第5週「笑いを商売に」第28回 11月2日(木)放送より。
現在、オンデマンドで、1〜6話、無料配信中。
脚本:吉田智子 演出: 東山充裕

28話はこんな話
藤吉(松坂桃李)はなんとかお金をつくろうと奔走するがうまくいかず、借金とりは待ってくれない。
思い余った啄子(鈴木京香)は「わてを殺しなはれ」と言い出す。
日本人の心・赤穂浪士
最初と最後が、刃傷沙汰で円環を成していた。
冒頭は、愛息子・藤吉に斬りかかるごりょんさん。
終わりは、死ぬと言い出したごりょんさんに向かって、藤吉が鉈を振り上げ、「もう一巻の終わりです」(ナレーション小野文惠)でつづくに。
ごりょんさんが藤吉をたたっ斬ろうとしたときは、「殿中でござる」と声がかかったが、29話ではどうなるだろう。
その前に28話を振り返っておかなくては。
「殿中でござる」といえば、「忠臣蔵」の松の間の場。
いけずな吉良上野介に人刃傷に及んだ結果、浅野家は取り潰しになり、赤穂浪士たちが主君の敵・吉良家に討ち入りするという、殿思いの忠臣たちの美談「忠臣蔵」を好きな人は多い(お若い方々は知らないかもだけれど)。
討ち入りの日は12月14日。ちょうど、「わろてんか」で、暮れが近いと言っていたのでちょうどいい。
「よ、日本一」の掛け声で、鈴木京香の止めのポーズが決まる。
が、「なんやのこれ」とノリツッコミでオープニングへ。
28話はなかなか軽快なテンポではじまった。
寄席の思い出
家を担保に、いかさまのパーマ機を大量に買ってしまった藤吉。
契約書は、わけのわからぬ外国語で、どうしていいかわからない。
気丈なごりょんさんもついに寝込んでしまう。
かいがいしく世話するてん(葵わかな)に、「京都へ帰りなはれ」と言う。
そもそも、店の経営がよくなく、嫁いでも、てんが不幸になると思っていたのかなとも思えてきた。
ごりょんさんは、まだ藤吉が幼い頃、女のところへ行ってしまった夫を街中探し疲れて、川に飛び込もうとしたとき、藤吉が寄席を見たがって、そこで見た落語に救われた話をてんにする(てんも第1話で寄席を見て、笑いに目覚めていて、ここで、藤吉とてんに運命的なものを感じさせる)。
「でも、悲しいやらおかしいやらで、わても笑ったわ」
こういう、悲しいのに笑ってしまうというペーソスが「わろてんか」の底深くに流れているのは感じるけれど、明るく爽やかがモットーの朝ドラだし、と抑制しているように思う。もっとそこを全面に押し出しなはれ、と思うのは間違っているだろうか。
高橋一生、久々に登場
困ったてんは、伊能栞(高橋一生)に相談に行く。
困った時の伊能様頼み。
でも、粗悪品を確認しないのが悪いと、伊能様は冷静だ。
「ぼくは間違ったのかもしれないな」と心配する栞に、
「うちはまちがったとは思いません」とてんは、あくまでも藤吉を立てる。
すると栞は、思わず太字にしたくなるような殺し文句を吐く。
「ぼくはいつでも待ってるよ」
栞さま、あんた、ブライトか!(ファーストガンダムでブライトがミライさんに言ったセリフは「ぼくはいつまでも待っているよ」)
なんだか、いきなり本気モードではないか。
栞さまには、もうしばらく、たとえば「ガラスの仮面」の真澄様みたいに、澄ましていてほしかったと思うのは間違っているだろうか。
薬まつり続報
「わろてんか」くすり祭りと神社はドラマとは別物だったで、京都二条の薬まつりについて書いたので、11月2日、行ってきました、薬まつり。
製薬会社の方々を中心に、ひっそりと行われていました。
ちょうど夕方16時からはじまった神楽舞を見ることができました。
厳かに巫女さんが刀を振るいながら踊っていて、それがどういう内容なのかスタッフらしき方に聞いたけれど、わかりませんでした。もっと調べてみたいと思います。
ご老人がまつりの様子をスケッチしながら、「朝ドラでやっていたから人がもう少し来るかと思ったら、静かなものですね」と言っていたのが印象的。
お守りにお菓子がついていたけれど、子供の姿はなく(もっと早い時間にはいたかもしれませんが)、前の記事に書きましたが、昔はもっと賑わっていたそうで、時代の変化とともに、昔の風習は消えていくのかと思うと、切ない気持ちに(大阪や東京の薬神社のお祭りはもっと賑わっているようです)。
とはいえ、絶対知ることのなかった、こういう神社の存在を教えてくれた「わろてんか」には感謝します。
取材の御礼をこめて、笹についた寅のおまもり(無病息災)を購入してきました。
関係者の方々が、無病息災でありますように。「わろてんか」のキャスト、スタッフの方々も。

(木俣冬)