「興味な~い」って人は、ここからよそのインターネットへどうぞ。
「興味あるけど、どんなゲームなの~?」って人は、小野憲史さんがわかりやすい解説を書いてくれているので、それ読んで。
「インストールしたけど何をすればいいのかよくわからないよ!」という人は、杉村啓さんがトラブル解決法をまとめてくれてるので、そっちを読んだらいいじゃなーい。
「そんなことより攻略本とか出てないの?」って人にはこれ。米光一成さんがIngressの攻略本のレビューを書いてるよ。いやあ、なんでもあるなあ、エキレビって!

というわけでわたしもやってるわけですが、やっぱりよくわかんないんだよね。いや、大体はわかりますよ。青軍と緑軍に別れて、エネルギー溜めて、アイテム集めて、現実世界のフィールド上で陣取り合戦するんでしょ。これでもレベル5まで来てるんでね、ひと通りのことはアタシ体験済みなの。
ただ、アメリカ製のゲームだからテキストが全部英語。中2ぐらいで英語力が止まってる身としてはこれがツラい。知ってる単語を拾い読みしながらなんとなくやってきたけど、「どうせ表面的な部分しか理解できていないんだろうなあ」という気分が拭いきれない。ゲーム中に表示される英語を正しく理解すれば、きっといま見えている以上の深いおもしろさがあるんだろうなあ。
そして、このゲームのいちばんの目的である「陣取り」。これがまた、わたしにはそんなにおもしろく感じられないのだ。だってさー、せっかく猛暑の中を歩きまわって、貴重なアイテムを消費して、ようやく敵ポータルを奪い取ったのに、それがまたしあらくすると誰かに奪い返されちゃうんだよね。なんだかすごくむなしい……。
そういうゲームだよ! と言われればそれまでなんだけど、コレクター気質の強いわたしとしては、せっかく集めたもの(自軍のフィールドを拡大するのはコレクションしているような気持ちになる)が白紙に戻されたりするのは、ゲームの快感を激しく損なうのだ。
……ってなことを考えながらゲームをやっていて、わたしは自分ならではの愉しみ方を見つけてしまった。それが「珍ポータル集め」である。それがどんな遊びかを説明する前に、まず、ポータルというのがどうやって設定されているかをお話ししよう。
「Ingress」が、これまでのゲームデザインの歴史の中で突出してすごいと思えるのは、ゲームバランスを開発者がコントロールしていないところだと思う。位置情報ゲームにおいて、基地や補給所や敵陣といったポイントが「どの位置」に「どれくらいの距離感」で配置されるかは、そのままゲームバランスの善し悪しに反映される。
ところが、このゲームでは「どこをポータルに設定するか?」という非常に重要な判断を、ユーザーたちの手に預けてしまっているのだ。
ポータルに値する場所というのは、芸術や知識に関する場所で、何かの記念碑や彫像、壁画などのランドマークに限ると指定されている。日本は神社仏閣が多く、鳥居や石像などがポータルになっている。図書館や郵便局などの公共施設も可能だというが、ま、とにかく“像っぽいもの”とザックリ理解しておけばいい。
で、これはと思う像があったら、ユーザーが自分で写真を撮り、運営本部にポータル申請をする。やがて認可が下りれば、そこが正式にポータルとなる。ということは……そう、各種ポータルの位置関係や密度(すなわちゲームバランス)は、開発側ではなく、ユーザー側の行動によって変化してしまうことになる。どうですか、これって、すごいことでしょう?
さて、話の流れ上、そうした「Ingress」のすごさを語ってしまったが、わたしが本当に言いたいのはそこじゃない。
ポータルをユーザーが勝手に申請できるということは、中には運営側の思惑から外れたものもある、ということなのだ。形式上「芸術や知識に関する場所で~」というルールはあるが、プレイヤーたちはそんなことを律儀に守る人ばかりじゃない。
これのどこが「芸術や知識に関する場所」なのか。

神田小川町の有名な脱力スポットもこの通りである。

よくこんな名称で認可が下りたものだ。

亀有に行くとこういうのが山ほどある。

たとえ商業施設の看板であっても、「ここは男性労働者の被服の歴史研究所で、これはそのシンボルマーク」とでも説明して送信すれば、相手は遠い外国の人達だからポータル申請が通ってしまうのではないか。そうでもなければ、顔のYシャツの看板がポータルになってる理由が思いつかない!
ともかく、こうした珍なるポータルを発見したら、ハックするのもそこそこにポータル画面をスクリーンショットに撮っている。これが珍ポータル集めである。わたしが撮った珍ポータルは、ツイッターで#珍ポ集めのハッシュタグをつけて投稿している。よかったらアナタの珍ポも見せてください。
ゲーム開発者が用意したルールに沿って遊んで、きちんとおもしろいのが素晴らしいゲームではあるけれど、そこから逸脱した遊び方もできるというのは、そのゲームの懐の深さを感じさせてくれるじゃないか。天の邪鬼な遊び方をしているわたしが言うのもなんだが、「Ingress」おもしろいなあ。
(とみさわ昭仁)