――1人、1人が非常に綺麗に撮れてますね!そもそも、なぜクラスメイトの写真を1人ずつ撮ろうと思ったのですか?
「僕は高校2年生の時に、世界のことをもっと知りたいと思って留学したんです。帰国したらもう1度、2年生に入り直さないといけないので、年齢的に1歳下のクラスに入ったんです。途中からだと、なかなかなじめないんじゃないかと不安だったんですけど、本当にみんなが仲良くしてくれて…。その感謝の気持ちもあって、『未来に残したい写真』『大人になってから、もう一度見た時に、元気の出る写真』をテーマに、1人ずつの写真を撮ることにしました」
――素晴らしいですね!撮ろうと思ったのはいつ頃ですか?
「昨年の秋です。週に2~3人のペースで撮っていって、5ヶ月くらいかけて38人の写真を撮りました。みんな受験勉強で忙しいから、思うようにスケジュールが合わなかったり、天気が悪かったりで、ちょっとずつ撮っていったんです」
――同級生の写真を撮る時って、照れませんでした?
「やっぱり、最初はお互いに照れましたね(笑)」
撮影する場所は、お気に入りの所を選んでもらって撮影。写真集には本人の将来の夢が添えてある。写真集のタイトルは「みらいのはなし」。
●写真のことを優しく教えてくれる父
今井さんが本格的に写真を撮り始めたのは、中学2年生の頃だそうだ。
「山岳部に入っていたので、山に登って綺麗な景色を撮らないのはもったいないと思って、撮り始めたんです。中学3年生の頃からは高い山にも登るようになって、北アルプス、南アルプス、屋久島などに行くようになりました」
――写真やカメラについては、どなたに教わりました?
「父です。
今井さんの話によると、お父さまも写真が好きで、高校生の頃から写真と撮られていたそうだ。今井さんの家には、お父さまが撮った写真がたくさん飾ってあるという。
――今井さんの子どもの頃の写真もたくさんあるんじゃないですか?
「あります。しかも、父は構図のこととかも含めて、写真の撮り方が断然うまいです。学校では写真部の顧問ですし」
――こ、顧問!?
「父は僕が通っている高校の教師でして、写真部の顧問でもあります」
――ひょえ~~!ちなみに学校ではお父さまのことを、どのように呼んでいますか?
「ちゃんと、『先生』って呼んでますよ(笑)」
(…当たり前のことを聞いてしまって、スミマセン)
――先ほど「現像の仕方も父に教わった」という話が出てきましたが、デジタルカメラではなくフィルム撮影ですか!?
「時と場合によって使い分けますが、やっぱり写真が綺麗なのでフィルムで撮ることがほとんどです。僕自身、面倒くさいことが好きなんで(笑)」
――もしかして、自分の部屋に暗室があるとか?
「あります(笑)。もちろん、手作りの暗室です。上京するために引っ越してきましたが、新しい部屋にも暗室を作りました」
大学に通い始めれば、大学にある設備を使うとのことだったが、引っ越す時に、実家から引き伸ばし機をはじめとした写真道具一式を運んできたそうだ。
――「この方の話をじっくり聞いてみたい」という方はいらっしゃいますか?
「写真家の立木義浩さんです。写真甲子園でお会いしたのですが、立木さんは写真の良いところをたくさん見つけてくださるんです。自分ではダメだと思っていた写真でも、立木さんは良いところを指摘してくださいますし、遊びの部分を考えるようになったのも、立木さんにお会いしたのがきっかけです。立木さんにお会いして、写真がもっと好きになりましたね」
他にも、好きな写真家を聞いてみたところ、スナップ写真であれば、アンリ・カルティエ=ブレッソン、ロベール・ドアノー(共にフランスの写真家)、風景写真であれば竹内敏信さん、米美知子さん、アンセル・アダムス(アメリカの写真家)の名前が。
―― 一番、尊敬する人は誰ですか?
「父です」
なんて、立派な高校生なんだ。いや、話していても、年上の先輩と話してるんじゃないかと錯覚するほどの堂々とした佇まい。
「今は、色々なことを吸収したくて、たくさんの写真を撮ってますし、いろんな写真を見ています。中学生が素直に撮った写真も好きで、その感性は忘れたくないですね」
――ちなみに、今日もカメラをお持ちですが、どこかで写真を?
「吉祥寺に行って、スナップ写真を300枚ほど撮ってきました」
300枚!!
実際に見せていただいたが、芸術的かつ、遊びの要素も加わった写真ばかりであった。写真のことについて、目を輝かせながら話してくれた今井さん。実は漫画好きでもある。
「『おやすみプンプン』の浅野いにおさんのファンですし、花沢健吾先生の『アイアムアヒーロー』もよく読みます」
春からは、日本大学芸術学部に通う今井さん。できれば、今後はフランスに行って写真を撮りたいという。活躍の場は所沢や江古田だけではなく、世界の街や山へと、どんどん広がっていきそうだ。今井さんも偉大だが、やはり父は偉大である。 ※注:母も偉大ですよ (やきそばかおる)