
熊本や大分を襲った平成28年熊本地震(以下、熊本地震)から2年が経った。
大きな揺れの後に発生した、さらに大きな揺れ。その「まさか」が被害を拡大させてしまった。
全国からの支援を受け、復旧・復興が進んでいるが、まだ日常を取り戻せていない人も多い。
あの地震はどんな地震だったのだろうか。今、もう一度考えてみよう。
大好きな益城がどんどん変わっていく。見ることしか願うことしか出来ない自分が無力すぎて嫌になる。今からの大雨でまた被害は大きくなるだろうし、また夜がやってくる。たくさんの人たちが動いてくれて本当に涙が出るくらいありがたい。早く終わって pic.twitter.com/IrINMUeLvU
— h a r u n a(@xxxna29) 2016年4月16日
熊本地震とは?
熊本地震とは、熊本や大分で起きた一連の地震活動のことで、震度7の揺れが2回も発生した異例の大災害である。

発生日時、場所、マグニチュード
熊本地震は2016年4月14日21時26分、マグニチュード6.5の巨大地震が発生したことから始まる。熊本県益城町で震度7、熊本市や玉名市で震度6弱が観測された。
4月16日1時25分、今度はマグニチュード7.3のさらに大きな地震が発生した。益城町はまたもや震度7に見舞われ、熊本県宇土市や宇城市で震度6強、大分県別府市でも震度6弱の揺れに襲われた。
この二度の地震の間や後にも大きな揺れが続いた。観測された震度6弱以上だけでも以下のようになっている。
<4月14日>
21時26分 M6.5 最大震度7
22時7分 M5.8 最大震度6弱
<4月15日>
0時3分 M6.4 最大震度6強
<4月16日>
1時25分 M7.3 最大震度7
1時45分 M5.9 最大震度6弱
3時55分 M5.8 最大震度6強
9時48分 M5.4 最大震度6弱
震度7が2回、余震も多発
熊本地震の特徴は、震度7という巨大地震が2回も発生したこと。そしてそれが約28時間という時間差で起きていることだ。
地震は最初に最大クラスのものがきて、その後はそれよりも小さな余震が続くと考えてしまいがちだ。だが熊本地震はそのイメージをひっくり返した。
ともかく揺れた回数が多く、震度1以上の余震が10月10日までに4000回以上観測され、震度6弱以上にいたっては7回も発生した。
前震から本震という異例のケース
当初、14日の震度7が「本震」とみられていた。ところが16日深夜にさらに大きな地震が発生した。
気象庁は16日の地震後、14日の震度7が「前震」であり16日の震度7が「本震」であると発表した。それまで14日の揺れが前震と判断していなかったことについては「本震と前震の区別は非常に困難」としている。
発生原因となった断層
この地震は南北に引っ張られる力で断層が動いた「横ずれ断層型」。地震調査委員会は14日の前震は日奈久断層帯、16日の本震は日奈久断層と接する布田川断層帯の活動により起きたと発表した。
熊本地震の被害状況
二度の大きな揺れにより、多くの人が死傷した。だが家が倒壊するなどの直接の原因ではなく、地震後の生活で亡くなった「関連死」も非常に多かった。
生まれ故郷益城町はじめ熊本県に地震で甚大な被害が…。親戚皆幸い無事でしたが、生家は全壊だったと従兄弟から画像が…。今出来る事を全力で!和歌山マリーナシティでは全施設で義援金の募金を開始。こんな事しか出来ないけど…。頑張れ!熊本県!! pic.twitter.com/B4S9sDMMbu
— horry (@HorryK) 2016年4月16日
最新の死者・負傷者数
熊本県が2018年7月13日に発表した被害状況によると、死者数は266人にのぼる。内訳は以下のようになっている。
地震による直接の死者数:50人
地震による関連死:211人
地震後の豪雨災害の死者のうち地震と関連:5人
また負傷者数は約2700人、そのほか地震後に発生した豪雨で地震との関係により負傷した人は3人となっている。
建物も全壊が約8600棟、半壊が約3万4000棟にのぼった。電気やガス、水道が途絶えるなど、ライフラインにも大きな影響がでた。
前震から本震までの時間が被害を拡大
熊本地震では前震の発生から本震までに、約28時間の間があった。
14日の地震で避難した人の中にもそれ以上大きな地震は発生しないと考えた人がおり、家の被害が少ないことや、狭い避難所生活の息苦しさから一部の人は15日の夜には自宅に帰っていた。
ところが16日にもっと大きな地震が発生。14日の地震では耐えた家屋が崩れたり家具が倒れてきたりして、被害にあった人もいた。
車中泊による災害関連死も
熊本地震は、地震の直接死よりも災害関連死が約4倍と非常に多いという特徴がある。
地震による避難者数は熊本県内で最大18万人、大分県内で最大1万人にもなった。その避難者は避難所などに集まったが、余震が続いていたことや前震の後に本震があったことは「また大きな地震があるのではないか」という不安につながった。
そのため避難所でも自宅でもなく、車やテントで過ごす人が多くいた。だが狭い場所で体を折り曲げるようにして眠るなどした結果、特に高齢者や既往症のある人が体調を崩し、亡くなるケースが多発した。
熊本地震の特徴 デマ拡散も
熊本地震は多くの人の命を奪ったが、その被害は人だけにとどまらなかった。
熊本城など文化財にも大きな被害
二度の巨大地震は、熊本や大分の文化財にも甚大被害をもたらした。
熊本のシンボルである熊本城は、天守閣の大天守から瓦やしゃちほこが落下。多数の箇所で石垣が崩落し、やぐらも倒壊した。
また国指定重要文化財である阿蘇神社の「楼門」が倒壊するなどし、その光景は被災者のみならず、多くの人にとってショッキングなものだった。
ライオンが脱走したとのデマが拡散、投稿者は逮捕
災害ではTwitterなどのSNSが情報収集や救助要請などで活躍する。だが熊本地震ではそれが悪用された。
14日の地震の後「動物園からライオンが逃げた」というデマがTwitterに写真付きで投稿されたのだ。これがリツイートされ一気に拡散。熊本市動植物園には問い合わせが相次いだ。
3カ月後、デマを投稿した神奈川県に住む男が偽計業務妨害の疑いで逮捕された。「悪ふざけだった」というが、多くの被災者が怒りを覚えた事件だ。
国によるプッシュ型支援
熊本地震では国による支援として初めて「プッシュ型支援」が採用された。
プッシュ型支援とは、被災自治体からの要請を待たずに、食料や毛布など必要と思われる物資を送る方法である。東日本大震災でなかなか物資がいき渡らなかった教訓から取り入れられた。
この方法は発災当初は効果的とされているが、時間の経過とともに被災者のニーズも変わってくるなど、ミスマッチが起きるおそれもある。そのため一定の期間が経過した後は、自治体から要望を聞き取って物資を決める「プル型支援」に切り替える必要があるとされている。
海外ニュースでも報じられる
熊本地震は英語ではそのまま「Kumamoto earthquakes」と表記される。
地震発生は米CNNやNYタイムズ、英BBCなど海外の主要メディアでも報道された。人的被害についてのほか、鹿児島県にある川内原発に影響がなかったこと、津波が発生しなかったことが強調され、海外メディアがどこに力点を置いているのが見えた。
熊本地震、復興進むも未だに残る被害
熊本地震では多くのボランティアが活躍し、くまモンも国内外を駆け回った。発生から2年が経過し、復興も進みつつある。だが今も仮住まいを続けている人は多く、元の生活が戻ったとは言えない状況だ。
先ほど、しゃちほこが無事に設置されました。
— 熊本市 (@kumamotocity_) 2018年4月28日
工事関係者の皆さんからの「おうえん ありがとう」のメッセージには、胸が熱くなりました。復旧工事はまだまだ続きますが、しゃちほこ設置に携わられた全ての方々、そしてたくさんの励ましをいただいた全国の皆さん、本当にありがとうございました! pic.twitter.com/F1uGzU4pvT
復興支援、復興計画とは
熊本県は「復旧・復興プラン」を策定し、そのうち「すまいの再建」「阿蘇へのアクセスルートの回復」「熊本城の復旧」などの10項目を重点的に取り組んでいる。
プランに基づき、災害廃棄物の処理は2年間でほぼ完了。熊本城も2018年4月には天守閣にしゃちほこが復活するなど、復旧が進んでいる。
また地震の経験や教訓を後世に伝えていくために「震災ミュージアム」を作ることも検討されている。
災害ボランティアも活躍
熊本地震では全国から多くのボランティアが駆けつけた。
熊本県災害ボランティアセンターによると、2016年4月〜2018年3月のボランティアは延べ約12万人にもなったという。
また石原軍団、元SMAPの中居正広・香取慎吾・木村拓哉、ローラなど多くの芸能人が炊き出しなどのボランティアに参加し、被災者を勇気付けた。
観光客は徐々に回復、くまモンも貢献
地震により一時観光客は減ったが徐々戻り、2017年には熊本市で501万人まで回復した。
熊本県のPRキャラクターである「くまモン」は地震後しばらく活動を休止していたが、SNSなどで多数の応援メッセージが送られると活動を再開。義援金の呼びかけや支援への感謝など、全国を駆け回って復興を後押しした。
#くまモン頑張れ絵 pic.twitter.com/1Gup9uWzkM
— 森川ジョージ (@WANPOWANWAN) 2016年4月17日
おはくま〜!熊本地震から1年。温かいご支援ありがとうございますだモン!これからも心をひとつにがんばるモン! pic.twitter.com/sPoJz0c35B
— くまモン【公式】 (@55_kumamon) 2017年4月13日
まだ戻らない日常
着実に復興は進むが、まだ日常が戻ったわけではない。
熊本県によると、2018年7月末時点で仮設住宅やみなし仮設に住む人は、約2万8000人にもなる。
原則2年の入居期限を迎えたことも影響しており、ピークだった2017年5月末の約4万8000人に比べれば減ってはいるが、未だに多くの人が仮住まいで生活している。
まとめ
地震から2年が経った。甚大な被害をもたらした熊本地震は災害関連死など様々な教訓を残している。日本ではその後も地震や豪雨など、災害が続いている。今一度熊本地震を知り、考え、そして忘れずにいよう。
【熊本地震に関する情報リンク】
・熊本県「熊本地震に関する情報」
・熊本県「義援金」
・気象庁「平成28年熊本地震」
・熊本市「熊本地震関連」
・地震調査研究推進本部「平成28年熊本地震に関する情報」
・熊本地震デジタルアーカイブ