『おかえりモネ』第18週「伝えたい守りたい」
第89回〈9月16日(木)放送 作:安達奈緒子、演出:桑野智宏、原英輔〉
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2019年9月15日午後7時、大型の台風12号が静岡県伊豆半島に上陸した。突風の被害が起きている。百音(清原果耶)たちは被害を最小限に留めるためできる限り今後起こることを予測しようと努める。
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やがて台風は去り、雨のピークは過ぎた。が、降った雨による災害の危険がなお残っていることを百音や朝岡(西島秀俊)は察知して身を引き締める。第88回に引き続きタイトルバックはじまりで本編は途切れなく天気に合わせた人々の行動を綴っていく。
淡々とした流れのなかでのアクセントは、コサメちゃんと傘イルカくんのペンを使いながら心配そうにしている菅波(坂口健太郎)@登米と、台風一過後、一息ついてる朝岡のTシャツ姿からこぼれ出る筋肉美であった。
川の氾濫が心配
ついつい起こったことを報道しようとするみんなに「(気象班の仕事は)これから起きる被害を最小限に食い止めることよ」と注意喚起する高村(高岡早紀)がリーダーとしてカッコいい。今日は白いシャツに黒のパンツスーツ、こんなにバタバタしていてもやっぱりヒールの高い靴を履いていて、立ち方もモデルのように決まっている。高岡早紀は小柄だけれど首がすっと長くて健やかに見える。首をまっすぐ片足をすっと斜めに伸ばして立つ姿はバレリーナのようだ。さて。台風が去っても河川の増水や氾濫のおそれがある。いったん一息ついた百音たちだが、気を緩めるのは早い。会社に待機していた朝岡もコーヒー片手にくつろごうとしてパソコンを見てはたと気づく。馬場川に複数の支流の雨が流れ込む危険が近づいていた。
テレビ局にいる百音は視聴者からの電話を受ける。電話の主は長野の岳沢町に住んでいる五十嵐さん(大方斐紗子)。「ここに80年住んでるんですけど、あ、年がばれるね」と余計なことを言うリアリティー。裏山の小川が川になったら麓の馬場川が暴れると言う。それは朝倉のチーム・ジェネレーターズの一般人の投稿と同じような話だった。
百音の元に朝岡から電話。朝岡の電話を受けて彼の用件の前に自分が今聞いた話をまず伝える百音。彼女はいつも人の話を聞かないで自分の話をするタイプである。百音は興味あることとないことの差が激しいし、わりと目の前のことに夢中になりがちである。
それはともかく、朝岡の心配と百音が受けた視聴者の電話も同じことだった。さっそく気象班で検討するが、高村は一般人の情報を鵜呑みにしていいか懐疑的。フェイクが混じっているかもしれない。
おばあちゃんたちの想い
五十嵐さんは百音の声に「もしかしてコサメちゃんの人?」と気づき、「いつも見てるのよ、あんたに伝えられたから安心だわ」と伝える。これで百音はやってきたことが報われたことであろう。80年地元で暮らして先祖からの言い伝えを次世代の百音に伝えた五十嵐さん。一方、気仙沼の亀島では亜哉子(鈴木京香)が亡き雅代(竹下景子)の跡を次いで民宿をやりたいと考えていることを百音に電話で伝えていた。地元の人たちの昔からの想いを引き継いでいくことの大事さを一気に畳み掛け、百音が地元に戻る布石を着々と打っていく。
それにしても百音は台風でバタバタの時に亜哉子に電話をかけるマメさはある。瞬間瞬間、興味のあることに食いついていくタイプなのであろう。百音が長年、極端に何もできずにいたのも目の前の不安に集中し過ぎたからなのだろうなあと推測する。
常に目の前のことで頭がいっぱいになってしまうある種刹那的な彼女が気象予報士という仕事と出会って、未来をすこしだけ予測しながら動くことを学んでいく物語なのだ。生まれ持った気質は良い環境下、良い人に出会うことで、最善のほうに変えることができるのだ。
高瀬アナのコメント
『おはよう日本 関東版』で高瀬アナが「仮想のテレビ局で、当てはまるところと、ここは違うなあと思うことがあって、視聴者の皆さんと同じ感覚を共有することが難しい……」とコメント。いつもドラマにおおいに感情移入して見える高瀬アナがこと報道のこととなるともどかしそうなことが興味深かった。人間はこと専門分野になると厳しいものである。どこが違うのか詳しく知りたい。(木俣冬)
番組情報
連続テレビ小説『おかえりモネ』
2021年5月17日(月)~<毎週月曜~土曜>
●総合 午前8時~8時15分
●BSプレミアム・BS4K 午前7時30分~7時45分
●総合 午後0時45分~1時0分(再放送)
※土曜は一週間の振り返り
<毎週月曜~金曜>
●BSプレミアム・BS4K 午後11時~11時15分(再放送)
<毎週土曜>
●BSプレミアム・BS4K 午前9時45分~11時(再放送)
※(月)~(金)を一挙放送
<毎週日曜>
●総合 午前11時~11時15分
●BS4K 午前8時45分~9時00分
※土曜の再放送
出演:清原果耶
内野聖陽 鈴木京香 蒔田彩珠 藤 竜也 竹下景子 永瀬 廉 恒松祐里 前田航基 高田彪我 浅野忠信 夏木マリ 浜野謙太 でんでん 坂口健太郎 平山祐介 塚本晋也 西島秀俊 今田美桜 清水尋也 森田望智 井上 順 高岡早紀 玉置玲央 阿部純子 マイコ 菅原小春
※登場人物のプロフィールやあらすじなど、詳細はこちら
作:安達奈緒子
演出:一木正恵 梶原登城 桑野智宏
音楽:高木正勝
主演:清原果耶
語り:竹下景子
主題歌:BUMP OF CHICKEN「なないろ」
木俣冬
取材、インタビュー、評論を中心に活動。ノベライズも手がける。主な著書『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズルポルタージュ』、構成した本『蜷川幸雄 身体的物語論』『庵野秀明のフタリシバイ』、インタビュー担当した『斎藤工 写真集JORNEY』など。ヤフーニュース個人オーサー。
@kamitonami