「遅えんだよ。もう何もかも遅えんだよ！」
TBSにて8月13日（火）深夜放送のドラマ 『スカム』（MBS/TBS系）第8話。
『スカム』は、「最後はこうあってほしい」という見る側の気持ちを、最終回に向けてひとつずつすくい上げていく。
「こうあってほしい」の一つ目は、誠実と清宮の友情が真実であってほしいということだ。清宮は仲間や神部（大谷亮平）らを裏切って、“叩き”に関与していた。神部や毒川（和田正人）だけでなく、誠実も清宮を追わなければいけなくなった。
誠実やこどもと一緒に遊んだ公園に、清宮は逃げていた。多額の借金があるが、バックレていた清宮。借金取りに見つかり、すぐに返済しないと家族に手を出すと脅されていた。借金をバックレるなよ……！ 家族と別れて暮らしていたのは、借金取りから家族を守るためだったのか。
清宮「地味に詐欺続けて返すって手もあったよ。けど、お前辞めるって言うじゃん！ そうなったら俺、続けていく自信ねえもんよ！」
7話で、誠実と清宮は詐欺を辞めるかどうかで仲違いしていた。家族のために手を引きたい誠実と、家族のために続けたい清宮。
誠実「なんで……、なんで俺に一言相談してくれなかったんだよ」
清宮「だって！ 相棒がカタギに戻るっていうのに、迷惑掛けれねえだろ！」
それぞれが「裏切られた」という気持ちを抱えていた。しかし、互いに「相棒」と思い合っていることも事実だった。
努力・友情・勝利という「週刊少年ジャンプ」のような段階を踏んで振り込め詐欺を成功させてきた二人。被害者からすれば「心ない」と思われる詐欺の現場にも、血の通った友情が存在していた。
とはいえ、清宮が叩きに関わったことと、誠実が「M名簿」というヒット率の高い名簿を勝手に使っていたという事実は変わらない。M名簿は、剛力（若林拓也）と杜（水間ロン）が誠実の自宅に回収に行っていた。
そこで、誠実の母・幸子（西田尚美）と幼馴染の美咲（山本舞香）と鉢合わせてしまう。「パソコン奪うだけでしょ！ 暴力はダメだよ！」と言う杜を殴りつけ、剛力は誠実のパソコンを持って逃げる美咲を追う。
祖母のいる家に逃げ込んだ美咲は、剛力と揉み合いになる。そのとき祖母が取り出したのが、振り込め詐欺の犯人からの護身用に買っていたスタンガンだった。
ここまで、ピカレスクロマンとして『スカム』を見て、誠実たちに肩入れしてしまう瞬間も多々あった。しかし、振り込め詐欺の被害者やその家族は現実に存在している。
美咲の祖母が、剛力の首に何度も何度もスタンガンをあてる。過剰防衛にならないか、殺してしまわないか心配になるほどに。泡を吹いて白目をむく剛力。
誠実や清宮はもちろん、杜や来栖ですら、女や老人に直接手をかけることはなかった。最後の最後に、剛力はその一線を超える。だからこそ、美咲の祖母が剛力を失神させた展開にひとつのカタルシスが生まれた。
来栖は小沼（柳俊太郎）によって川に落とされてしまった。詐欺の世界で一番悪いことをした来栖の終わりはあっけない。
来栖よりも剛力の結末に痛快さを感じる。「悪い奴は倒されてほしい」という気持ちがすくい上げられた。いくら誠実たち詐欺プレイヤーに共感や同情の気持ちを抱いていたとしても、まだ自分がカタギの倫理で生きていることを再確認した。
神部「俺と毒川も、昔はお前らと同じプレイヤーだった。
神部たちに逃がされた誠実と清宮。しかし、剛力が通報されたために、今度は神部たちではなく警察に追われることになってしまう。誠実の前に、誠実を詐欺の世界に導いた山田（山中崇）が現れた。
夢に出てきては「もう戻れない」と恨めしそうに言い、誠実を追い詰めていた山田。ここでの復活は、誠実につきまとう死神のようだ。
8月27日（水）にTBSで放送される最終話には、1話で姿を消した祥太郎（戸塚純貴）も登場するという。現実の犯罪を扱ったドラマ『スカム』。ものすごいスピードで転がっていった誠実たちの“もう戻れない”人生が、どこにたどり着くのか楽しみだ。
（むらたえりか）
過去放送分配信「Netflix」：https://www.netflix.com/jp/title/81153751
ドラマイズム『スカム』
MBS：毎週日曜深夜0:50〜
TBS：毎週火曜深夜1:28〜
出演：杉野遥亮、前野朋哉、山本舞香、戸塚純貴、福山翔大、水間ロン、若林拓也、華村あすか、柳俊太郎、山中崇、和田正人、西田尚美、杉本哲太、大谷亮平、ほか
監督：小林勇貴
脚本：継田淳
原案：鈴木大介『老人喰い:高齢者を狙う詐欺の正体』（ちくま新書／筑摩書房）
制作プロダクション：ROBOT
製作：「スカム」製作委員会・ＭＢＳ
ＭＢＳ番組ＨＰ https://www.mbs.jp/drama-scams/
ツイッター https://twitter.com/scam_0630
TBSにて8月13日（火）深夜放送のドラマ 『スカム』（MBS/TBS系）第8話。
振り込め詐欺の被害金を横から奪い取る叩き（強盗）に、来栖（福山翔大）だけでなく清宮（前野朋哉）まで関わっていたことが発覚した。清宮と仲の良い誠実（まこと／杉野遥亮）も疑われてしまう。
イラスト／たけだあや
詐欺で生まれた友情は本物か
『スカム』は、「最後はこうあってほしい」という見る側の気持ちを、最終回に向けてひとつずつすくい上げていく。
「こうあってほしい」の一つ目は、誠実と清宮の友情が真実であってほしいということだ。清宮は仲間や神部（大谷亮平）らを裏切って、“叩き”に関与していた。神部や毒川（和田正人）だけでなく、誠実も清宮を追わなければいけなくなった。
誠実やこどもと一緒に遊んだ公園に、清宮は逃げていた。多額の借金があるが、バックレていた清宮。借金取りに見つかり、すぐに返済しないと家族に手を出すと脅されていた。借金をバックレるなよ……！ 家族と別れて暮らしていたのは、借金取りから家族を守るためだったのか。
清宮「地味に詐欺続けて返すって手もあったよ。けど、お前辞めるって言うじゃん！ そうなったら俺、続けていく自信ねえもんよ！」
7話で、誠実と清宮は詐欺を辞めるかどうかで仲違いしていた。家族のために手を引きたい誠実と、家族のために続けたい清宮。
どちらも「家族を守りたい」という動機は同じだった。
誠実「なんで……、なんで俺に一言相談してくれなかったんだよ」
清宮「だって！ 相棒がカタギに戻るっていうのに、迷惑掛けれねえだろ！」
それぞれが「裏切られた」という気持ちを抱えていた。しかし、互いに「相棒」と思い合っていることも事実だった。
努力・友情・勝利という「週刊少年ジャンプ」のような段階を踏んで振り込め詐欺を成功させてきた二人。被害者からすれば「心ない」と思われる詐欺の現場にも、血の通った友情が存在していた。
悪い奴は倒されてほしいという感情
とはいえ、清宮が叩きに関わったことと、誠実が「M名簿」というヒット率の高い名簿を勝手に使っていたという事実は変わらない。M名簿は、剛力（若林拓也）と杜（水間ロン）が誠実の自宅に回収に行っていた。
そこで、誠実の母・幸子（西田尚美）と幼馴染の美咲（山本舞香）と鉢合わせてしまう。「パソコン奪うだけでしょ！ 暴力はダメだよ！」と言う杜を殴りつけ、剛力は誠実のパソコンを持って逃げる美咲を追う。
祖母のいる家に逃げ込んだ美咲は、剛力と揉み合いになる。そのとき祖母が取り出したのが、振り込め詐欺の犯人からの護身用に買っていたスタンガンだった。
ここまで、ピカレスクロマンとして『スカム』を見て、誠実たちに肩入れしてしまう瞬間も多々あった。しかし、振り込め詐欺の被害者やその家族は現実に存在している。
美咲の祖母が、剛力の首に何度も何度もスタンガンをあてる。過剰防衛にならないか、殺してしまわないか心配になるほどに。泡を吹いて白目をむく剛力。
誠実や清宮はもちろん、杜や来栖ですら、女や老人に直接手をかけることはなかった。最後の最後に、剛力はその一線を超える。だからこそ、美咲の祖母が剛力を失神させた展開にひとつのカタルシスが生まれた。
来栖は小沼（柳俊太郎）によって川に落とされてしまった。詐欺の世界で一番悪いことをした来栖の終わりはあっけない。
来栖よりも剛力の結末に痛快さを感じる。「悪い奴は倒されてほしい」という気持ちがすくい上げられた。いくら誠実たち詐欺プレイヤーに共感や同情の気持ちを抱いていたとしても、まだ自分がカタギの倫理で生きていることを再確認した。
「もう戻れない」詐欺プレイヤーの人生はどこへ向かうのか
神部「俺と毒川も、昔はお前らと同じプレイヤーだった。
手っ取り早く稼いで辞めるつもりが、ズルズルと続いちまってな。失せろ。行け」
神部たちに逃がされた誠実と清宮。しかし、剛力が通報されたために、今度は神部たちではなく警察に追われることになってしまう。誠実の前に、誠実を詐欺の世界に導いた山田（山中崇）が現れた。
夢に出てきては「もう戻れない」と恨めしそうに言い、誠実を追い詰めていた山田。ここでの復活は、誠実につきまとう死神のようだ。
8月27日（水）にTBSで放送される最終話には、1話で姿を消した祥太郎（戸塚純貴）も登場するという。現実の犯罪を扱ったドラマ『スカム』。ものすごいスピードで転がっていった誠実たちの“もう戻れない”人生が、どこにたどり着くのか楽しみだ。
（むらたえりか）
過去放送分配信「Netflix」：https://www.netflix.com/jp/title/81153751
ドラマイズム『スカム』
MBS：毎週日曜深夜0:50〜
TBS：毎週火曜深夜1:28〜
出演：杉野遥亮、前野朋哉、山本舞香、戸塚純貴、福山翔大、水間ロン、若林拓也、華村あすか、柳俊太郎、山中崇、和田正人、西田尚美、杉本哲太、大谷亮平、ほか
監督：小林勇貴
脚本：継田淳
原案：鈴木大介『老人喰い:高齢者を狙う詐欺の正体』（ちくま新書／筑摩書房）
制作プロダクション：ROBOT
製作：「スカム」製作委員会・ＭＢＳ
ＭＢＳ番組ＨＰ https://www.mbs.jp/drama-scams/
ツイッター https://twitter.com/scam_0630
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