連続テレビ小説「ひよっこ」(NHK 総合 月〜土 朝8時〜、BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜)
第20週「さて、問題です」第115回 8月14日(月)放送より。 
脚本:岡田惠和 演出:松木健祐
「ひよっこ」115話。乙女寮メンバーがピーチクパーチクピーチクパーチク
イラスト/小西りえこ

連続朝ドラレビュー 「ひよっこ」115話はこんな話


奥茨城村からみね子(有村架純)が帰って来てから1ヶ月、乙女寮のメンバーが、あかね荘に遊びに来た。

手が止まる女たち


「6月11日の16時でお願いいたします」
珍しく豊子(藤野涼子)が仕切りで、乙女寮のメンバーが集まることになった。
当日は、うるさくなるだろうからと、あかね荘の人たちにも、料理をつくるみね子と時子(佐久間由衣)と
愛子(和久井映見)。

早苗が「ピーチクパーチク・・・」うるさいんだろうねと言っている時、SEも小鳥の声だった。

みね子だけでなく、時子も愛子も、しゃべっている時は、作業の手が止まる。これはもう演出に違いないと確信した。

ニヤニヤする豊子


前回は、すずふり亭で、元治(やついいちろう)とヒデ(磯村勇斗)による料理(84話)。今回は、中庭で、みね子たちの手作り料理。毎回、美味しそうな集まりだ。
そういえば、みんなが集まった日に、川本世津子(菅野美穂)がすずふり亭にやって来て、そこから、深刻なお父ちゃんのターンがはじまったのだった。

再びの再会では何が起こるのだろうか。どうやら、豊子(藤野凉子)が鍵を握っている様子。
豊子はニヤニヤし続ける、意味深に。
そしてこの回の最後には、
「私の実家の問題がなぜ解決したのか。
澄子にどんないいことがあるのか。
5分後にわかります」と、ミステリー・ドラマ調に語るのだ。

いったい、何が起こるのか。視聴者は、5分ではなく、24時間待たされることになる。
早く知りたい!

みんなの近況


お食事にしながら、みんなは近況を語り合う。
みね子は、お父ちゃん問題のこと。
幸子(小島藤子)は調布の団地に当たったが、家賃が高くて、理想のインテリアを買えないこと。この人は、常に、日常の、ちょっとした不満を語る係である。

ニヤニヤしている豊子は、実家が不作で借金をこさえてしまったが、なんとかなったらしい。

時子は、小さい役だがテレビに出ることになったのと、ファン(実は、米屋のさおり〈伊藤沙莉〉による三男〈泉澤祐希〉の恋の妨害工作)ができたことを語る。

澄子(松本穂香)も、いろいろあるが、乙女寮の仲間たちの影響で、強くなっている。
余談だが、松本穂香は、澄子を演じるためにわざと猫背にしているのだと思うが、ものすごく巧い。『あまちゃん』「13年」の能年玲奈(現・のん)は自然体の猫背で、それが良かったけれど、わざわざ猫背にするのは、歌舞伎の女方が、肩を落して女性を演じるような、テクニカルなもので、松本穂香の俳優として可能性を感じさせる。
「腹が立つと、腹が減ります」もいい台詞だ。

いいことがある


澄子が、「なんかいいこと」「ぱーっとしたような、なあ」がないかと思いを馳せると、愛子が「きっとある。

かならずある。みんなにある」といつものピュアな前向きさで励ます。
「がんばってれば、そのうちいいことはやってくるっていう意味なんだよ」とみね子もピュアな信じる心、耐える心で言うが、豊子の言う「いいこと」は、そんな漠然としたことではないらしい。

たいてい、愛子やみね子のような、漠然とした「いいこと」を想像して、いやなことをやり過ごす人が多いが、それだと実際はなんの解決にもならない。漠然とした「がんばっていればお天道さまが見ていてくれてそのうちいいことがある」信仰は、残念ながら庶民の不満のガス抜きでしかないのだ。占いがいい例。
でも、がんばることは大切。豊子の言う5分後の「いいこと」は、それを打破する一撃であってほしい。
(木俣冬)