長きにわたってバラエティの第一線で活躍するビビる大木が、三宅裕司率いる熱海五郎一座に助っ人として初参戦する。かつて三宅のラジオ番組にハガキを投稿していた過去があり、一座の公演に感銘を受けていたこともあって、「まさか自分が立つとは」と驚きを隠せない。
そんな彼に、今回の舞台にかける思いや、お芝居との距離感を聞いた。(前後編の前編)

【写真】熱海五郎一座に助っ人出演するビビる大木の撮り下ろしカット【12点】

――今回、熱海五郎一座に助っ人として出演することになったのは、どういった経緯があったんですか?

大木 急にお話をいただいて、自分でも驚いたんですよ。直接、三宅(裕司)さんからというわけではなく、事務所経由で連絡が来て、「え、僕でいいんですか?」と。三宅さんとお仕事でご一緒することはあったんですけど、じっくり二人きりで話し込んだということもなかったので、なんで自分が選ばれたのか不思議なぐらいで。熱海五郎一座は普通にお客さんとして観に行っていたので、まさか自分が同じ舞台に立つとは思ってもいなかったです。

――キャスティングの理由は聞いていますか。

大木 取材でご一緒した時に聞きました(笑)。これまでの一座のメンバーの中でキャラクターがかぶらない、かつ少し若い世代を入れようという意図があったみたいです。

――大木さんが座長を務める『ラヴィット!』(TBS)火曜日の名物コーナー「大木劇団」を観て、オファーしたわけではなかったんですね。

大木 あれは三宅さんに見せられないですよ(笑)。

――大木さんは三宅裕司さんがパーソナリティーを務めていた伝説のラジオ番組『ヤングパラダイス』(ニッポン放送)にハガキを投稿して、読まれたことがあるそうですね。

大木 友達から「面白いよ」って教えてもらって、小6ぐらいから『ヤングパラダイス』を聴いていたんですが、たまに投稿していたんですよ。
とはいえ、ハガキ1枚を買うお金もなかったので、家にある親のハガキを使って送るぐらいでしたが。そしたら一回だけ採用されたんです。初めて三宅さんに会った時に、「実は昔、投稿していたんです!」と言ったんですが、「ふーん」ぐらいの反応で(笑)。まあ当然ですよね。三宅さんもハガキを1枚1枚覚えていられないですし、あのラジオに届いていたハガキの量は相当なものだったでしょうし。

――当時の三宅さんの印象はいかがでしたか。

大木 舞台を率いている俳優さんというよりは、ラジオで面白い話をしているお兄さん。テレビでコント番組もやっていらっしゃったので、お笑い寄りの人というイメージでした。

――観客として熱海五郎一座はどんな印象でしたか。

大木 軽演劇という文化を、ここで初めて知ったんですよ。お芝居とも違うし、コントとも違うんですが、僕にとっては観やすくて、面白いし、かっこいいし、ちょっとほろっとくる瞬間もあって。「こんなに素敵なカルチャーが東京にあったんだ」と衝撃を受けました。
舞台に出ている先輩たちの姿を見ていると、いい年の重ね方といいますか、こんな素敵な一座にいるなんて羨ましいなと思っていました。

――俳優業で言うと、今年1~3月に放送されたドラマ未来のムスコ』(TBS)に出演されていましたよね。

大木 たまたま呼んでいただいたんですが、それも久しぶりというか。それまで俳優として呼んでもらったとしても、その回のワンシーンとか、その程度だったんですよ。がっちりやるお芝居は経験が少ないので、今回の舞台もプレッシャーが大きいです。もう20年以上続いている一座で、たくさんのお客さんがついていますからね。しかも僕は今51歳ですけど、お客さんの層は僕より上の世代が多い印象なので、そういった大人のお客さんからすると、「あまり変わってほしくないな」という保守的な見方もあるかなと思うんです。そこに助っ人という形で呼んでいただいたので、熱海五郎一座の空気を壊さないようにしながら、かつ「大木が出ていてよかったな」「大木がいても面白かったな」と言ってもらえるようにしたい。そこが僕の目標であり、仕事かなと思っています。

――一座のメンバーで一番付き合いの長い方はどなたですか。

大木 一座の皆さんとは大体面識がありますが、特によくお会いするのは東MAX(東 貴博)さんですね。そもそも熱海五郎一座の舞台に招待してくれたのが東さんなんですよ。
深沢邦之さんも一座のメンバーですが、Take2さんとは若手の頃から都内のライブで一緒になることがあったので、その時からの付き合いです。30年くらい交流がありますね。今回の出演が決まった時、東さんに「セリフを覚える自信がないんです。みんなどうしているんですか?」と相談したら、「大丈夫だよ。あの人たちも全員覚えてこないから」と(笑)。「え!? そんな気楽な感じなんですか」「そうだよ。覚えてない時はちゃんと覚えてないって言いながら、みんな練習しているから」と言うんです。舞台ってガチガチに稽古して、稽古場に台本を手に持っているのはダメ、みたいな世界なのかなとイメージしていたんですが、「ここはそうじゃない。むしろやりながら作り替えていくから」ということで、少しほっとしました。

――そもそも大木さんはコントをやっていましたし、コント番組にも多数出演されていました。周りからの、お芝居の評価はいかがでしたか。

大木 よく「お前は普通のセリフを言えないな」と怒られていたんですよ。
たとえば『笑う犬の冒険』(フジテレビ)で、内村(光良)さんがボケまくるコントがあるとすると、振り役であるはずの僕のセリフが自然に聞こえない。それで、「お前は主役じゃないのに目立とうとするな」みたいなことを言われるんですけど、僕は普通に演じているつもりなんです。でも、それが目に余ると言われて、振りの役がもらえなかったんです。その時に「俺は演技ができないんだ……」と気づいたんです。コンビでコントをやっている時は、上手いとは言えないまでも、駄目だとは思っていなかったんですよね。そこから普通の演技って何だろうと迷走して、もやもやしたまま今日に至ります。コンビのコントは非日常的なボケとツッコミだったんですが、日常的なお芝居だとフィットするのが難しかったですね。

――改めて、今回の舞台で楽しみにしていることを教えてください。

大木 笑いを作っている最中はシビアなんですよ。コンビ時代も相方と一緒にネタを練習している時や、ネタを書いている時は、相手の考えたボケを一切笑わないで進めるわけじゃないですか。「どこが面白いんだ」「こっちの方がいい」とピリッとした空気の中で作っていく。でも、それも全て本番のためのものですからね。
今回は同期や後輩と何かやるというわけではなく、大先輩であるキャリアのある皆さんと一緒に笑いを作っていくので、とても楽しみです。どうしてもテレビは瞬間瞬間の面白さを追求することが多くなりがちですけど、熱海五郎一座では1個1個きちんと積み上げていけるような気がしていて。そこが楽しみです。

▼東京喜劇 熱海五郎一座 新橋演舞場シリーズ第12弾
「仁義なきストライク~弾かれた栄光と約束のテンフレーム~」
会場:新橋演舞場
日程:2026年5月31日(日)~6月24日(水)

キャスト:三宅裕司 渡辺正行 小倉久寛 春風亭昇太 東貴博(交互出演) 深沢邦之(交互出演) ビビる大木
ゲスト出演:沢口靖子 野呂佳代
作:吉髙寿男
構成・演出:三宅裕司

【後編】ビビる大木、同世代の有吉弘行・バカリズムらと歩んだ「次のブームを待つ」独自キャリア論
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