ところで、たいやきに「天然物」と「養殖物」があるというのをご存知だろうか。実はコレ、2002年に発行された『たい焼の魚拓』(JTB)という本の著者である宮嶋康彦さんが命名したもの。一尾ずつの型で焼くたいやき(一本焼き)を、「天然物」。同時にたくさん焼くことのできる型で焼くたいやきは「養殖物」とするそうだ。夜店などで売られているのは、たいてい「養殖物」である。ちなみに、この本を読んで私が驚愕したのが、福岡にある某店のたいやきは「オス」と「メス」の区別もあるということ。そして、この本が出版された当時、重労働で非効率的な「天然物」は絶滅の危機にあり、ごく一部の老舗店でしか食べることができなかった。
しかし、ここ数年あえてこの「一本焼き」を売りに開業するお店が増えている。実は私、「天然物」を今だかつて食べたことがなかったため、そんなお店のひとつである大阪・天満にある『野乃屋えびす庵』というお店に足をはこんでみた。
さっそく焼きたてをひとつ買って食べてみたところ、皮が薄くパリパリしていて、確かに食べ慣れた「養殖物」とはまったくの別モノ。このお店のものはボディも小ぶりで、締まった身の感じがなるほど天然鯛を思わせる。「養殖物」のふんわり、やわらかな口当たりとは好みが分かれるところかもしれない。また、「養殖物」は皮が厚いため、「変わりダネ」な中身でバリエーションを楽しめるというメリットも。一方、「天然物」は薄皮が身上なので、皮とあんの質で勝負する傾向にあるのかもしれない……と感じた。