「相続税の申告をしたら、それで終わり」――そう思っている人も多いかもしれません。
しかし実際には、相続税を申告した人の“約7人に1人”が、税務署から実地調査や電話・文書による接触を受けています。


ゴールデンウィークの帰省をきっかけに、親の相続について考え始めた人もいるのではないでしょうか。

今回は、『事例でわかる 失敗しない相続対策入門』(税理士法人チェスター 監/円満相続を支援する士業の会 編/株式会社エッサム 著/あさ出版)から、今の相続税調査の実態について解説した内容を抜粋して紹介します。
○今、相続税の調査はどう行われているか?

相続税の申告件数が年々増加するなかで、税務当局は適正・公平な課税の推進に向けて、実地調査や簡易な接触を戦略的に組み合わせて実施しています。

「不正に税金の負担を逃れようとする悪質な納税者に対しては、適切な調査体制を編成し、厳正な調査を実施する一方で、その他の納税者に対しては、文書や電話等による簡易な接触も実施するなど、適正・公平な課税の推進に努めて」(「国税庁レポート2025」抜粋)いるのです。例年、年の瀬に国税庁から公表される「相続税の申告事績の概要」をもとに、ここ数年の相続税調査の状況をみておきましょう。

まず申告数ですが、ここ数年は増加傾向が加速しており、被相続人10人に対して1人が相続税申告書を提出した計算になります。

令和6事務年度の相続税の「実地調査件数」および「簡易な接触件数」の合計は、268ページの図のように3万1481件で、相続税の申告書を提出した人のうち約7人に1人(接触割合15%)が実地調査または簡易な接触を受けたことになります。

実地調査の件数については、コロナ禍前の平成30事務年度に1万2463件であったものが、令和2事務年度の5106件を最小値としてゆるやかに増加し、令和6事務年度は9512件。コロナ禍前の8割弱まで回復しました。

また、簡易な接触の件数については、コロナ禍前の平成30事務年度に1万332件であったものが、令和元事務年度の8632件を最小値として上昇し、令和6事務年度には2万1969件まで増加し、平成30年度の2・1倍になっています。「実地調査」についてはそれほど増えていないものの、「簡易な接触」は急増していることがわかります。 

さらに実地調査によって税金を追加して納め直さないといけない「追徴税額」の状況をみてみましょう。


実地調査1件あたりの追徴税額は、平成30 事務年度の568万円に対し、令和6事務年度は867万円に増加しています。また、簡易な接触の1件あたりの追徴税額も増加しています。
○調査対象はどう選定されるのか?

相続税の調査は所得税や法人税と比べて、税務署からの「接触割合」が高く、また、1件あたり追徴税額が高額になっていることから、税務当局は相続税に対し、より高い意識をもって対応しているといえます。

さらに税務当局は、実地調査事案の選定対象を追徴税額が多額となる高額な納税者に一層シフトするとともに、それ以外の多くの納税者に対しては文書、電話連絡などの簡易な手法により接触を図っていることがうかがえます。

もはや相続税の申告に関して申告後に税務署から調査連絡などを受けることは、相続人にとって他人事ではなくなったのです。

○『事例でわかる 失敗しない相続対策入門』(税理士法人チェスター 監/円満相続を支援する士業の会 編/株式会社エッサム 著/あさ出版)

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