ドラマ『相棒 season21』(テレビ朝日系/毎週水曜21時)が12日より放送開始となった。14年ぶりに杉下右京(水谷豊)と亀山薫(寺脇康文)のコンビが復活するということで、放送前から大変注目されていたが、再会してすぐに“相棒”らしい阿吽(あうん)の呼吸で捜査に動き出す2人の姿に懐かしさで心が震えた視聴者は少なくないだろう。

薫が特命係として活躍していた2000年から2008年までの間には、今なお“傑作”と評価されるエピソードが多数存在する。今、改めて薫時代の名作を振り返ってみたい。

【写真】亀山薫時代の名作、今改めて見直したいエピソード5選

■「目撃者」(Season1 第5話)

 小学校教師がボウガンで何者かに殺害された事件が発生し、右京と薫は「事件を目撃した」という少年の話を聞くことに。少年の証言により犯人らしき人物が見つかるものの、事件は意外な方向へと進んでいく。

 第1発見者はたまたま孫と一緒に現場を通りかかった小野田官房長(岸部一徳)。小野田が右京へこっそり通報したことで、事件が動き始める。
また、pre season第2話で登場したシリアルキラー・浅倉禄郎(生瀬勝久)がゾッとするような再登場を果たすのも見どころだ。

 この回のキーマンとなる10歳の少年、手塚守を演じたのは、まだ幼い染谷将太。教師に「頭が良い。良過ぎるくらい」「かわいげのない子」と言われるような癖のある少年だが、最後には子どもらしく涙を流すシーンも。この頃から“名俳優”だった染谷にも注目してほしい。

■「殺しのカクテル」(season1 第7話)

 バーテンダーの三好倫太郎(蟹江敬三)が店のオーナーを殺害するシーンで始まる、いわゆる「倒叙ミステリー」と呼ばれる手法がとられている本作。
店の経営がうまくいっていたため、捜査一課では真っ先に容疑者から外された三好だが、何か気になった右京は1人探っていく。

 一方、薫は恋人・美和子(鈴木砂羽)の叔母、アキコ・マンセル(草村礼子)の思い出の店を探すことに。殺人事件とアキコの店探しが徐々に絡み合い、ラストシーンの心温まるエピソードには涙した視聴者も少なくないのではないだろうか。

 ファンの間でいまだに大変人気がある「殺しのカクテル」。こだわりのカクテルとともに、終始おしゃれな雰囲気で展開していくストーリーはもちろん、薫と美和子の日常が垣間見える痴話げんかやイギリス研修時代の右京を感じるセリフなど、レギュラーメンバーのキャラクターが現れた各シーンも必見だ。

■「殺人晩餐会」(season2 第3話)

 山奥の三ツ星レストランを訪れた右京・薫・美和子・右京の元妻の宮部たまき(益戸育江)は、大雨による土砂崩れで店内に孤立してしまう。
そんな中、居合わせた客の1人が殺されるという事件が発生。容疑者は、被害者と同グループの客3名と、ギャルソン・シェフに絞られる。

 誰も出られない・入ってこられないというシチュエーション「クローズドサークル」の中で展開するこの回は、冒頭のほのぼのした食事風景やカメラワークなどが実はすべてが伏線になっている本格ミステリー。映像作品として見ごたえがある回でもある。

 ちなみにこの「殺人晩餐会」という回は、ファンの間では「イカの回」などと呼ばれる。その理由は最後まで見ればわかるのだが、ちょっとガサツなイメージの薫が“イカ料理”を前に驚異的な味覚能力を発揮するのも見どころだ。


■「Wの悲喜劇」(season5 第13話)

 ことの発端は、太った妻が便器を壊してしまった拍子にお尻がはまり、そのまま抜けなくなって餓死してしまった、というちょっと滑稽で不運な事故。しかし右京は、事故当時不在だった被害者の夫による“殺し”ではないかと睨(にら)み探っていく。すると徐々に『相棒』シリーズの中でも異色なトリックが明らかに。深い愛ゆえに起きた“悲劇”の全貌が暴かれていく。

 もちろん、最愛の妻の死は間違いなく“悲劇”なのだが、便器にはまった被害者の妻の姿は不謹慎ながらもコミカルで、“喜劇”と言えるシーンも多い。他にも、美和子が突如オリジナル料理に目覚め「美和子スペシャル」という怪しげな料理を振る舞ったり、薫と捜査一課トリオが大騒ぎしながら体の大きな被害者の遺体を運び出したりと、クスっと笑ってしまう場面がみられる。
右京の描いたパラパラ漫画のかわいらしいタッチも、本回の“喜劇”ぶりを盛り上げている。

■「レベル4~前後編・薫最後の事件」(season7 第8・9話)

 国立微生物研究所の職員が殺害され、感染すれば必ず死に至る“殺人ウイルス”が盗まれるという前代未聞の事件が発生。右京と薫は同研究所の職員でウイルスの生みの親・小菅(袴田吉彦)が犯人らしいと突き止める。事件を起こした目的を“ゲーム”だと言う小菅。緊張の走る中、小菅と特命係の命を懸けたゲームが始まる。

 この回は、サブタイトルにもあるように薫の“最後の事件”となるだけに、放送開始当初からのファンには“胸アツ”なシーンが多い。
例えば前編で、薫が小菅の人質になってしまうシーン。一旦捕まるものの、逆に見事に小菅を倒す薫の姿に、右京と出会った頃の彼を思い出したファンは多いだろう。なにしろ薫は、うっかり立てこもり犯の人質になってしまったという失態を犯したことで特命係へ左遷されたのだ。今回はあの時の経験をしっかり生かして、見事犯人逮捕に成功した。

 また後編では、これまで100を超える事件を解決してきた右京と薫の“まさに相棒”なシーンも。右京の推理を信じ、殺人ウイルスがまん延しているかもしれない隔離室へ突入した薫。周りに止められても、「何年、あの人と相棒やってると思ってるんですか」と右京への信頼を貫いた。

 そしてこの事件解決後、薫は高校時代の友人の遺志を継ぎ、腐敗政治がはびこる南アジアの小国・サルウィンへと旅立つことを決意。右京が薫に最後にかけた言葉は非常にシンプルながら、2人の関係にとってはそれで十分伝わるのだろう。

■初代、そして新たな“相棒”となる薫・右京の行く末に期待

 こうしてサルウィンへと旅立ち、season21で満を持して帰国した薫。第1話では教え子を失うというつらい経験をしたが、ここからどのようにして右京の“相棒”に戻っていくのか。離れていた14年間でお互い経験したものを持ち寄り、再び共に進むこととなる2人から目が離せない。(文:小島萌寧)

 ドラマ『相棒 season21』は、テレビ朝日系にて毎週水曜21時放送。