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今夜4話「カルテット」視聴率は下がる、だけどますます面白い…とっつきにくい話じゃないよ!


別荘に集う4人は、家族からはぐれた人たちだ。司(松田龍平)は“世界の別府ファミリー”からはぐれている。真紀は夫からはぐれている。すずめも家族からはぐれている。諭高(高橋一生)は……たぶん、もうすぐわかるだろう。

許せない親は、許さなくていい。「血は水よりも濃い」ということもない。自分を殺す古臭い家族観に従うこともない。真紀の「いいよいいよ」「帰ろう」という言葉の意味はとても重い。

真紀「私たち、同じシャンプー使ってるじゃないですか。家族じゃないけど、あそこはすずめちゃんの居場所だと思うんです。髪の毛から同じ匂いして、同じお皿使って、同じコップ使って、パンツだってなんだって、シャツだってまとめて一緒に洗濯機に放り込んでいるじゃないですか。そういうのでも、いいじゃないですか」

このセリフは坂元裕二の過去作『問題のあるレストラン』(15年)の8話に登場する静子(藤田弓子)の「なんであんなにいろんな種類のシャンプーがあるの? 頭から同じ匂いを出しているのを家族っていうのよ」というセリフと対応している。『問題のあるレストラン』は、それぞれ問題を抱えた「ポンコツ女」たちが集まって家族のような共同体を築く物語だった。

「古き良き家族像の崩壊」と「新しい居場所の確保」というテーマは、ドラマや映画においてけっして新しいものではない。古くは山田太一脚本の『岸辺のアルバム』(77年)が前者を描き、この『カルテット』第3話を演出した金子文紀が脚本・宮藤官九郎とコンビを組んだ『木更津キャッツアイ』(02年)、『タイガー&ドラゴン』(05年)などの作品も、血縁を持たない共同体を描いた物語だった。すずめが出まかせで家族について語った「きび団子」が出てくる『桃太郎』も血縁が一切登場しない物語である。

真紀「泣きながらごはんを食べたことがある人は、生きていけます」

共同体に受け入れられると安心したすずめは、涙を浮かべながらカツ丼を頬張る。きっと、真紀も一人で泣きながらごはんを食べたことがあるのだろう。嘘つきだらけのドラマだが、この言葉には嘘がない。『プロレススーパースター列伝』の「涙のしょっぱいつけでパンを食った人間でなければ本当の人生に対するファイトはわかない!」というセリフを思い出した人はどれだけいるだろう?

居場所が見つかってよかったね、では終わらない


「告白とか苦手で」と言うすずめは、どんなときも本心を言わず、笑ってやり過ごしてきた。諭高のパンツを燃やしてしまっても告白しないし、嫌がらせのメモもデスクの引き出しの中にしまいこんでいた。すずめを支配しているのは“隠蔽”の二文字だ。いちいち他人を笑うのも防御本能のようなもの。過去のことも現在のことも、すずめはけっして告白しない。隠していることを告白したら、居心地の良い場所から追い出されてしまうと思っているからだ。

いつも眠気の限界までリビングから離れようとしないすずめは、まるで幼子のようでもある。それだけこの場所が心地良いのだろう。すずめが司に急激にアプローチしたのは、偶然の出会いに支えられた関係を、より強固なものにしたかったからのかもしれない。

ただし、このまま「居場所を見つけられてよかったね」で終わりそうもないのが『カルテット』の底知れない魅力である。なにせ、まだ第3話が終わったばかりなのだ。過去に嘘が露見して日本中からバッシングされたすずめは、今もまた“友人のふり”という嘘が露見することを恐れているし、真紀が本当に善人なのかさえわからない。

ライターの武田砂鉄さんは「外野が早々に用意するレッテルを軽快に避けていく感じが『カルテット』にはある」と指摘している(cakes「高橋一生は解析されない状態を保つ」)。一見して何のドラマかわからない、説明しにくいところが『カルテット』の良さである。
今夜4話「カルテット」視聴率は下がる、だけどますます面白い…とっつきにくい話じゃないよ!
イラスト/小西りえこ

世界は見えないものでつながっている


ドラマの冒頭で欧太郎が披露するトランプの手品は、カルテットドーナッツホールの4人のことを表している。偶然Aが4枚揃ったように見えるが、実は“タネも仕掛けもある”ということ。

純は欧太郎(劇中で「おじさん」と呼んでいるが血縁は明らかではない)のためにわざわざ軽井沢まで足を運び、欧太郎の死に涙を流す純朴な少年だが、すずめに軽くあしらわれた後、カルテットドーナッツホールのウェブサイトに無言ですずめの過去を示す動画を送る冷酷さも併せ持つ。すずめに「出テケ」とメッセージを送り続けた会社の人たちだって、きっと善人の部分もあるのだろう。『カルテット』の面白さは、人間の多面性を描いているところだ。

すずめが真紀に自分のことを話す蕎麦屋で“白状”をイメージさせるカツ丼を頼んでいるのは洒落が効いている。刑事の取り調べシーンに初めてカツ丼が登場したのは、55年公開の映画『警察日記』なのだそうだ(中町綾子『なぜ取り調べにはカツ丼が出るのか?』より)。

蕎麦屋で流れる稲川淳二の怪談は、すずめの心境を言語化しているものだという指摘があった。「どうにも体が動かない」「やだやだどうしよう」と稲川が語っている部分が、会いたくない父に対するすずめの心の動きを表しているというものだ。

なお、稲川はツイッターで『カルテット』3話が放送された日に「つぶやき怪談」を更新しているが、内容は「死者が“ここにいるんだ”と私を導いていた」という話だった。20年以上も会わなかった父親と死を介することで向き合わなければいけなくなったすずめの話と、ちょっと似ている。

すずめが真紀に語った「チェロを教えてくれたおじいさん」の話も不思議だ。欧太郎の世話をしていた寛子(中村優子)は、冒頭で「物置のおじいちゃんのチェロを見つけて、それ以来、一日中部屋にこもって弾いてた」と語っているが、おじいさんがすずめにチェロを教えていたとは言っていない。OLとして務めていた会社を退職するとき、すずめはチェロを抱えたおじいさんの絵がプリントされていたコップを大事に持っていた。家族からはぐれたすずめにとって、人間の寿命を超えたチェロの存在と、姿の見えないおじいさんの存在はとても大切なのだろう。

世界には見えるものと、見えないものがある。人と人とのつながりも本来は見えないものだ。司にキスをして、すずめが言う。

すずめ「Wi-Fi、つながりました」

世界は見えないものでつながっていく。

それまでの肌を隠すフリルのたくさんついたドレスではなく、腕を露出したドレスですずめはチェロを弾く。最初に弾こうとして途中でやめたのはバッハが作曲した「無伴奏チェロ組曲」の第1番「前奏曲」。今では大変有名な曲だが、長く忘れられていた曲だった。この曲を再発見したのがスペインのチェロ奏者、パブロ・カザルスであり、彼によって見出されたのがガスパール・カサドである。すずめがやり直したのは、このカサドが恩師カザルスに献呈した「無伴奏チェロ組曲」だ。チェロとともに時間を超えて受け継がれた見えない何かを表現しているのかのようである。

とまぁ、『カルテット』はいくらでも深読みができて、いろいろな解釈が楽しめるドラマだ。でも、だからといって深読みできなければ楽しめないドラマだとは思わない。第3話では、30代半ばの“下り坂”に差しかかった多くの人が経験するような、家族との別れという普遍的なテーマを描いている。とっつにくいドラマではないんだよ!

今夜放送の第4話は、お待ちかねの高橋一生回。「ウルトラソウルです」と呼び出しに応じて、いきなり簀巻きにされていたわけだが……。3話のアイキャッチで語られてきたキャッチコピー「すずめの告白、諭高の嘘」も気になる。

本日より主題歌「おとなの掟」のフルバージョンがiTunesほか主要配信サイトにて配信開始! こちらもお聴き逃しなく。
(大山くまお)
今夜4話「カルテット」視聴率は下がる、だけどますます面白い…とっつきにくい話じゃないよ!
「おとなの掟」ジャケットイラスト
「(c)maegamimami

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「今夜4話「カルテット」視聴率は下がる、だけどますます面白い…とっつきにくい話じゃないよ!」の みんなの反応 5
  • 匿名さん 通報

    録画して見ています。すずめちゃんのOLの時の話は大泣きしてしまった。大人の世界にも本当に苛めはある。最後まで笑顔で勤め上げたすずめちゃん。ドラマだって思っても、泣かずにはいられなかったです!

    24
  • 匿名 通報

    この方の評論は深くて押し付けがましさが無いので 素直に読めました。 音楽の部分もドラマを知る上で参考になりました。

    15
  • 匿名さん 通報

    視聴率が低いのが信じられない

    15
  • 匿名さん 通報

    バッハのくだり…そこまで考えた坂元さんは凄すぎる。分かりやすい解説をありがとうございます。次週がまた楽しみ。

    11
  • とくめい 通報

    ライターさんの考察の深さ、感性の豊かさが素晴らしいです。より一層、ドラマを楽しむことができています!ありがとうございます(o^^o)

    1
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