『おかえりモネ』第17週「わたしたちに出来ること」

第81回〈9月6日(月)放送 作:安達奈緒子、演出:中村周祐〉

『おかえりモネ』菅波「見せつけますか?」あのハグの日から今日の間に何があったのか、妄想膨らむ第81回
イラスト/AYAMI
※本文にネタバレを含みます

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出会って2年半、百音(清原果耶)菅波(坂口健太郎)は互いの気持ちを確かめ合った。その年(2016年)のクリスマス、ふたりは登米で、森林組合の人たちにあたたかく祝福される。ところが菅波は登米の診療に専念することを決めたため、2017年4月から遠距離恋愛になる。
順風満帆とはいかない百音の人生、まだまだこれから。『あさキラッ』も視聴率が落ちてきていた。悩む莉子(今田美桜)の心もようも描かれた。

【レビュー一覧】『おかえりモネ』のあらすじ・感想(レビュー)を毎話更新(第1回〜第81回掲載中)

『あさイチ』ではパラリンピック終了後の久しぶりの朝ドラ受けがあり、SNSを喜ばせた。それはまるで、登米の森林組合の人たちが百音と菅波を迎える時の様子と重なるようだった。

これが熱伝導

募る想いを抑えきれずに百音を抱きしめた菅波。「あと1分」と時間設定するところが彼らしい。
慎ましいながらも熱いふたりの気持ちは百音の手の中で温まって溶けて変形してしまったずんだ餅に表れている。

これを見て思い出したのは第25回の「熱伝導」。気象予報士の勉強をはじめた百音に菅波が協力していた時、熱伝導を学んでいた。それを見てサヤカ(夏木マリ)がふたりを椅子に座らせて、肩と肩がふれあう様子を「熱伝導」と教えた。この時すでに百音と菅波ははじまりかかっていたのであるが、自らの意思で行動に移すまでに2年半もかかった。

そこに至るまでに、亮(永瀬廉)が汐見湯のコミュニティスペースで明日美(恒松祐里)三生(前田航基)の手をとって(第78回)、三生が亮の手を握り返し、その後コインランドリーで亮が百音の腕を掴み……(第79回)の手と手の繋がりがある。


さらに遡れば、百音が菅波の背中をさすったことも(第65回)ここに至る積み重ねのひとつであろう。百音を抱きしめた菅波は、いわゆる燃え上がる本能的な恋というよりも、百音の傷みを癒やしたいケアの心――つまり愛のほうが比重が大きく感じられる。菅波がコインランドリーから去っていったあとのモネのぽうっと熱っぽい表情から主題歌の入り方がなめらかで心地よい。

『おかえりモネ』菅波「見せつけますか?」あのハグの日から今日の間に何があったのか、妄想膨らむ第81回
写真提供/NHK

少しずつ少しずつ近づいていった百音と菅波。クリスマスには百音も登米に帰り、森林組合の人たちに祝ってもらう。百音が来ると知って、しかも菅波と正式に付き合っていると耳にしたらしく、サヤカを筆頭に川久保(でんでん)、翔洋(浜野謙太)、木村(アベラヒデノブ)山崎(佐藤真弓)たち組合の人たちがカフェ「椎の実」のスタッフ・菊地(佐藤みゆき)や常連・吉田(大島蓉子)が祝う気満々で待ち構えていた。


ふたりっきりになった百音と菅波はこの場所を懐かしむ。菅波がいなかったら気象予報士になれなかったと振り返る百音。その場所がなぜふたりが勉強していたカフェ「椎の実」ではなく事務所の中なのか。登米編の時はあんなに営業時間外に不必要なまでにカフェ「椎の実」は空いていたというのに。理由はひとつ。もうセットがないのであろう。
残念。いや、もしかして経営難で閉めた設定?

ともあれ、百音と菅波が語らっていると、川久保たちが覗き見していて(またまたまた朝ドラ名物立ち聞き)、菅波はその気配に気づき、「見せつけますか?」と言うが、百音は首を横に振る。百音の反応は純朴……というとより冷静で、そんなアホなこと……という瞳をしていて、そこがまたいい。また、見せつけるとしたらいったいどんなことを見せつけたのだろうかと妄想が膨らんだ。



『おかえりモネ』菅波「見せつけますか?」あのハグの日から今日の間に何があったのか、妄想膨らむ第81回
写真提供/NHK

「朝岡さんなんて軽く超えてやる」

幸せいっぱいの百音、仕事も順調。だが、2017年春、『あさキラッ』は朝岡(西島秀俊)が辞めて以降、視聴率が思わしくない。とりわけ莉子のお天気コーナーで視聴者が離れていて、莉子は責任を感じる。


ネットの評判を読むと「説得力がない」と書かれていて、それが気になる。たしかに卒業式シーズンの天気について、自身の袴姿の写真(しかも2枚)を紹介しながら解説することにはリアリティーがあるようだが、そこに役立つ情報はなく浮わついた感じもする(莉子が写真を撮っている場所は大学校舎のように見えるが、たぶんNHKの中庭)。

報道部の沢渡(玉置玲央)のようにそれが「明るくてポップ」と好感を持つ人もいるだろうけれど、なぜかSNSでは批判ばかり。それでも「朝岡さんなんて軽く超えてやる」とへこたれない莉子。こういった仕事に対する登場人物の意欲描写は民放の水10のような、NHKのドラマ10のような雰囲気。

莉子と百音を階段の上からそっと見つめている(また立ち聞き)朝岡。
上から見ていることで莉子は「軽く超えてやる」と思っているが、朝岡はずいぶん上のほうにいるのであった。
(木俣冬)

『おかえりモネ』をさらに楽しむために♪












番組情報

連続テレビ小説『おかえりモネ

2021年5月17日(月)~

<毎週月曜~土曜>
●総合 午前8時~8時15分
●BSプレミアム・BS4K 午前7時30分~7時45分
●総合 午後0時45分~1時0分(再放送)
※土曜は一週間の振り返り
<毎週月曜~金曜>
●BSプレミアム・BS4K 午後11時~11時15分(再放送)
<毎週土曜>
●BSプレミアム・BS4K 午前9時45分~11時(再放送)
※(月)~(金)を一挙放送
<毎週日曜>
●総合 午前11時~11時15分
●BS4K 午前8時45分~9時00分
※土曜の再放送

出演:清原果耶
内野聖陽 鈴木京香 蒔田彩珠 藤 竜也 竹下景子 永瀬 廉 恒松祐里 前田航基 高田彪我 浅野忠信 夏木マリ 浜野謙太 でんでん 坂口健太郎 平山祐介 塚本晋也 西島秀俊 今田美桜 清水尋也 森田望智 井上 順 高岡早紀 玉置玲央 阿部純子 マイコ 菅原小春
※登場人物のプロフィールやあらすじなど、詳細はこちら

:安達奈緒子
演出:一木正恵 梶原登城 桑野智宏
音楽:高木正勝
主演:清原果耶
語り:竹下景子
主題歌:BUMP OF CHICKEN「なないろ」


Writer

木俣冬


取材、インタビュー、評論を中心に活動。ノベライズも手がける。主な著書『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズルポルタージュ』、構成した本『蜷川幸雄 身体的物語論』『庵野秀明のフタリシバイ』、インタビュー担当した『斎藤工 写真集JORNEY』など。ヤフーニュース個人オーサー。

関連サイト
@kamitonami