韓国の李在明政権が打ち出した初の「2026統一白書」が、波紋を呼んでいる。白書は「平和共存」を前面に掲げ、「北朝鮮体制の尊重」「吸収統一を追求しない」「敵対行為を行わない」という“融和3原則”を明記した。

尹錫悦前政権が掲げた「自由基盤の統一」や対北圧力路線は大きく後退し、「平和」「対話」という言葉が急増した。一方で、北朝鮮人権問題や非核化圧力の扱いは縮小された。

しかし、その同じ時期、北朝鮮の金正恩総書記は全く逆方向へ突き進んでいた。金正恩氏は17日、朝鮮人民軍の全師団・旅団の指揮官を前に、「南部国境線を難攻不落の要塞にせよ」と指示した。

韓国が「平和」を語る一方で、北朝鮮は「戦争準備」を加速している――。その落差はあまりにも大きい。韓国保守派が激怒したのは当然だった。与党「国民の力」は、この統一白書が南北を「事実上の二国家」と表現したことについて、「金正恩の二国家論への呼応だ」と猛反発した。「平和統一」を定めた韓国憲法3・4条に反するという批判まで飛び出した。

だが、皮肉なのは、現実の朝鮮半島情勢を見れば、李在明政権の認識の方が“現実的”に見えてしまう点だ。金正恩氏は2023年末以降、「韓国は敵国であり、もはや同民族ではない」と宣言した。さらに「統一は実現しない」と主張し、統一路線そのものを事実上放棄した。

以後、北朝鮮では「統一」の概念が急速に消され始めている。記念物、宣伝文句、制度、憲法――、公式地図からは南半部が消された(竹島も…)。北朝鮮は着々と「断韓国家」へ変貌しつつある。

つまり、韓国が「統一」を叫ぼうが、「平和共存」を唱えようが、北朝鮮側はすでに“南北分断路線”へ舵を切っているのだ。しかも厄介なのは、韓国側にも決定打がないことである。融和路線を取れば、北朝鮮の分断固定化を後押しする。逆に、「韓国主導の統一」を掲げれば、北朝鮮は対話そのものを拒絶する。結局、どちらに進んでも出口は見えない。

朝鮮半島統一は、かつての「民族的悲願」から、「誰も解決できない永久課題」へ変わり始めているのかもしれない。(高英起)

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