●『ドラフトキング』続編「やっと始められた」
WOWOWの連続ドラマW-30『ドラフトキング-BORDER LINE-』(毎週金曜23:00~)。プロ野球球団の凄腕スカウト・郷原眼力(ムロツヨシ)と、元プロ選手の若手スカウト・神木良輔(宮沢氷魚)が全国に埋もれた原石たちを探し求める、熱きスポーツドラマの続編だ。
「自分はずっと覚悟のあるピエロだった」と語るムロと、『MEN'S NON-NO』でつかんだ初仕事から「呼ばれる回数が減っていった」時期を乗り越えた宮沢。ドラマのサブタイトル「-BORDER LINE-」が2人自身の俳優人生とも深く重なる、読み応えたっぷりの対談をお届けする。
○3年ぶり続編も「時間経過を感じなかった」
――3年ぶりの再タッグはいかがでした?
ムロ:3年ぶりという感じはしなかったですね。お互い忙しくてそんなに会えてなかったし、食事する時間も取れてなかったんですけど。続編は「ずっとやりたい」と前作の時から話していたので。「やっと始められた」という感覚が強かったです。
宮沢:本当に時間経過を感じなかったですね。ムロさんに対してもそうでしたし、監督はじめスタッフや共演者の方たちに対しても。前作のチームワークがすごくよくて、楽しく撮影できていたので、そのままのテンションで初日を迎えられました。
――今作の見どころを教えてください。
ムロ:今作では、ドラフトのウェーバー制度の面白さと複雑さをちゃんと描いています。「なぜその説明を氷魚くん演じる神木ではなく、(スカウト部部長・下辺陸夫役の)でんでんさんがやるんだ?」ってきっと観た人全員が思うと思うんですが(笑)、それも見どころの1つで。
宮沢:前作は神木の成長がメインでしたが、今回はより郷原の周りで起きることが鮮明に描かれていますね。スカウト部のみんながそれぞれのやり方で「横浜ベイゴールズ」を強くしようとしている姿が、より浮き彫りになっています。神木も担当選手の初指名を目指して、少しずつ成長しているので、そこも見どころのひとつになっているのではないかと思います。
○「夢がかなうから素晴らしい」だけを描いていない
――サブタイトルは「-BORDER LINE-」。このタイトルからお二人はどんな印象を受けましたか?
ムロ:野球選手というのは「選ばれしもの」だけがなれる世界ですよね。ドラフトで選ばれなければいけない。そのボーダーラインの上なのか、右側なのか、はたまた左側なのかに行かなければいけない。だからこそ、そっち側ではない人たちにもそれぞれの人生があるわけで、そっちにも別のボーダーラインがある。「夢がかなうから素晴らしい」ということだけを描いていないのが、この作品の素晴らしさです。演劇をやってきた自分としては、そのボーダーラインを越えないという選択をして別の人生を歩んだ友人のことも思い出しましたね。ボーダーラインを超えた側、越えないと決めた側、いつか越えるのを待つ側、越えるまで続ける側……。
宮沢:ムロさんが全部言ってくれました(笑)。僕自身も18年間野球をやってきて、プロになった先輩も、プロになったけど戦力外になった先輩も何人も見てきました。自分の夢を追いかけるって、家族や練習に付き合ってくれる人たち、たくさんの人の人生を巻き込んでいくことでもあって。その一方で、夢の通りの結末を迎えられない人の方が圧倒的に多いのも現実です。でも一つ言えるのは、みんな野球が大好きなんですよね。限界ギリギリのところまで続けるって、並大抵のことじゃない。自分自身のボーダーラインを突破できたか。そこがこの物語の大きな見どころだと思います。
――再び郷原や神木を演じる中で、新たに発見した一面や気づきはありましたか?
ムロ:郷原という人間は「手段を選ばない男」なんですが、一見球団ファーストに見えて、実は選手ファーストなんですよ。「戦力外の男」編では、郷原がかつて担当した選手・佐藤翔太(武田航平)のトライアウト前に1対1でしっかり話を伝えるシーンがあって。前作ではそこまで選手と向き合うシーンはなかった。
宮沢:神木もある意味ボーダーラインに立っているんですよ。スカウトとして成果を上げられない日々が続いて、彼も崖っぷち。でも今作では、崖っぷちにいるからこそより一層燃えるというか、担当選手をなんとしても成功させたいという思いにつながっていく。前作とは違うスカウトマンとしてのプロ意識が芽生えていて、特に後半はそれが強く出ています。
●ムロツヨシが確信した伊藤沙莉&若葉竜也の才能
――ご自身は「芸能界」という荒波にもまれながら生き抜く中で、郷原の眼力のような「人を見る力」はどう培ってきたのでしょうか。
ムロ:僕らの周りの人たちには嘘をつく人が多いですからね(笑)。でも「自分が騙す方じゃなければいい」くらいに思うようにしています。「言っていることと違ったな」みたいなことは、この仕事をしていると多々あるので。それをいちいち根に持っても仕方ないなって。
――これまでの共演者の中で、「後から振り返るとあの時すでに原石だったんだな」と気づいた経験や、逆に「当時からこの人は伸びると確信していた」という経験はありますか?
ムロ:これは昔からずっと言っているんですが、伊藤沙莉や若葉竜也は、見た瞬間に「この人は違う」と確信していましたね。
宮沢:今回「捨てられた天才」編で柳川大也役を演じた佐藤寛太くんとは、7年くらい前に『僕の初恋をキミに捧ぐ』で兄弟役をやっているんですよ。当時、「俺、もっとこういうふうになりたいんっすよ!」という熱い思いがあって。それがみんなから愛されるようなキャラクターだったんです。「この子は絶対この先も活躍されるんだろうな」と思っていたら、着々といろんな作品に出演されていて。6~7年ぶりに今回また共演できてすごくうれしいですね。
○まだ見抜かれていない自分へ「続けろよ」
――逆にご自身が若手の頃、「見抜いてほしかった」才能はありましたか?
ムロ:あります、あります。今でも「そんなに売れると思わなかった」「まさかお前が『ドラフトキング』の郷原役をやる未来がくるとはね」って、居酒屋のおっちゃんにも言われますもん(笑)。でも当時の自分は「覚悟のあるピエロ」をやっていたんですよ。自分なりに「片鱗」は出していたつもりだったんですが、周りからはただのピエロにしか見えなかった(苦笑)。
宮沢:僕は逆で、当時の実力より周りが高く評価してくれていた気がしていて。「こんなに仕事ができないのに、本当に大丈夫かな」という不安と常に戦っていました。最初の頃はオーディションにもなかなか受からなくて、『MEN'S NON-NO』にようやく受かって。最初は撮影現場にたくさん呼んでもらえたんですけど、だんだん呼ばれる回数が減っていくんですよ。周りの期待に応えられなくて……。でもそれが逆に「見返したい」という気持ちにつながって、自分なりに研究して、また現場にたくさん呼ばれるようになりました。初めてソロページをもらえた時は本当にうれしかったですね。
ムロ:俺はね、まだMEN'S NON-NO WEBに出るという世界線を目指し続けているから! 「ノーMEN'S NON-NO」のままじゃ終われない。次の作品では絶対出るぞ(笑)
――まだ誰にも見抜かれていない頃の自分に、言葉をかけるとしたら?
ムロ:月並みですけど「続けろよ」ということですね。「そのまま続けてください」って。
宮沢:僕もそうかもしれないですね。何回も諦めたくなる瞬間ってあるんですけど、止まってしまうのが一番の終わりだと思うので。「どんなに苦しくてももがきながら進んでいけ」って言いたいです。
渡邊玲子 映画配給会社、新聞社、WEB編集部勤務を経て、フリーランスの編集・ライターとして活動中。国内外で活躍する俳優・映画監督・クリエイターのインタビュー記事やレビュー、コラムを中心に、WEB、雑誌、劇場パンフレットなどで執筆するほか、書家として、映画タイトルや商品ロゴの筆文字デザインを手掛けている。イベントMC、ラジオ出演なども。 この著者の記事一覧はこちら

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