■BEVが一部の都会の人の乗り物から一軒家に住む人のセカンドカーに拡大

2022年も約150台のクルマに試乗することができました。登場したばかりのニューモデルはもちろん、一部改良やマイナーチェンジで進化・熟成の進んだモデルもあります。

日産サクラの走行シーン

今回は、2022年約150台試乗したクルマの中から、印象に残った10台を紹介したいと思います。印象に残った10台を紹介する前に、2022年がどのような年だったのかを振り返りたいと思います。ズバリ「BEV普及元年」です。

これまでBEVというと車両本体価格が高いというのが一般的でした。2022年でもガソリン車と比べると高価であることは変わっていません。

しかし日本カー・オブ・ザ・イヤーのイヤーカーに輝いた日産サクラと三菱eKクロスEVの登場によって、各種補助金を利用して自宅が一軒屋で充電設備を設置できるという条件付きではあるものの、BEVが身近になり普及し始めました。

その一方で、BEVでロングドライブを行うと急速充電器などインフラの脆弱性を感じることもありました。今後、この充電ネットワークの充実がさらなるBEVの普及のキーポイントと言えるでしょう。

●BEVで印象に残るトップ5

それでは、2022年印象に残った10台のうち、5台を一気に紹介します。まずは日産サクラ/三菱eKクロスEVです。そしてヒョンデアイオニック5、テスラモデルY。そしてBYD ATTO 3、メルセデス・ベンツEQSです。

2022年試乗したクルマのうち印象に残った5台はBEVです。先ほども書いたとおり自分にとって「BEV普及元年」でしたが、2022年になってBEVに乗る機会が飛躍的に増えました。

ヒョンデアイオニック5の走行シーン

最初に試乗したのはヒョンデアイオニック5ですが、インポート・カー・オブ・ザ・イヤーを獲得している実力車です。

個性的なデザインとクリーンな印象のインテリア。そして抜群の乗り心地の良さはただ驚くばかりでした。

三菱eKクロスEVの走行シーン

そして、日産サクラ/三菱eKクロスEV。

大きさと最高出力が軽自動車規格というだけで、走りの質感の高さや静粛性は規格外。

エンジン車の軽自動車とはまったくレベルの違う実力をもっています。自宅に充電設備が設置できるのであれば、欲しい1台です。

テスラモデルYの走行シーン

続いて試乗したのはテスラモデルY。これまで乗ったテスラは正直粗さが目立つ部分がありましたが、モデルYはその粗さがなくなり、乗り心地などがかなり洗練されていました。センターディズプレイのみのインテリアには馴れない部分もあります。

しかしスーパーチャージャーという専用の急速充電器が普及し、待たずに充電できるというメリットはテスラオーナーしか味わえない快感です。

BYD ATTO 3の走行シーン

2023年にいよいよ日本市場に導入されるBYD ATTO 3。すでに車両本体価格は440万円と発表されています。試乗したのは、豪州仕様のためADASや充電はテストできませんでしたが、走行性能などは想像以上の出来映え。内外装のデザインも目になじむ仕立てとなっています。

そのうえディーラーネットワークの構築やリセール価格を気にせず購入できるプランを発表するなど、かなり戦略が練られていると思いました。

2023年台の目になるかどうか注目しています。

メルセデス・ベンツEQSの走行シーン

そして2022年最後に試乗したBEVがメルセデス・ベンツEQSです。メルセデス・ベンツやBMWはBEVの幅広さを理解していて、メルセデス・ベンツは、ガソリン車から乗り換えても違和感なくドライバーが操作できるように仕立てられているのが特徴です。

ガソリン車のように搭載するエンジンによって走りの差別化をしにくいBEVですが、さすがメルセデス・ベンツです。EQSは大排気量のエンジンを搭載したSクラスのような加速フィーリングと乗り心地を実現していました。

欧州のプレミアムブランドはガソリン車、BEV問わず、まずはブランドらしさを前面に出ているのが特徴です。


●BEV以外の好印象ベスト5:第2世代e-POWER+e-4ORCEの生み出す走りは圧巻!

それでは2022年印象に残ったBEV以外の5台を紹介します。

スズキアルトの走行シーン

まずはスズキアルト。車両本体価格100万円以下のグレードを設定している軽自動車のベーシックモデルながら、高いボディ剛性による安定感抜群の走行性能に加えて、充実した運転支援システムによって国産車が底上げされたように感じました。

ベーシックモデルでも運転支援機能が充実したアルトの存在は、公共交通機関が脆弱な地域の人にとっての大切な交通手段となるだけでなく、免許返納を少しでも延ばせる救世主と言えるでしょう。

トヨタシエンタの走行シーン

続いてはトヨタシエンタです。

先代モデルは運転支援機能面でライバル車のホンダフリードに大きく水を開けられていました。しかし2022年に登場した現行モデルは安全性能だけでなく、TNGAプラットフォームを採用し、走行性能も向上。安定感の高い走りはリアシートに乗るお子さんも安心できることでしょう。

新車の納期が長期化していますが、待ってでも乗りたいモデルだと言えます。

ケータハム160Sの走行シーン

ある意味2022年に乗ったクルマの中でインパクトが強かったのが、ケータハム170Sです。スズキ製の660ccターボエンジンを搭載したスポーツカーで、運転するドライバーにもスポーツを求めるクルマです。

都内を走るとなかなかハードなクルマでしたが、電子デバイス満載の時代に素のクルマの動きを味わえるクルマという貴重な存在と言えるのではないでしょうか。

VWゴルフRの走行シーン

そしてフォルクスワーゲンゴルフR。ゴルフRは12月に乗ったばかりということもありますが、とにかくRパフォーマンストルクベクタリングが衝撃的。簡単に言うと、後輪の左右のトルク配分を最適化するシステムで、箱根のタイトなコーナーを走ると異次元の旋回性能を発揮してくれました。

今回試乗時間が短かったので、今度はロングドライブしたいと思わせるクルマでした。

日産エクストレイルの走行シーン

最後に2022年最も印象に残ったクルマが日産エクストレイルです。抜群の静粛&加速性能を発揮する1.5VCターボを採用した第2世代のe-POWERユニット。そして安定感の高い走りを提供する4輪駆動システムのe-4ORCEの組み合わせは国産ミドルクラスSUVではベストバイと思っています。

19インチと20インチ装着車どちらも試乗しましたが、個人的な好みは20インチタイヤを装着したオーテックです。制御が進化したプロパイロットを使用すれば、大阪までドライブしても疲れ知らずの、“ブラボー!!!”なクルマです。車庫に入れば、真剣に買い替えたい!と思いました

2023年も新型トヨタプリウスが登場する予定ですし、BYDはATTO 3をはじめ3モデル導入予定です。100年に一度の変革期を迎えている自動車業界。来年もペースを落とさず様々なクルマに触れて、情報を発信してきたいと思っております。

(文、写真:萩原文博)