ミステリオの快進撃である。
即興のラップバトル番組『フリースタイルダンジョン』5th season Rec 6-4(→公式、→テレビ朝日、→Abema)。


チャレンジャーが5人のモンスターを倒せば賞金100万円獲得の即興のラップバトル。
即興で、韻を踏みながら、言葉とリズムを相手にぶつける8小節2ターンの勝負だ。
3本勝負、2本先取で勝利。
ただし、判定が全員一致するとクリティカルとなり即勝利確定である。

チャレンジャーは、輪入道を倒したミステリオ。
モンスターは裂固。

「真面目に戦えば戦うほど相手の罠にハマっていく」と最初のVで語る。

ROUND1。
裂固、「しんねぇ→信念→新鮮」と手堅く韻を踏む最初のターン。
後半はコンプラかかりまくっていた。
ミステリオは、「ニイハオシェイシェイ」のテンドン(おそらくコンプラかかってた裂固の言葉に対するアンサーだろ)。
「通行人A→鬱陶しいねん」のトリッキーな韻も炸裂した。

第二ターンも、図太い神経、(ひざまづいて)死んでー、(幽霊ポーズで走り回って)心霊、悪霊退散、王冠、AKLOと目まぐるしく展開した。
ジャッジは、ミステリオのクリティカル勝利。
ミステリオ万歳、裂固天を仰ぐ。
がっちり対話が成り立っていて、即興性高く韻も踏む。
ミステリオ、ギャグというよりも、ふてぶてしい実力派なのではないか。

モンスターFORK登場。

得意のHIPHOPスタイル論をぶちこむ先攻のFORK。
「ジャッジメント→脱脂綿→達しねぇ」と韻も踏みまくる。
一方、ミステリオ、肝心なところで噛む。噛むというか韻を踏むであろうワードを言えず。
すぐ「やってもーたー」と言い、「こういうところを武器にしていく」とリカバーしようとする。
「分かるか 姓はフリースタイル 名はダンジョンだ。
FORKぶっ倒して新しいモンスターの誕生だ」

とFORKのパロディで〆る。
もちろんFORKは見逃さない。
「ダセェサンプリングはただのパクリ」と指摘。
「ハプニング起きても対応できてない」と指摘。
さらに「前髪を気にしてラップしているヤツの前に神は降りないって実証されたな」と刺激的なフレーズ。
たしかに、バトルが終わるたびに、ミステリオはいちいち前髪を直しているのだ(指摘されたこのバトルの後でも、前髪をなでている)。

「言葉→そこだ」「戯言→ママゴト→賜物」と韻も踏みまくり、ミステリオに手渡す。
ジャッジは、ERON以外、みんなモンスター。
ミステリオかろうじて次のラウンドにつなぐ。
「フリースタイルダンジョン」YouTuberラップパワーとHIPHOP美学激突、ミステリオ対FORK
フリースタイルイラスト/まつもとりえこ

第二ラウンド。
こんどはFORKが噛む。
「お前がマイケル・ジャクションなんて思ってねぇよ
ジャクソン、そうだな噛んでも勝てるもんな」

ミステリオ見逃さず、口パクで「じゃくしょん、じゃくしょん」と笑う。

FORK、その後ちょっと動揺したのか、ブレてしまう(短いなか不用意に「マジ」を3回も繰り返してしまう)。
ミステリオ、「開いた口」と言ったあと何か言おうとしてそれをやめて、マイク外して、口開けて何か叫んだり、唐突な「ポイント10倍じゃボケェ」で締めたり、意外性と緩急の付け方がユニーク。
FORK、うむーーーって感じで薄い苦笑い。
3対2でミステリオがとって、1勝1敗。

第三ラウンド。
「これ以上つきあいきれねえよ」とFORK。
「安っぽいYouTuberみてぇなラップ」「お前からなんにも感じねぇよ」とディスを突き刺す。
ミステリオ「俺から何も感じねぇ 俺に投票した視聴者のことディスってんのかよ」
と、強烈なディスをがっつりひっくり返す。盛り上がる会場。
「そやで これはYouTube動画」
相手のディスを肯定し受け入れるのもミステリオの特徴。
「右から左の物流業者」
くるっと周りながら手を挙げる。
「災いの元→技ありの模様→金足農業」と韻を踏み、
「俺のラップで笑ったらどうなるか知ってるか?
こども3人産まれる」

テンドンのネタで〆る。
終わった後のFORKのなんともいえない表情。薄い苦笑い。
3対2でミステリオの勝利。
HIPHOP美学が、安っぽいYouTuberラップにいなされた形になってしまった。
FORKもひとこと「ショックです」
さて。
次回、呂布カルマ出撃。これは凄いことになりそうだ。(テキスト/米光一成 イラスト/まつもとりえこ