子を持つ親として、「サイゼリヤ」の間違い探しには何度もお世話になっている。

幼い子供を連れて外食に出かけるのは何かと気を使う。
そのうちのひとつが「待つ」時間。好奇心旺盛な子供はとにかくじっとしていない。ボタンがあれば押そうとし、店内を冒険しようと歩き出し、突然歌って踊り出す。

料理が届くまで、親はあの手この手で気を引くことになる。そんな時にサイゼリヤのキッズメニューにある「まちがいさがし」はとてもありがたかった。一緒に間違いを探しているあいだは、じっと椅子に座ってくれるからだ。

その間違い探しが『サイゼリヤのまちがいさがし』として、一冊の本になった。ご存じない方はただの児童書だと思うかもしれない。しかし、経験者は「あの間違い探しが……!」と震えるはずだ。

実はこの間違い探し、大人も歯が立たないほど、とんでもなく難しいのである。
難問『サイゼリヤのまちがいさがし』が本になった。答えも確認できる、腰を落ち着けて家でやる
『サイゼリヤのまちがいさがし』(新星出版社)

メニュー全体に仕掛けられた「間違い」


改めて説明すると、「サイゼリヤ」は全国に店舗を展開するイタリアンレストランチェーン。通常のメニューとは別に「キッズメニュー」があり、その表紙には食材へのこだわりがイラストで描かれている。

キッズメニューの表紙と裏表紙には一見同じイラストが描かれているように見えるのだが、この2つのイラストには10個の「まちがい」がある。
キッズメニューの間違い探しが誕生したのは2005年のこと。企画した当時の商品企画部長は、現在社長(堀埜一成氏)になっている。

間違い探しの難易度は、絶妙に設定されている。6〜7個まではすぐに見つかるのだ。「服の色が違う」「一人多い」「向きが逆」と比較的わかりやすく、子供でも達成感がある。

だが、大人にとって本番は残り2,3個。ピタリと間違いを数える手が止まる。「嘘だろ……」と焦るし、「無いよ」と投げ出したくなるし、「『間違いが10個』というのが間違いで実際は9個しかない」と屁理屈もこねたくなる。そうこうしているうちに料理が来て、全部見つけられないまま店を後にすることも珍しくない(メニューには答えが書いていないのだ)

難易度の高い間違いには「窓が少し大きい」「フォークが傾きが違う」など、ある程度の傾向がある。メニュー全体に巧妙に隠されているのもそのひとつだ。「Kid`s Menu」が「Kid`s Menn」になっていたり、外枠の装飾に仕掛けられていたりする。「間違いはイラストの中にある」と思い込んでいると、視界に入っていても「見えない」のである。


過去に掲載された間違い探しは、サイゼリヤの公式HPにまとめられているので、未見の方は挑戦してもらいたい。『サイゼリヤのまちがいさがし』には、過去作から8作と、完全新作の3作が収められている。

改めて子供たちにやらせてみる


サイゼリヤ店内では料理が来るという「タイムオーバー」があったが、書籍となった『サイゼリヤのまちがいさがし』なら腰を落ち着けて間違い探しと向かい合うことができる。心が折れたら巻末の答えを見たっていい。

では、当時お世話になった子供たちにやらせてみたらどうなるだろう。今では小学生になった子供たちだが、たまにサイゼリヤに行くとやっぱり間違い探しに夢中になっている。本を見せてみると「サイゼリヤだ!」とさっそく食いついた。
難問『サイゼリヤのまちがいさがし』が本になった。答えも確認できる、腰を落ち着けて家でやる
終盤になると「間違い、もう無いよ」「無い」「無いよね」「無い!」「無い!」と決めつけていました。

「これは見たことある」「でも忘れた」と取り組み始めた二人。最初は順調に間違いを見つけていくが、やはり残り2,3個で動きが止まる。10分以上根気よく取り組む長女(小6)に対し、長男(小2)は「見つけたら教えて」とどこかに行ってしまった。家の中だと諦めるのも自由なのか……。

長男の離脱後、親子で間違いを探すことに。
難しい間違いを見つけると思わず笑い合ってしまうから不思議だ。「こんな難しい間違いを出すなんて!」と相手に呆れるのと、「こんな間違いが見つからなかったなんて!」と自分に呆れるのと、感情が複雑に入り混じった結果が「笑い」になってしまうのかもしれない。

一人でじっくり向き合うもよし、大人数でワイワイ取り組むもよし、誰かを静かにさせたい時にそっと出すのもよし。間違い探しには、大人にも子供にも時間を忘れさせる力がある。

『サイゼリヤのまちがいさがし』

(井上マサキ)
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