全国34施設を展開し、洗濯乾燥機やミニキッチンなど生活設備が整う滞在型ホテルのパイオニアである東急ステイ。中長期の出張ニーズに合致するなどビジネスマンにとっても心強い存在であったが、2026年2月にブランドコンセプトを「Stay Connected.」に刷新。
ビジネスホテルからライフスタイルホテルへのリブランディングに舵を切った。この転換は何を意図しているのか? 2026年3月に誕生したリブランドホテル「東急ステイ渋谷 恵比寿」で確認してきた。

「ビジネス利用8割」の需要がコロナ禍で激減

滞在型アパートメントホテルのパイオニアとして、1990年代から旅と暮らしをつなぐ新しい滞在価値を切り拓いてきた東急ステイ。東急リゾーツ&ステイ 経営企画統括部 経営企画部 広報グループの平田舞さんによれば、以前はビジネス利用が圧倒的に多く、約8割がビジネスユースだったという。

「長期でプロジェクトに参加するエンジニアやプログラマーの方をはじめ、多様なビジネスマン、ビジネスウーマンの方にご利用いただいていました。

例えば4日間の出張だとして、4日分の着替えを持っていくとなかなかの荷物になります。しかし、当館の客室には洗濯乾燥機を備えているので、2日分の着替えだけ持って来館し、着衣を洗ってまた着るという形で荷物を減らすといった工夫が可能です。もちろん、4日間とも当館をご利用いただくお客様もいれば、4日間のうち最後の2日間だけ当館を利用するなど、利用スタイルもニーズによって様々だったように思います」

このようにビジネスマンで賑わっていた東急ステイだが、ライフスタイルホテルにリブランドする必要はどこにあったのか。その背景には、新型コロナウイルスによる生活様式の変化と、インバウンドによる旅行スタイルやニーズの変化がある。

2020年に始まったコロナ禍では、3密や感染リスクを下げるためにオフィスへの出社が一部制限され、リモートワーク化が一気に進んだ。あわせて、インターネットを介したオンライン会議も普及したことで、出張需要は激減。

一方、コロナ禍が明けると、減少していたインバウンドが再び増加に転じ、多くの外国人客が日本を訪れるようになった。
さらに決まった働く場所を持たない、ノマドワーカーの増加も相まって、コロナ禍前とは異なるビジネス利用でのニーズも生まれているという。

「生活様式の変化や訪日客の増加に伴い、求められるホテル像は多様化しました。そのなかで東急ステイは、世界と日本、地域と旅人、人と文化、そしてゲスト自身をつなぐ存在でありたいと考え、ライフスタイルホテルへのリブランドにいたりました」

社会やニーズの変化によってリブランドへと舵を切った形だが、ビジネスホテルとしての東急ステイは残し、新たにライフスタイルホテルブランドを立ち上げるという選択肢はなかったのだろうか。

「ホテル業界全体の意識として、ただ泊まる場所ではなく、何か体験ができる場所という方向に変わってきているところは大きいと思います。ただ、東急ステイの場合は、それぞれの立地も関係しているかもしれません。

もともと街に溶け込むように営業していたこともあって、地元の神社や商店とのお付き合いがあります。そのなかで、街の商店の方たちと連携してお客さまを送り合うという取り組みは、これまでにも実施していました。そういったこれまでのホテルとしての歩みも、新ブランドの立ち上げではなく、リブランドを決めた理由の根底にあります」
滞在型ホテルでは冷蔵冷凍庫の需要が顕著?

そんなリブランドホテルとして3月17日にオープンしたのが、「東急ステイ渋谷 恵比寿」だ。

これまでも滞在型アパートメントとして展開してきた東急ステイでは、洗濯乾燥機や電子レンジ、広さによっては客室にミニキッチンが付いていることがスタンダードとなるなど、ホテルでありながら自宅にいるような快適さを実現してきた。

リブランドにあたり、装備面で2つの変化を加えた。ひとつは冷蔵庫が冷蔵冷凍庫になったことだ。

「出張中は会食などで外食が続きがちですが、客室内の冷凍・冷蔵庫や電子レンジを活用すれば、ホテル近隣のテイクアウトや冷凍食品などを自分の気分や体調に合わせて選べます。
旅先でも食事の選択肢が広がり、体調管理もしやすくなります。さらに「東急ステイ渋谷 恵比寿」では、客室内の冷凍庫にオリジナルアイスクリームをご用意しています。そのままでも十分おいしいですが、ホテル2階のバーにお持ちいただき、黒ビールをかけて味わうのがおすすめです。」

もうひとつが、滞在型客室に備えられる日本製品だ。

「特に海外のお客さまには、何かしらの日本文化との架け橋となる体験を提供できればと思っています。そのために、リファのシャワーヘッドをはじめとする日本製品を客室に用意して、直接体験していただいています。実際に使ってみて、もし気に入ったらホテルで購入して持ち帰っていただけます。当館に滞在することで、ライフスタイルを変えるきっかけにつながればという思いで導入しています」

ライフスタイルホテルの魅力は、人に寄り添うおもてなし

かつてはビジネス利用が主だった東急ステイだが、現在は中長期滞在向け客室の滞在性などを評価され、施設全体で訪日ゲストの割合が約7割に上る。

今後は多様化するゲストのニーズとグローバル化の進展により柔軟に対応し、各地に根差した「Local Immersion」(ローカル・イマージョン/地域没入)の滞在体験や多様な取り組みによって、心地よさと感動が両立するホテル価値の体現を目指すとしている。

「海外のお客様が増えたことで、ユニークなニーズも増えてきました。そこに対して、私たちも考え方をガラッと変えないといけません。ビジネスホテルとは違い、滞在中にその街の魅力をより深く味わっていただけるようなおもてなしでゲストに寄り添っていきます。ホテルの従業員というだけではなく、“旅行のコーディネーター”としてのサービス提供に努めていきます」

安藤康之 あんどうやすゆき フリーライター/フォトグラファー。
編集プロダクション、出版社勤務を経て2018年よりフリーでの活動を開始。クルマやバイク、競馬やグルメなどジャンルを問わず活動中。 この著者の記事一覧はこちら
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