彼らは、「統一教会側は弁護士も含めて間抜けだからどうせ気付かない。マスコミは反統一なので、どんな手段であれ、統一潰しに文句を言わない。国民は何も考えていないから、自分たちがこれで問題ない、と言ったら、簡単に信じる」、くらいに思ったのだろうか?



 抗告人に敵対する勢力に属する判事に、こんな重大な事案の審理を任せるのがまともな法治国家のすることか? 最高裁は自分たちのやっていることが恥ずかしくないのか? 裁判をただのパワーゲームではなく、公平さを追求する場である法律家、法学者はこの事態に怒るべきだ。



 



文:仲正昌樹 

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