ダービージョッキー
大西直宏が読む「3連単のヒモ穴」

――春のGⅠシリーズも、はや残り2戦。6月7日には上半期のマイル王決定戦となるGⅠ安田記念(東京・芝1600m)が行なわれます。

同レースについて、大西さんはどんな印象をお持ちですか。

大西直宏(以下、大西)1996年に施行時期がGI日本ダービーの翌週に変更されてからは、道悪で開催されることも珍しくないな、というイメージがあります。特にタイキシャトルが勝った1998年のレースは強く記憶に残っていて、全頭が泥を蹴りながら走っていたのを覚えています。

 ちょうど関東の梅雨入りの時期と重なることが多く、それも仕方がないなと思うのですが、この悪天候がなかなかの曲者で......。ただでさえ開催も進んで東京の芝も荒れ始めている頃ゆえ、そこへ降雨となれば、一段とパワーが要求されるタフな馬場となるわけですからね。

 単純なスピードだけでは勝利をつかむことが難しく、総合力が求められるマイルGⅠ。僕はそんなふうに安田記念を捉えています。

――この週中には台風6号が接近した影響で、関東も大雨となりました。週末の天気次第では、今年の安田記念もタフなレースになる可能性がありそうです。そういった状況になった場合、どういった点がポイントになりますか。

大西 まずは"折り合い"。これは、非常に重要な要素です。

東京のマイルコースはスタート直後が緩やかな下り坂になっており、前半のポジション争いも相まって、スピードが乗りやすい設計になっています。しかも、馬場や位置取りによっては、多少のキックバック(芝や土の跳ね返り)も受けます。

 そこで、エキサイトしてしまったり、意気消沈してしまったりしたら、とても最後の直線で脚を伸ばすことなどできません。それだけに"折り合い"、レース序盤で自らのリズムで走れるかどうかは、大きなカギになるでしょう。

 それから"底力"も必須です。ここで言う底力とは、体力や精神力といったタフネスのこと。先述したレース前半における急激な流れや道悪などの試練を乗り越えた先には、府中の長い直線が待っています。そのゴールまでの長い道のりで、いかに踏ん張りを利かせられるかという点は、最後に明確な着差となって表れますからね。

――では、今年の安田記念で大西さんが本命視しているのは、どの馬でしょうか。

大西 昨春のGⅠNHKマイルC(東京・芝1600m)を制したパンジャタワー(牡4歳)です。

 短距離戦での実績がある馬には、前向きな気性の持ち主が多い傾向にありますが、パンジャタワーに関して言えば、まったくそんなことはありません。レースを見る限りでは、折り合い面がとても安定しており、乗りやすいタイプ。

マイルどころか、1800m戦まではこなせるのではないかと思っています。

 前走のGⅠ高松宮記念(3月29日/中京・芝1200m)においても、外差しの決着となるなか、前目のインで運んで4着に粘るガッツを見せました。厳しい流れにあって、あれだけ踏ん張りが利くのですから、府中のマイルGⅠで勝利実績があるのも納得です。折り合いにも、底力にも不足がなく、得意なコースで再び戴冠を遂げても不思議ではありません。

――パンジャタワーに続く馬、他に注目している馬はいますか。

大西 2番手として挙げたいのは、トロヴァトーレ(牡5歳)です。2走前のGⅢ東京新聞杯(2月10日/東京・芝1600m)と前走のGⅢエプソムC(5月9日/東京・芝1800m)は、いずれも外から差しきる形で勝利。まさに安田記念を見据えたようなレースぶりでした。

 昨年、このレースに参戦した際には折り合い面に難しさを見せて大敗(17着)を喫しましたが、1年かけてしっかりと課題をケア。今回は当時とはまた違った姿を見せてくれるはずです。

――では最後に、これら有力勢を脅かしそうな伏兵で気になる存在がいましたら教えてください。

大西 ウォーターリヒト(牡5歳)の一発に期待しています。

この馬が得意とするのは、パワーを要する馬場での底力勝負。前走のGⅡマイラーズC(4月26日/京都・芝1600m)はパンパンの高速馬場でスピード能力が問われた一戦でしたから、まったくの適性外でした。13着の大敗もやむなしと言ったところでしょう。

【競馬予想】タフな馬場が想定される安田記念 総合力あるパンジ...の画像はこちら >>
 しかし、昨秋のGⅠマイルCS(京都・芝1600m)では15番人気ながら3着と激走。当時の京都はあまり芝の状態がいいとは言えず、かなり馬力が要る馬場コンディションでした。そこで、実力上位のマイラーたちと互角に渡り合った走りは評価に値します。

 すでに説明したとおり、安田記念が行なわれる東京の馬場はマイルCSのときに近いと想定されます。この馬のキャラクターを考えれば、そうした舞台で上位に食い込む走りを見せても驚けません。

 前走の結果から評価が急落するようなら、馬券的な妙味はさらに増します。ということで、ウォーターリヒトを今回の「ヒモ穴」に指名したいと思います。

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